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《休》E:ternal~第二の人生は記憶の旅~  作者: 宝花 遥花
大人の国 ダイヤモンド
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第31話 作戦会議

リノさんの仕事が終わるのを待って私たちはレストランに移動した。

「うわー!美味しそー!」

「ここのピザは絶品だよ!ロセフー!ピザ10枚お願い!」

リノさんの声に茶髪で小柄の男性店員が手を挙げて合図した。

「ロセフは私の弟なんだ!可愛いでしょ」

ロセフくんは少し顔を赤らめながらキッチンの方へと消えていった。

見た目で人を判断するのは良くないが、リノさんとは違って大人しそうである。

「ん?ピザ10枚?!」

当たり前のように注文するからスルーしそうになったけれど、私たちは4人と一匹だ。いや待て。ケニーは一文無しだから食べる権利はないから3人と1匹か。

「流石に……」

多くないか。彼女がいっぱい食べるんだもんな。


「乙姫ちゃんどうかした?」

「え?あ、いえ」

「あー!お金のことなら気にしないでよね!今日は私がご馳走するから!」

リノさんの言葉に目を輝かせたのはケニーだった。

ケニーは座るリノさんの横に跪いて、その手を握る。

「ありがとう。次は僕にご馳走させてください」

「だから気にしなくて良いって!」

リノさんにその気はないだろうが、遠回しにデートの誘いを断られたケニーのアホ面は傑作だった。

彼女とリノさんはすごく美味しそうに、ケニーは少し寂しそうにピザを食べ進める。

「葵ちゃん、良い食べっぷりだね!」

「私、食べるの大好きなんです!」

「ニャ〜ン」

ロハンは少し甘えたような声を出して彼女にピザをねだる。

彼女がピザを差し出すとロハンは私を見てニヤリと笑って見せた。

「ちぇっ、ゲス猫め」

「乙姫!」

「ん?んっ……?!」

彼女に呼ばれたと思った次の瞬間、私の口の中はピザで満たされた。

驚く私を見て、彼女は悪戯っぽく笑う。

「美味しい?」

「……すごく美味しい」


「さてと。アルトさんだけどどう探そうかな」

リノさんは眉間に皺を寄せるが、ピザを食べる手を止めることはなくチーズを伸ばしながら口いっぱいに頬張る。

「まんはどのにずんでうかめぼちをつえるところかあ」

そのまま話そうとするから何を言っているかさっぱりだ。

「リノちゃんの言う通りだな」

ケニーがそう言って大袈裟に頷いてみせる。

つるつる脳みそなんだから絶対に理解できていない。

「中心街は除外して良いだろうな」

ケニーはいつの間にか手に入れていたらしいこの国の地図を広げて、中心街にばつ印をつける。

なんだこいつ、リノさんが言っていたことが理解できたのか?

「え?除外?!中心街は娯楽施設も多いし、働き盛りの若者に一番人気のエリアだから真っ先に探そうと思ってたよ」

リノさんはそう言って目を丸くする。

おいおい、会話が成立しているではないか。

もしかしたらケニーの脳にほんの少ししわができたのかもしれない。

『ケニーに興味津々のようだな』

ロハンは魔法の力で私の脳内に直接話しかけながら、彼女の腕に頬擦りをする。

この声さえ聞こえなければ少しは可愛く思えただろうな。

『ちなみに私も理解できたぞ。まずはどこに住んでいるのか目星をつけるらしい』

「なるほど……」


「アルトが金を稼ぐのは妹のアマンダと生きていくためだ。自分だけいい暮らしをするために中心街に住むとは思えない」

ケニーの言葉に彼女が確かにと頷く。

私は覚えていないけど、アルトは相当妹想いらしい。

「なるほどね。中心街を外すとなると半分くらいがスラムになるな」

「え?半分もですか?!」

彼女はチーズを伸ばしながら目を丸くする。

「正確にいうと、スラムもどきのところも含まれるけどね。ここは中心街だからあまり感じないだろうけど、少し外に出ると治安が悪いよ。それこそアクアマリンから来て浮浪者になった人も多いみたい」

こどもの国は故意に大人を遠ざけてきたわけだから、なかなか上手くいかない人も多いのかもしれないな。

「アルトに限ってそんなことになってるとも思えないけどな」

「人間、いつ何が起こるかわからない。とにかく明日から調べてみるよ」

「私たちもキッチンカーで情報を集めてみます!」


翌日からの動きに目処を立てた食事会はお開きとなり、リノさんと別れて帰路に着く。

「いやー、リノちゃん可愛かったなぁ♡」

ケニーは鼻の下を伸ばしてグフグフと笑う。

とても気持ちの悪い光景だ。

このケニーと昔からの友達だなんて信じられない。いや、信じたくないと言った方が良いかもしれない。

「なんだ乙姫?俺のことじっと見て。もしかして嫉妬か?」

「は?!嫉妬する要素なんてどこにもないでしょ!」

「俺がリノちゃんにぞっこんだからだろ」

このバカのことなんて相手にするだけ時間の無駄だ。

そんなことを考えていると、左の二の腕あたりに柔らかい感触があった。

見ると、彼女が腕を組んでぴたりとくっついている。

その表情は少しムッとしているようにも見えた。

「どうしたの?」

「ケニーとはいっぱいお話しするんだなって思って」

「え?」

「私だってもっと乙姫とお話ししたいのに」

彼女はそう言ってぷくりと頬を膨らませながら少し目を潤ませる。

自分の顔が赤くなっていると、上昇する体温で感じる。

「今日寝る前にいっぱいお話しする」

「……うん」

私が返事をすると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

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