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ラ・ラスタ・パンゲオ大陸の物語

ラ・ラスタ・パンゲオの伝説

作者: 栗栖 龍
掲載日:2026/06/23

※代表作「ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!」の補足の短編になります。フィオラ達の世界の成り立ちから現在に至るまでの話です。

 むかし、むかし、その昔、魔王が数多の神々に戦いを挑み、挑まれた神々も応戦し、お互いに禁忌を破ったせいで多くの神々が眠りにつくという大いなる戦いがあった。


 魔王とは闇と悪意の神であり、本来は人や獣の悪意を食らうことで抑える役目を持つものだった。

 しかし“人”と呼ばれる種族――人族・エルフ・ドワーフ・獣人など――が知恵を持ち善意が増えると同時に悪意も育てられるようになって、神は変わってしまった。

 否、もしかしたら魔王が自身の力を倍増させる為にそうしたのかもしれない。

 卵が先か、鶏が先か。それは今となっては誰にもわからない。

 人々の悪意を食らうことで力を付けた闇と悪意の神マルキュ・モンマエルは自ら魔王と名乗り始め、信徒を増やし、その中から魔人を作り出し、獣を越えた獣・魔獣を引き連れて人々に、そして他の神々に戦争を仕掛けた。


 この世のすべてを滅ぼすために。


 それは泥沼の闘いとなり、同族である神と闘う禁忌を犯して交戦した神々はどんどん傷つき、小さな欠片となって大地や海に沈んでいった。魔王さえも。

 彼ら神々が再びまみえるには数万年かかるだろう。

 何故ならば、信仰してくれる人々が死滅した上に、名前さえ忘れられてしまった為、再び小さな存在から力をつけていくしかなくなったからだ。

 争いの後、この星に残された神は戦いに参加できなかった弱く小さな神々と、二柱の力ある神だけだった。


 それが、最後まで人々を守ることに専念した愛と慈悲の女神ディノ・アモルーモと、海に囲まれた火山大陸で生まれ、その火力でもって魔王どころか人すら寄せ付けなかった、後に聖竜と称えられる火山と業火の神インフェラ・ファジーロだった。


 神々の闘いの終盤、女神の頼みを聞き入れた聖竜が獣しか住んでいなかった土地を整え、女神が選び抜いた人々を大陸へと転移させた。

 悪意を持たぬ者のみを移住させたのが功を奏したのか、魔王はこの大陸から力を得ることができず、手出しをすることができなかった。

 だがこの行動中、女神の守りの力で魔王を跳ね返したことが数度あったため、女神も禁忌に抵触したとして五千年の眠りにつくことになった。

 聖竜はそれを見届けると人々に土地を与え『好きに生きよ。ただし火山を抑えるための魔石を我に捧げよ』と命じ、女神の代わりに人々の営みを見守ることにした。


 その時点では大陸に名は無かった。

 地球のオーストラリア大陸に輪郭が似ており、広さは四分の一くらい。

 真北と北西の角と東の一番飛び出たあたりと東側の南端――メルボルンあたりに活火山があった。また南オーストラリアと呼ばれる地域を大きく囲むように山脈が走り、その北と東にも火山が存在する火山大陸だった。

 気候は北に行くほど寒く、南に行くほど熱い。北の火山の向こう側には年中雪が降る永久凍土の地域があるが、それは標高の高さのせいもある。しかし南は沖縄のように年中熱いか暖かい地域ということと、元々火山大陸の為地熱が高いということから考え合わせると、この大陸は地球より小さな星の北半球に存在していると思われる。


