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「現場監督入門」  作者: 建築太郎
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【第4話】:1年目② 安全管理は“空気”をつくる

現場監督の重要な仕事のひとつに「安全管理」があります。第4話では、KY活動(危険予知活動)や安全日誌、朝礼での注意喚起など、事故を未然に防ぐための取り組みに焦点を当てます。



「じゃあ今日も、KY出してから作業入りましょう」


朝礼のあと、職長たちが自分の班に分かれて話し合いを始める。


現場に配属されて2週間目。俺は“KY活動”という言葉にも、ようやく慣れてきた。


KYとは「危険予知」のこと。

作業を始める前に、その日の作業にどんな危険が潜んでいるかを洗い出し、対策を共有する。


「今日は高所作業があるから、開口部の確認は重点でな」

「搬入車両が増えるから、人の動線とぶつからんように」


作業員たちがホワイトボードに意見を書き込み、それを朝礼場の中央に掲示していく。


これが「KYシート」。どの班が、どんな作業を、どんな危険と向き合いながら進めるかを全員が把握するためのものだ。


「神原、朝礼の写真とKYシートの提出な。あと、安全日誌もつけとけよ」


先輩の三宅さんに言われて、現場事務所の片隅にあるノートを開く。


そこには日付、天気、作業内容、人数、そして“ヒヤリハット”の欄があった。


「ヒヤリハット」とは、事故には至らなかったが「ヒヤリ」としたり「ハッと」した場面現場監督の重要な仕事のひとつに「安全管理」があります。第4話では、KY活動(危険予知活動)や安全日誌、朝礼での注意喚起など、事故を未然に防ぐための取り組みに焦点を当てます。


の記録だ。


この日は、足場上での資材の置き方が不安定だったという報告があり、記録を残した。


「事故ってな、起きる前に“気配”があるんだよ。それを拾えるかどうかが、安全管理だ」


三宅さんの言葉は重かった。


昼休憩、詰所で職人たちが弁当を食べながら話していた。


「最近、安全パト(パトロール)厳しいよな」

「まあ、でも現場が事故ゼロってのは大事なことだ」


その空気に、俺は気づいた。


安全管理は、“書類”や“ルール”だけのものじゃない。


それは、現場全体の空気を整える「文化」なんだ。


だからこそ、監督の一言や注意喚起が、現場の空気を左右する。


“安全第一”は、掲げるだけじゃダメなんだ。


夕方、職長と一緒に足場の最上階を回る。

落下防止の手すり、仮設階段の固定、電動工具のコード処理──

すべてをチェックしながら、メモを取り、写真を撮る。


「現場の安全は、目で確認して初めて言えるもんやで」


そう言われた言葉を、俺は忘れない。


■あとがき


現場の安全管理は、「事故を起こさない」ではなく「事故の芽を摘む」仕事です。

KY活動や安全日誌、安全パトロールは、どれも“現場の空気を守るための習慣”です。


新人監督にとって、安全に対する意識づけと行動習慣を早く身につけることが、信頼される第一歩です。


次回は、神原の1日──鍵開けから戸締りまで、「現場監督の1日の流れ」を追体験します。


■建築コラム:KY活動と安全管理の本質


KY活動(危険予知活動)は、作業前にグループ単位で危険箇所を洗い出す取り組みです。作業の安全性を上げるだけでなく、現場全体に“注意力”を広げる効果があります。


また、安全日誌の記録、ヒヤリハットの共有、安全パトロールなども、事故の未然防止に欠かせません。


安全管理とは「言われてやる」ものではなく、「空気として存在する文化」を育てること。

それができる現場は、強い現場です。


■用語解説


KY活動:危険予知活動。作業前に、どんなリスクがあるかを洗い出して共有する取り組み。


KYシート:KY活動で記入するボードや用紙。作業内容・想定される危険・対策などを記録。


安全日誌:毎日の作業状況、安全面での気づきやヒヤリハットを記録するノート。


ヒヤリハット:事故には至らなかったが、危険につながる“ひやり”とした瞬間を記録するもの。


安全パトロール(安全パト):現場内の安全状況を確認する巡回業務。週1回〜毎日実施されることもある。



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