天才剛毛ロリ童女を添えて~破壊、もあるよっ!
ゴクリと生唾を飲み込む。
動悸が激しい、足や手が震えて止まらない、なのに…何だろうか、頭は既にイボーグと戦うように考えを飛ばしている。
チラとイボーグの下で横たわる、気の抜けた風船のように萎みきったガブを見る。
本物の戦士を見たからか、それとも獣と死闘を繰り広げたからかね。
余計な<思考>を排除した。
同じ、あのガブが能力を解放したときに起こした現象と、いや、それ以上だね…。
だとしたら、イボーグの能力は力? けれど、体に形状変化は見当たらない、まずはその能力を見極めるところから…!
「んー? 何だ、随分慣れたみてーだな」
私の顔を見下ろしそんな呑気なことを言うイボーグ。
「もしかして、君は、敵に塩を贈るタイプかな?」
「……フッ、ハッハッハッ!! ああ、そんな事考えたことねーなー、だが、まあ…そうかもしれねー…、この世のすべてはアンフェアだ、不公平で不平等、所詮それが理不尽なこの世の摂理よ。俺はそんな状況を変えようと必死に、いやッ、滑稽に立ちまわるオメーら人間を破壊する瞬間が、たまらなく好きなんだ!」
「…なら、君の<能力>を教えてくれよ、それくらいじゃあ、ハンデにもならないだろう?」
「んー? ああ、まあそうだな」
イボーグは傍らに置いてあった何かの束から、一本を引き抜く――。
それは巨大な剣を取り出す。その束は、弁慶よろしく、何十本も用意された、武器の束が入った麻の籠だった。
ハーーハッハッハッ!! イボーグは巨大な体を揺らしながら大きく笑い剣を構えると。
「嫌だ」
「ッ――――!!」
目にもとまらぬ速さで横に薙いだ。
「「「ぎゃああああああ!!!!」」」悲鳴が聞こえる。おかしいのは、その悲鳴が止まないことだった。
「リリィさん!! こっちです!」アルマ君が私の手首を強く、握りつぶすかのように掴むと思いっきり引っ張る。
「ファイヤ…ファイヤボ――」「いやああ! いやああああ!!」「前方固めろ!! 来るぞおおお!」「ぐあああ!!」「もう無理です! む…」
「お~にが来る…悪い童を連れ去りに~…お~にが来る…地獄の底から捕まえに~…鬼が来る、酒によってりゃ皆殺しィ…っと」
ずしんずしんと足を鳴らして、人々を蹂躙していく。
何が、何がまずは能力を見極めるだね! こんなもの戦いでも何でもない!
イボーグは最初に居た街の端から中央に向かって侵攻を続けていた。
たった一人で。
周りで攻撃を試みるキラベルの学生や兵達は、その強靭な肉体に、切り傷一つ付けられず、だれもその歩みを止められなかった。
私たちも攻撃に参加したが、やはり歩みを止めるどころか、攻撃すらまともに加えられていなかった。
市街地、しかも中央にはキラベルがあり、その中には非戦闘員の住民が身を震わせている、ここで止めなければ、本当にこのオーガはこの街全てを蹂躙しつくし、焦土と化すつもりみたいだね…。
「どうするどうするどうする!! 何だあの重戦車みたいな奴は! あんなもの勝てるわけがないだろう!?」
「うわー! うわー!! どうするっすか! いったいどうするっすかあああ!」
「お前らうるさいぞ! 何とか止めるしかないだろ! リリィさん、この魔力砲、あと何発打てる?」
お互いに抱きついて泣き叫ぶ乳山君とアルマ君を横目に、看守君はオークたちに使った魔力砲を全て持って走ってきてくれていた。
けれど、効果は薄いだろうね、それに市街地っていうのが厄介だね、ココでは大きな被害が出かねない、既にイボーグはキラベルの城近くまで来過ぎた、ココから全出力で打とうもうのなら城ごと破壊しかねない…。
カツン、と革靴がなる音がする方へ振り向くと、そこには珍しく服が汚れ、走ってきたのだろう、はあはあと息を荒げたバーゼルが立っていた。
「リ、リリ・リマキナ…、あ、貴方、なんとかできませんか」
「なんだね、君が私に頼るなんて、雪でも降るんじゃないかね」
「下らない嫌味はよしてください、…こんなことになるなんて……貴方の責任でもあるんですよ、リリ・リマキナ」
「バ、バーゼル様それはいくら何でも」
「黙りなさい!」
バーゼル君は見せたことのない剣幕で看守君に怒鳴った。
「何すかそれ…バーゼル様! リリィさんは誰よりも頑張ってるっす、オークたちの侵攻を防いだのはリリィさんなんすよ! それを…、賢者の人たちは一体何してるんスか! 崇められるだけ崇められて、どうせキラベル城で引きこもってるんすよね! 生徒たちはこんな戦場に駆り出して!! 何人死んだと思ってるんすか!!」
「黙れと言っているのが聞こえないのですか、アルマ! 今はそんなことを言っている状況ではないのです!! どうなんですかリリ・リマキナ、出来るのでしょう!?」
私は考えた、バーゼル君の機嫌の悪さについてではなく、悪鬼を倒す方法について。
いや、現状を変える方法について。
「倒すことは現状できないね」
「クッ…そう、ですか」
「けど、現状を変える方法はある」
「なんっ、ですって…」
そう、情報が少なすぎる、ガブ、彼の戦いで学んだじゃないか、魔物との戦い方を…けれど、それにはまず、時間が必要だね。




