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巨乳女騎士を添えて~中ボス…?淫夢もあるよっ!

挿絵(By みてみん)


 うじうじとそんなことを言う乳山を無視し、俺はその大きく禍々しい扉を開く――――。


「こりゃ…ひでえな…」


 思わずそんな言葉を吐いてしまう。


「お、おい、アレがそのモンガイなのか?」

「…ああ、そうだな、そうだったってのが正しいだろうが」


 開け放たれた空間は広く、ところどころに下の回廊と同じく焦げ跡や弓矢、剣などが散乱しており、その部屋の中央には六メートルはある巨体が呆然と立ちつくしており、その体はピクリとも動かないどころか呼吸もしていないように見えた。というか、たぶん死んでる。

 驚いた、驚きはしたが、だが好都合だ、俺たちにとってこの状況は美味しい副産物。

 俺は無警戒にもその広く、白い大理石であしらわれた床をコツコツと真ん中を進む。一瞬、モンガイの陰に黒い物が動いたように見えた、俺は手で乳山の動きを静止させると、そちらを覗こうと一歩前に出る、――眩暈。クラッと足を踏み外すように横へ頭が流れ、気が付くと。


 辺り一面は、<花畑になっていた。>


 ――は? 状況が掴めない、だが、いくら見回してもそこは花畑、奥には青々と霞みかかった山脈と後ろにはそれはそれは立派な城が立っていた。さながらメルヘンな、絵本に出てくるコテコテの女児歓喜な世界観だ。

 俺が状況を把握出来ずにいると、その城の方からパカラッパカラッと小気味よい、土を蹴り駆ける音を立てて白馬と、王子がこちらに向かってくる。王子、まさにメルヘンだ、なぜ王子と分かったか? 白馬に乗ってて王冠に白マントに白手袋…ココまでして王子じゃなかったら、もうそういう変態だ。

 ……だが、もしくは王子ではないかもしれないと、俺はその姿を見て思った。


「冗談だろ。おい、――乳山テメー何してんだ?」


 風貌は髪をまとめ、少し変化していたが、その王子は明らかに乳山であり、絵本に登場する一国の王子のようにマントをたなびかせ馬に跨っていた。


「なにをやっているとは、どういう意味でしょうか? 私はただ、姫を迎えに来ただけで」

「ひ、姫!? うげぇえ、テメーそれ俺に言ってんじゃねーだろうな!?」

「姫っ! 馬をけりつけるのはお辞め下さい! あっ唾をお吐きになるのは、姫としてはしたないですよッ! ちょっ、ホントに止めて!!」


 馬の足を蹴りつけている最中、自分の足元を覗くとそこにはフリフリのスカート生地が見えた。スカート、すかーと、スカートだと!? 俺は姫さながら純白のドレスに身を包み、気持ちの悪い化粧までしているようだった。ホントに一体どうなってんだ! クソが!!

 さっきまで…………さっきまで? 俺は…ワタクシは何をしていたのでしょう?

 頭に白い靄がかかり、まるで夢を思い出そうと無駄な努力をしている時のように全くと言っていいほど記憶が混濁していた。


「あ…いや、さっきまで何処か違う場所に居たような気がして…?」

「何を言ってるんです、私は一挙手一投足と見ておりましたが、何処にも行ってなど居ませんでしたよ? あ、見ていたというのは、その…常に見ていたわけでは無くてですね、チラチラと、いえ、たまたま視界に入っただけといいますか、その……。」

「ふふっ」


 あたふたと、可愛らしい反応をお返しになられる乳山様をいとおしく思いながら、ワタクシは手を差し出すと、乳山様は一呼吸、ふう、とお吐きになられ、身だしなみを簡単に整えるとワタクシの手を取り自慢の白馬へと引き寄せて下さったのです、私はあぶみへと足をかけ、体を跳ねるようにまたがろうというとき、不覚にもバランスを崩してしまい危うく落馬かという瞬間、乳山様はその逞しく、ですが透き通るような白い肌を覗かせた腕を、私の腰に回し助けて下さったのです。不覚にもと言いはしましたが不謹慎でしょうか、私はこんなハプニングにも、ドキドキと高鳴る胸が抑えられないのです、不遜でしょうか、私の腰を引き寄せ助けてくれた乳山様とパチリと目があった時、ワタクシと同じようにドキドキとしていた気がしたのです。

 だって。

 私たちの顔は寸刻前よりも、その寸刻前よりも近づいて…あ、まつ毛長ィ。


「きろ…………起きろ!!」



 揺すられ目を覚ます――。

 そこには鎧を着こんだ乳山がおり、俺は迷わず、このドキドキと高鳴る心臓を止めるため。

 乳山の唇に舌を入れる勢いで飛び掛かった。


「あっぶな!!!!」

「なんで避けやがるんですか! 乳山様ァ!!」

「おっ、落ち着け! ちょっイヤ! やめっやめろおおおお!!」


 乳山の頭を腕で抑えながらキスを迫るが、見事に返り討ちに会い、ぶん殴られる。


「はっ!? なっ、なんだ? 何処だここは?」

「魔王城の砦四階、砦番の部屋だ、ついでに私とお前は何故か今まで眠りこけてたから、先に起きた私が起こしてやったんだっ!」

「あっ、ああそうだった、つーかなんでこんなことに――」


「だーれだっ!」


 突然、目を覆い隠され視界が暗闇になる、瞼に触れている物体の感触はプニプニとモフモフで、後頭部をふわっふわな二つの控えめな膨らみが心地よく押し返し、チューベローズの香りが遅れて鼻腔を刺激してくる。

 俺は目を隠されている状態から、迷わず後ろにあるモフモフでふわっふわな二つの控えめな膨らみめがけて鷲掴みにした、すると俺に目隠しをした本人はビクンと跳ねながら後ずさり、「あんっ! ちょっちょっと! ジン君のエッチィ」などと誘い受けみたいなセリフを言いながら慌てて腕で胸をガードするような仕草を取りやがる、完全に誘っている、そうに違いない。

 俺には誘惑と取れる行動だったが、本人的にそんな意思は全くないだろう、もう少し自覚をもって欲しいところだが、コイツはそういうやつだ。


 立っていたのは、頭からつま先まで全身艶やかな真っ黒い毛に覆われ、特徴的な大きな耳と胸元の蝙蝠を想起させる白い模様、吸い込まれそうなほど妖艶な黒く大きな瞳に、獰猛さの隠しきれない鋭い牙、なんと言っても全身から漂う色気に今すぐ飛びつきたくなる完璧な肢体。そこには絶世の<獣魔>が立っていた。

 俺は手を空中でニギニギとし、頬と耳を薄いピンク色に紅潮させた漆黒の獣魔に近づくとお構いなしに胸を触りに行く、本人に誘う意思があろうと無かろうと関係ない、劣情を煽ったお前が悪い。


「やっ、ちょっとジン君? 目が、目が充血して怖いんだけど…その、やっ! 来ないで! イタズラしたのは謝るから、鼻息を荒げてこっちに来ないで!!」

「止めんかっ!」


 乳山に頭を小突かれ、渋々引き下がる。

 ったくコイツは、いつもいつも俺を、いや周りを誘惑しやがって。


「…よぉ、また俺にセクハラされに来たのか? ヴォックス」

「ちっ違わいッ!」


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