にへらと
よく笑う孤児だ。路地の境をふらふら歩いている。
歪んだ笑みは親譲り、もっとも当の本人は知るよしもない。
「おい、ガキンチョぉ、こんなトコに───」
雑巾みたいに首はねじ切れ、男は死んだ。
目に飛んできた血を舐め、孤児は年相応の苦い顔を見せた。男の首を不必要に蹴り飛ばし、死体の腰から麻袋を獲った。
目当ては金だったのか、他だったのか。
◆◇◆
「聞いたか、また朝から惨殺死体だ。五番街の方らしい」
「大通りに生首ごろり、だろ? 最近物騒だな」
「知っていたか、なら話は早い───行き先は五番街だ、犯人を狩るぞ」
「……マジで言ってんのか? 楽な仕事じゃねぇぞ」
「懸賞金は3000万金貨、一生遊べる額だ。臆するな。
それに今朝、『煙草』を一つ仕入れたんだが……犯人はガキだ。殺れるさ」
「……けっ、きなくせぇ。そんなクビは警官にでも喰わせとけよ」
「見ろ───『魔術霧散』の術塊、400万の代物だ。これで奴の魔術を無効化し、そこに俺達の『秘策』をぶつける。……文句、無いな?」
「まったく、オメェって奴は………最ッッッっ高だなァ!! ブッ殺そうぜぇ!!」
「ふっ、では行くぞ」
◆◇◆
五番街、噴水公園。
小便小僧の尿の先、一人の死体。
「おい、おい……嘘だろ?」
死体の右手には砕かれた術塊、発動済みの黄色。
声も無く、術は弾かれた。
それから先は、一瞬で事足りた。
死体の親指を切って小さな舌で舐め回す、年相応の苦い顔を見せる。
「やめろッ! 死体に触るなァ! ソイツには娘が、家族がいるんだぞ!!」
孤児は噴水に濡れながら、にへらと笑った。
「これがパパの味なんだね」
右眼をくり抜いて、キャンディーみたいに放り込む。乳歯では噛みきれず、グチャグチャにしてペッとした。
「げぇ。ニガい、僕のパパじゃないや」
「……な、何言ってんだ? テメェいったい何なんだよッッ!!」
「? 僕のパパならアマいんだよ?」
孤児は自らの親指を噛み、出てきた血を舐める。幸せそうな笑みを浮かべた。
「これが家族の味でね、アマいの。おいしくはないけど、アマいの。なめる?」
「……ざっけんなよ、ガキが」
指をチュパチュパ、落ちる生首。
「ま、こんなものかな」
新鮮な血には目もくれず、出来たての死体から財布を抜き取る。中を覗いて、
にへらと。