【第5話】:1年目③ 現場監督の1日
第5話では、新人現場監督の「1日の業務サイクル」に焦点を当てます。朝の鍵開けから、打合せ、写真撮影、職人との調整、そして戸締りまで──1日をどう過ごし、どんな視点で現場を見ているのか。忙しさの中にある“意味”を描きます。
第5話では、新人現場監督の「1日の業務サイクル」に焦点を当てます。朝の鍵開けから、打合せ、写真撮影、職人との調整、そして戸締りまで──1日をどう過ごし、どんな視点で現場を見ているのか。忙しさの中にある“意味”を描きます。
朝7時。現場に一番乗りで到着する。
仮囲いの中に入り、鍵を回して、詰所、資材庫、現場出入口の扉を開ける。
「朝の鍵開け」は、現場監督にとって一日のスタートだ。
機材の電源を入れ、事務所のホワイトボードに予定を書き込み、ポットのお湯を沸かす。
その間にも、今日の工程と天気を頭に入れながら、作業予定の段取りを再確認する。
7時50分。
職人たちが集まり始め、作業服の音とあいさつの声で現場が目を覚ます。
8時、朝礼開始。
KYシートの確認、作業内容と注意点の共有、安全注意喚起、健康状態の声かけ──
声を張りながら一日のスタートを仕切る。
「では、よろしくお願いします!」
号令とともに、現場が一斉に動き出す。
午前中は写真撮影と巡回。
今日の作業が計画通り進んでいるか、工程通りに職人が配置されているか、
材料の搬入・配置は問題ないか──すべて「見て、記録する」ことが基本だ。
「あそこの配筋、重ね長さが足りてないかもな」
「型枠の建て込み、図面と照らしてみようか」
三宅さんと一緒に現場を回る中で、次第に“見る目”が鍛えられていく。
昼休憩、詰所で職人たちと一緒に弁当を食べる。
「若ぇの、顔に疲れ出てんぞ」
「緊張しっぱなしっすね……」
笑いながらも、少しずつ現場に馴染んでいく。
午後は工程会議と翌日の準備。
資材の発注確認、天気予報と工程調整、写真データの整理、安全日誌の記入、
あっという間に時間は過ぎていく。
夕方、作業終了を見届け、作業員の退場を確認する。
「本日の作業終了です。戸締り確認お願いします」
詰所、資材庫、仮設トイレ、各扉を一つずつ回り、鍵をかける。
最後に仮囲いの出入り口を閉め、1日が終わる。
■あとがき
現場監督の1日は「見る・考える・伝える」の連続です。
朝の鍵開けから、作業指示、写真管理、段取り確認、戸締りまで。
そのすべてが、“現場を動かす”ための大切な役割です。
特に新人のうちは、「ひとつずつ確実にやること」が信頼と経験を育てていきます。
次回は、現場にいるさまざまな職人──型枠、鉄筋、設備、電気──
それぞれの仕事と魅力を紹介していきます。
■建築コラム:現場監督の“時間”は全体を見る目
現場監督の1日は、単なるルーチンワークではありません。
朝礼は、現場全体の意識を統一する“スイッチ”
写真は、品質・安全・記録のすべてを担う“証拠”
巡回と声かけは、職人との信頼を築く“接点”
戸締りは、現場を預かる責任の“けじめ”
一日のすべての動きに、意味があります。
■用語解説
鍵開け/戸締り:現場の出入口や事務所、倉庫の施錠・開錠。現場管理者の基本業務。
朝礼:1日の作業を共有する全体ミーティング。作業内容、安全確認、KY共有を含む。
工程会議:工事全体の進捗を確認・調整する会議。週1〜毎日実施。
写真管理:工事の進捗や品質を記録するために行う撮影業務。
段取り:作業を円滑に進めるための計画・準備。監督の最も重要な業務のひとつ。