【第6話】:1年目④ 現場を支える職人たち
「匠、お前、自分の現場に何人の職人がいるか、ちゃんと把握してるか?」
三宅主任の問いに、俺は一瞬、返答に詰まった。
「えーと……型枠大工、鉄筋工、設備屋、電気工……」
「まだまだ。ここには20職種以上が出入りしてんだぞ」
現場の詰所で広げられた工程表。
その中には、今後の施工に関わる無数の職人たちの名前が並んでいた。
「覚えておけ。監督が全体を知らずして、現場は回らん」
匠の目に映ったのは、以下のような職種のリストだった:
型枠大工
鉄筋工
鳶工(足場鳶・鉄骨鳶)
コンクリート打設職
型枠解体工
左官工
内装工(LGS・ボード)
クロス職
塗装工
タイル職
ALC工
サッシ屋
設備配管工
電気工事士
ガス工
防水工
ガラス工
鍵・建具職
外構・舗装職
仮設トイレ業者
クリーニング業者
「こんなに……」
匠は、工程表に書かれた名前を一つひとつ指でなぞる。
「これ全部が、図面に書かれてるだけじゃなくて、実際に“人の手”でやられてるんだよな」
三宅は頷きながら言う。
「その通り。そして現場監督は、彼らが安全に、品質高く、気持ちよく仕事ができるように段取りを組んで支えるのが仕事だ」
■あとがき
建設業は“総合格闘技”とも言われます。
それは、多種多様な職人たちが、限られた空間と時間の中で自分の技を出し合い、仕上げていく仕事だからです。
現場監督はすべての職種を熟知している必要はありませんが、少なくとも「どんな職人が、どこで、なぜ必要なのか」を理解し、まとめる力が求められます。
次回は、そんな職人たちの技術が集約される「コンクリート打設」に焦点を当てます。
■建築コラム:職人の“顔”が見えると現場が変わる
現場監督がただ工程通りに職人を配置するだけでは、現場はうまく回りません。
誰がどんな技術を持っているか
どのタイミングで連携が必要か
その日の体調や気分、チームの雰囲気
そうした“顔が見える関係”を築けるかどうかで、現場の空気は変わります。
職人という存在を、単なる作業者としてではなく、チームの仲間として接する。それができる監督は、信頼され、現場に一体感が生まれます。
■用語解説
職種:建設現場において、それぞれ異なる専門技術を持つ職人の分類。たとえば、鉄筋工、電気工、設備工など。
工程表:工事の進行スケジュールを図示したもの。各職種の作業期間や順序を示す。
段取り:作業をスムーズに進めるための準備と計画。前工程・後工程を調整する業務。