 女神と聖竜に助けられた人々は、人が住めるたった一つの大陸となったここで狩りをしながら森を切り開き、村を作り、大きな街に育て、そして街から国へと発展させていった。

 はじめは争いごとがなかったものの、世代を経て人口が十倍に増えた頃には大きな悪意を持つ人も増えていき、小さな国同士の争いも各所で起き始めた。


 移住から五千年後、戦いが続くあまり魔石を奉じることができなかった結果、中央の二山が大噴火を起こし、その間にある大地を溶岩が覆っていった。

 人々は逃げまどい、嘆き、助けを求めた。そしてその声に応えるように女神が目を覚まし、火山と溶岩の動きを封じることで人々を救ったのだった。

 その結果、救われた人々は女神の信徒となり、女神の教えに従って生き残った人々で国を作り、女神の意思を聞き取れるものを国の王であり教会のトップにあたる『教皇聖王』に据え、国を治めさせるようにした。


 大噴火から三千年後、中央大国以外での小競り合いは収束を迎え、少しの小さな国々と大きな四国で落ち着いた。

 その時、世界に声が響いた。

『争いごとはもう見飽きた。そのまま四つの大国と小さな国で落ち着くがいい』

 その時すでに聖竜と崇められていたインフェラ・ファジーロの声だった。

『四つの国のそれぞれにある火山の(ふもと)は、我の領地とする。魔石集めの責任者を立てよ』

 という天啓も下され、人々はそれに従うことにした。

 それと共に聖ドラゴン教会も各所に建てられ始めた。


 聖ドラゴン教に関して言えば、それの基礎になる土着の聖竜信仰はあったが一つにまとまっていたわけでは無かった。

 それをガルンラトリ初代国王がまだ中国の王だった時、地元の聖竜を祭る司祭たちを説得し、聖ドラゴン教を立ち上げさせた。

 戦勝を祈願し、東国統一を叶える祈りを民にも捧げさせる為に。

 そしてその数年後に願いはかなった。

 その話が他の三カ国を統べたそれぞれの王に伝わり、それぞれの国でも聖ドラゴン教を立ち上げることとなり、すでに教団が出来上がっていたガルンラトリの司祭たちが指導者として各国に派遣され、永住したと記された書物も残っている。

 その後、聖竜が聖職者の中の信仰心の高い者の中で、一番信頼のおける者を自らの使徒・大司教として選び、各国の教会のトップとして皆を率いるようにと啓示を出した。

 それに従う形で現在も竜教と称される聖ドラゴン教は続いている。


 四つの大国が出来たのはほぼ同時期で、二十年くらいしか差がなく、ガルンラトリも2番目にできた国だった。

 そしてガルンラトリ建国から二八年後、ラトリア山に聖竜が来臨し、(ふもと)の聖竜教会に所属するバニョレスの一族が魔石を届けたその数日後、剣士オルストロが単身山に登り、聖竜に喧嘩を吹っ掛ける事件が起きた。

 人化した聖竜と剣を交え、友情が芽生えたことで気に入られたオルストロは聖竜より「ドラコメサ」の氏を得た。しかも聖竜がバニョレスの一族が守るあたりをドラコメサの領地とすると国王に宣言し、その領主にはオルストロを立てるように命じたことで、いまのドラコメサがある。

 バニョレスの一族は、オルストロの一人娘カリエラに、当時の当主の息子が婿入りしたことで領主オルストロを受け入れることができたと建国記にも記されていた。

 その十数年後、破天荒なオルストロが娘婿に領主の座を譲った後に、聖竜に「お前の剣となり盾となろう」と持ち掛け、それを受けたことで聖竜の戦士ドラコミリが生まれたという伝説も残っているが、真相は明らかではない。

 そしてその後、聖竜が山を巡る度にその麓にドラコメサ領を作り、勝負を挑みに来た剣士や戦士をドラコミリに任命したというのは有名な話であり、国や教会の書物にも書き記されている。

 その為、聖竜の使徒の大司教、聖竜の使者のドラコメサ、聖竜の戦士のドラコミリという聖竜の関係者たちは、ガルンラトリが発祥である――という認識が、各国と教会のトップの間では今でもある。

 もっと眉唾な話になると、その頃の寿命は50年ちょっとだったので、初代ドラコメサが各国に生まれ変わって、来臨のたびに勝負を挑みに行き、ドラコメサを拝したという輪廻転生説も、千年前の教会内部ではささやかれていたそうだ。

