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《休》E:ternal~第二の人生は記憶の旅~  作者: 宝花 遥花
こどもの国 アクアマリン
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第21話 猫の手

「アルトの妹さんだったんだ!大きくなったね〜!」

「私のこと知ってるの?」

「もちろん!私ねアルトと一緒に働いてたこともあるんだよ!」

「お兄ちゃんと!?良いなあ〜!!」

アマンダはもう料理なんてそっちのけで彼女との話に夢中になっている。

ルーはそれを注意したそうだが、仕方ないという顔でせっせと業務に当たっていた。

それにしても彼女がここで働いていた?

つまり子どもの時にこの国にいたのか?

「おかえりなさいってそう言うことか……」

アルトもこの国にいた。そのアルトも私を知っている。

もしかして私もこの国にいたのか?

だとしたらあの図書館で勉強をしていた?

もう一度行けば何か___。

「アルトは元気?」

彼女がそう聞くと、アマンダは表情を曇らせる。

「アマンダ?」

「お兄ちゃん……お兄ちゃーん!!」

アマンダはそう叫ぶと、大粒の涙を流し始めた。


「皆さん、どうぞ。」

店が閉店してから私達は話を聞くことになった。

ルーが出してくれたおにぎりを彼女は両手に持って幸せそうに頬張る。

「アルトですが、国を出てしばらくは月に一度、アマンダに会いに来ていたんです。でも半年ほど前からぱったり来なくなってしまって、連絡もつかないんです。」

ルーはすやすやと眠るアマンダの頭を優しく撫でる。

「アルトに限ってそんな……心配だな……」

「アルトってどこの国に住んでるの?」

「確か隣国のダイヤモンドに住んでるって言ってた。レストランで働いてるって言ってたけど、なんて名前だったかな……」

「働いているならすごく忙しくて連絡できてないんじゃない?」

私がそういうと、ルーがばんと机を叩き、ケニーが私にずいっと顔を近づける。

「あなた本当にアルトのお友達なんですか?!」

「え?いや……えっと……」

「乙姫、思い出せなくても良いがよーく覚えとけ。あいつはアマンダがいないと生きていけねえ。これは非常事態だと言える!」

「そう……なんだ……ごめんなさい……」


「……お兄ちゃん……」

アマンダは小さい声でそう言うと寝息を立て続ける。

「この子のために、アルトを探して欲しいの!」


「はあ……」

「乙姫はいつもため息ばかりだな。」

「そのほとんどは君が原因だよ。ゲス猫。」

「それは光栄だ。で、結局何に悩んでいるのだ。」

「お金だよ。」

「ほお。それはそれは立派な悩みだな。」

アマンダの兄であり私達の旧友だというアルトを探しに行きたいのは山々だが、旅の費用を確保できないことには始まらない。

愛があればとか精神論のように言われることもあるけれど、いやでも現実をみなくては生きていけないのだ。

「子どもたちの心を掴むような何かがあれば、売れると思うんだけど……」

「何かねえ。」

ロハンはニヤリと笑うと、もふっとした尻尾で私の頭を撫でる。

「ちょっと、何す……」

もふもふ……もふもふ!!

「これだ!」


ロハンを念入りにブラッシングしてから店先に立たせるとこの通り不服そうな顔だ。

「おい、乙姫。これは一体どう言うことだ。」

「猫の手も借りたいってやつ。」

「私は子どもなど好かんぞ。」

「君の治療費分くらいは働いてもらわないと困るね。」

「だからって……」

「ほら、時間だ。しっかり猫かぶって。」

「今日の晩飯は高級魚を用意しろ。」


「いらっしゃいませ!!絶品すぎるハンバーグはいかがですか??」

「ニャーン!ニャニャーン!!」

彼女とイヤイヤ顔のロハンが呼びかけると、子ども達が足を止めロハンに近づく。

「猫ちゃん、かわいい!」

「でしょ!ロハンっていうの!」

「撫でても良いですか?」

「もちろん!」

『なぜぱふみが許可するのだ!』

「少し離れてても頭の中に声が届くんだね。」


少々悔しいがロハンの効果は絶大だった。

皆、ロハンを撫でた後、列に並んでくれたおかげでキッチンカーは大盛況。

目標売上の倍を売り上げた。

もう少し看板猫として働いてもらうことにしよう。

『何をふざけたことを!私をなんだと思っているんだ!』

「今日はロハンのおかげで大盛況だったね!ありがとう!」

彼女がそう言ってロハンを抱き締めると、奴はすかさず彼女の胸に顔を埋める。

『うほほほほーん♡』

「ゲス猫め。」


ゲス猫の力を借りたことで、数日で十分な旅の資金を調達することができた。

「ロハン効果すごいね!」

それもまあ……認めざるを得ないが、彼女の呼び込みだってピカイチだ。

「ロハンはただもふもふなだけ。」

『たけとはなんだ!失礼な奴め!』

「呼び込みしてくれたおかげだよ。」

私がそう言って彼女の頭を撫でると、彼女は嬉しそうに口元を緩ませる。

しばらくして私がそっと手を離すと、彼女が甘えたように上目遣いでこちらを見る。

「もっと……」

「え?」

「もっとなでなでして欲しい。」

再び頭を撫でると、彼女は先ほどよりも幸せそうに笑った。


「そうだ。行きたいところがあるんだけど良いかな?」

「うん!どこに行きたいの?」

「図書館。」

読んでいただき、ありがとうございます!

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