天才剛毛ロリ童女を添えて~帰ってきたクズ、もあるよ!
私はついにおかしくなってしまったのかもしれない。
見えてはいけないものが、見えるはずのないものが、イボーグの横にたたずんでいた。
「ジ、ジン、お前! なぜ戻ってこなかったのだ!!」
バーゼル君やアルマ君、看守君たちが驚く中、乳山君だけが指をさし怒っていた。
ほ、本当に、幻覚じゃない? また、イボーグの罠じゃないのかね…? 本当に今この場に存在しているのか…! ジン君!!
「――ジン君!! 気を付けろ! そいつは鬼だよ、本物の鬼畜だ!!」
「…ッケッケッケ! ずいぶん嫌われちまったみて―だな」
「誰に口聞いてんだ、ザコが」
私は咄嗟に叫んでいたことに気が付いた。私は知っている、ジン君がイボーグに対してどんなに警戒をしていたか、あのオークの里では無条件でいうことを聞き入れる程、イボーグに勝つことなど不可能だと、尻尾を巻いて逃げるほど、その力の差は歴然だとジン君は分かっていた。
今ならジン君のいうことがわかる。無知蒙昧。無知で無恥な行いだった。
けれど、だからこそ。今目の前にいることが信じられないのだ。
何故戻ってきた、何の勝算があって、なんの策があって……。
「――作戦がある。」
顔を上げる。
ジン君は何も言ってはいなかった。私は、私は心のどこかで安堵していたのだ。あの恥知らずで卑劣で姑息で、クズな、ジン君が今ここにいる。
圧倒的な戦力差を前にして、ジン君は尚も自分の意志でここにいるのだ。
その意味は、私は分かりすぎるほど、分かり切っていた。
「ジン、オメェ、何してんのか分かってんのか? あ˝あ˝!?」
「おおっ、コエーコエー、そんな顔で睨まれたらよ、怖くて手元が狂っちまいそうだ、ケケッ」
「何言ってんだテメ…てめ…、テメー…! そ、それは、それはああああああああああああ!!!!」
ジン君の軽口に急に叫びだすイボーグ、まるで何かを警戒するように、そこから動けずに、ただ叫んでいた。
「なっ、なんですか…?」その光景にみな理解が追いついていないようで、バーゼル君が言葉を漏らす。
「お前! 何をやっているんだ! さっさとトドメを刺せ!」
「あー? 乳山おめー、バカなんだから黙ってろ」
「なっ! 何だと!?」
「君たち! 今はそんな話をしてる場合では」
――無駄なやり取りをしていたジン君たちの隙を付き、イボーグは恐ろしい速さで腕を振り上げ襲い掛かる。
「あぶな――」
けれど、イボーグの動きはそこで停止した。
「テメー…! ジン! いつの間に来やがった!!」
「ゲヘヘ、よおイボーグ、さっきぶりだな、言っとくが動くなよ、飛ばしちまうぞ」
「…………テメー、それは、それは魔王様の!!」
なっ、何が起きてるんだね…。
「さっきからイボーグの様子が変です」バーゼル君も気が付いたのか、周りも、空気が緊張から動揺に代わり、ざわざわと騒ぎだす。
「あの魔族、一体何をしてやがる」看守君も地面に倒れたジャック君を抱えながら不思議そうに見ていた。
「…オメー、俺に能力を使いやがったな…」
「恨むなよ、俺が何でわざわざ戻ってきたのか、同じゲスどうし分かり合えると思うけどな」
「…ハッ! 魔族でも馴染めなかったオメーが、今度は人間どもと組もうってのか、笑えるなあ、いや、笑えねー冗談だ」
「悪ィが、オメーを倒して俺はここで悠々自適な自堕落ライフと洒落込むぜ」
「…フハハ……フハハハハハハ…ハーハッハッハッハッハッハッハ!!!! 馬鹿も休み休み言え! 人間が! 俺ら魔族を簡単に受け入れると思うかァ!!」
「だから、オメーを倒すんじゃねーか」
「グウ…!」
イボーグは何かに気が付いたかのように目を見開く。
「……なあ、ジン。冷静になって考えてみろ、相手は人間だぞ、俺ら魔族にとって人間ってのは食い物でしかねー、対等な生きものじゃねーんだ、テメーも魔族なら分かんだろうが」
「……。」
「騙し惑わし奪う。それが俺ら魔族だ、分かり合えるわけねー…なあ、いまならまだ戻れるぜ、計画だ、俺と一緒にこの街を破壊しつくし計画を成功させる、デケー手柄を持って魔王様に会いに行くんだ」
まずい、その手の誘惑は、ジン君にはマズイ!!
「ジン君! 耳を貸すな! そうだ! イボーグを倒せば私が、この天才魔法使いがキミの功績を町中に広めよう!! きっと遊んで暮らせるはずさ!!」
「なあ、ジン、そうすりゃあまた魔族に戻れる、俺が、いや……あの方がもう一度口利きしてくれる」
「大自然に囲まれて、すごい料理にすごい酒、おまけに部屋中美女だらけ!!」
私が必死に叫んでいるのを見たバーゼルや、アルマ君、そして看守君も同時に叫び出す。
「そうですよ! 私がこの街の最高学位の私が約束いたしましょう! 貴方の罪を消して解放します! 学位も与えましょう!」「えーっとあれっス! コンパ! コンパセッティングするっス! キラベルの子たち呼ぶっス! ち、ちーちゃんの乳揉み放題もつけるっス!」「おい! 私はもませんぞ!!」「ここで裏切ったらどうなるかわかってんだろうな! 魔族野郎!!」
「どうだ…またあの頃の、人間を食い物にして堕落した日々に戻ろうじゃねーか!! なあ! ジ――――」
イボーグが両手を大きく広げた瞬間、我々の前から、イボーグの姿が一瞬にして消え去った。
「じゃあ、コンパと乳揉みと酒池肉林、ついでに学位も貰おうか」
「「「…え」」」
こうして、意外な人物の活躍によって脅威は退けられたのだった。