 そんな彼ら――ドラコメサとドラコミリと大司教は、政治的権力はないが国王に並び立てる存在と聖竜より認められており、彼らが最上位の礼をするのは聖竜に対してのみと中央国を含む国家間で認められている。


 建国から二千年の現在、大国は山脈と大河に囲まれている場所を基準に国境が引かれており、休火山に挟まれた場所の中央国が女神の国であり、そこから東西南北に聖竜の国が四つあり、大陸の端々や離島に小国が存在する。

 そして今、四つの山を巡る聖竜はガルンラトリ王国のラトリア火山に降臨していた。

 しかもその少し前に魔王は目覚め、力を溜め、九年前に自身の復活のカギとなる駒をこのガルンラトリ王国に誕生させていた。

 魔王はこことは異なる世界から自分好みの魂を取り寄せ、当時の堕落したドラコメサの血筋にそれを入れることで大いなる魔力を手に入れさせることに成功した。

 当時のドラコメサの息子を操り、本来のドラコメサの跡継ぎを弱らせるために彼の両親共々妻を屠り、子供たちを領地に封じた上で正式な跡取りの息子を葬るように仕向けた。

 ちょうど聖竜がラトリア山を訪れ、魔石を渡さねばならなかったために、使ってしまった魔石代の代わりに息子を渡すという愚行に走らせた。生贄にすることで息子をこの世から消すことに成功した、と思われた。

 彼は自分と愛する人との子を跡継ぎにできると喜んで山を去り、二度と山を登ることはなった。

 しかし、その息子は聖竜から大司教に手渡され、養子として引き取られた。そして親子で大司教とドラコメサとして聖竜に接することで義務と供儀をこなしていた。

 同時期、弟の死を知らされドラコミリと共に領城に残された姉は鬱々とした人生を送り、王立高等学園に入学するまで領地に引きこもり外に出ることはなかった。

 紆余曲折あり姉の卒業後のパーティーで、異母妹が王太子の婚約者の座を奪うという愚行に及んだ時に姉は全力で立ち向かったが、それがトリガーとなり魔王がそこで復活してしまった。

 大司教の息子=弟に庇われ生き永らえた姉が見たものは、魔王に滅ぼされた王都と、聖竜に向かって、つまり領地に進行していく魔王たちの後ろ姿だった。その時同じく様子を見るしかできなかった大司教と共に魂が異世界に飛ばされた。


 姉の魂は異世界の赤子の中に宿り、すくすくと三十歳を迎えるまで平凡に生きていた。前世の記憶を一切なくした状態で。

 大司教の魂はゲームのシナリオライターに憑依する形で異世界にとどまり、自分のいた世界をゲームという形で甦らせ、たまたま姉もそのゲームに熱中し楽しんでいた。

 姉がヒロインの“竜ダリ”と異母妹がヒロインの“乙ダリ”。

 二つのゲームの知識と異世界の日本という国で得た知識を携えたまま姉たちの魂は元の世界の約二十年前に呼び寄せられ、元の魂と融合させられた。

 そして姉は前世の知識も駆使して、弟も失わず、弟と共にドラコメサの地位を父親から奪い、前回よりも力を付けたドラコミリと大司教と共に魔王を打ち倒し、再び眠りにつかせることに成功した


 そうして世界は魔王の恐怖から救われた。


 現在は最後の大地(ラ・ラスタ・パンゲオ)と呼ばれているこの大陸は、今も様々な国で、様々な人が、様々な営みを続けている。

 これから先も……。

お読みいただきありがとうございます。

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とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


フィオラたちの住むガルンラトリ王国のある大陸の説明を入れたいなと思って、この短編を上げました。

これを機に

・ラ・ラスタ・パンゲオの物語

これでシリーズをくくろうと思います。


さて、次回からラブコメ(のはず)を頑張って書きますので、よろしくお願いいたしますヾ(*´∀`*)ノ

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