第一章 始まりの一歩
日本で生まれ、日本で育った私、広瀬 秋は、二年前に『この世界』にやって来た。
他国とか、そんな生易しいものじゃない。
『ここ』は―――地球とすら、呼ばれていない。
世界の名前は、イルノマディン。
イルノマディンと言う名前は、世界を創造したと言われるイルノマディ・ファクサールから名付けられている。
ファクサールとは、私の持つ言語で『神』と似た意味持っている。
もちろん地球にそんな言葉は存在しないし、神話にもそんな神様は存在しない。
そして、地球とこの世界絶対的に違うと言うことがわかる証拠が、目に見えて存在する。
私の生家は陰陽師の家系だ。魔を祓い、式神を使役し、術を操る。
と言っても、自分は家系のあぶれものみたいなもので、正式な式神を使役していないし、生家の仕事に関わることはなかった。
それにしたって、変なものが見える使えるというのは、日本というか世界でも変わり種である。
地球は機械技術は向上の一途を辿っているし、変わり……かどうかは知らないが、特に日本では信仰宗教も退行している。
異世界と言う確固たる証拠……私たちで言う、『魔法』の存在だ。
この世界では、生活の元に魔法の存在がある。
そして機械という概念が存在せず、信仰意識が世界共通で強く存在する。
そんな世界に、私は飛ばされた。
目を開けたときにはここにいた。
常識も、生活も、言葉も、文字も、何もかもが違うこの世界で生きてこれたのは、奇跡だと、今でも思う。
ちなみに私がいるのは、ノーマアルアス国と言う。
年中を通して温暖な気候で、豊かな大地を有する、君主制国家。
つまり、国王と言う存在がいる。
身分の区分は大まかに、国王、貴族、商人、平民となっている。
そんな、常識違いの私が、この国で今も生きていけるのは―――
他でもない、私の天使……間違えた、私のお仕えする坊ちゃん、『ジーン・アルタイル』様のおかげだ。
朝日に輝く、金色の髪、澄んだ青色の目。
これを天使と言わずなんと言おうか!!……じゃなく、見目麗しい、私の主。
初めて会った当初は12歳。私がここに来て、もう二年が経つ。
そして、同時に私が男として生活するのも、同じく二年目だ。
今、14歳の坊ちゃんは……
「お前なんて、大っ嫌い!!」
絶賛反抗期みたいなんですけどおおおお!!
すいません、心の治療薬って何処にありますかね?
心がぽっきりと折れる音がしました……