天才剛毛ロリ童女を添えて~ガブ戦、終了もあるよっ!
バーゼルが静かに号令をかけると、生徒たちの攻撃がより激しくなる。
ガブは腕を顔の前でかざしそれを防ごうとしていたが、全方位からの集中砲火に耐えきれず、遂にはドスンと片膝を付き、先程まで響いていたうめき声も、その苛烈な連続攻撃によってもう聞こえなくなっていた。
「よ、よし! これはイけるっすよ、ねえ、ちーちゃ…あっ! ちーちゃん!!」
アルマ君は嬉しそうにその光景を見て小さくガッツポーズをとるが、その数秒後、慌てて何かを思い出したように瓦礫に向かって走ると、自身にの筋力にバフを掛けてその瓦礫を取り除いていた。
――――ポツ、――ポツリ。
私の頬や髪に数滴の雨が降り注ぐ。
空を見る、そこにはいつの間にか渦を巻いて分厚い雲が出来上がっており、低く、まるで獣が身を潜め威嚇しているかのように天高く唸り声をあげていた。
「これは、…魔法だね」
広範囲に凄まじい魔力を感じる。
この街の防壁の上で雨雲が切れているとこを見ると、範囲術式のようだね。
それは大きな唸りを上げ、渦を加速させていく。
まずいねこれは…。
私はこの場を離れようとするが、「あっ」アルマ君に乳山君!
横の瓦礫の山を見ると、アルマ君に腕を肩に回された乳山くんが歩いてくるのが見える。
「あっ、リリィさーん! ちーちゃん居ましたー、無事でしたー!」
「それは良かったねって、言ってる場合じゃないんだよ、走れ! 走るぞアルマ君!!」
「えっ? え!?」
さらに術式反応が強くなり、上空の雨雲がたちどころに低く下がる。
まずい、まずいね、どうも。
走りながら、五十メートルほど行ったところで、遂に。
――目が眩むような閃光。
そこから、地響と体が浮かび上がるほどの衝撃。
「きやあああ!!」誰かの叫び声と共に倒れ、地面からその雷の落ちた、ガブのところへと目線をやる、だが、大量の煙に囲まれ、その姿は見えなくなっていた。
「やっ、やったかね…?」
「やったっすか?」
煙が晴れると、そこには無残にも、黒く全身が焦げ、呆然とたたずむ隊長オーク、ガブの姿があった。
ふう――。
体の力みが抜けていく感覚。それを感じると同時に、疲れが全身を襲い、特に足は動けないほど疲労を感じていた、隣で、道路にも関わらず寝ころび始めたアルマ君も同様の疲れを感じていることだろう。
終わった――。
その言葉が脳の中でぐるぐると周り、不思議な多幸感を感じていた。
その時だった。
がらん。と黒く炭となった筈のガブは、だが、私たちの願いに反して、その体をゆっくりと、起こしたのだった。
「なんっ…うそ…だよね?」
「そんなっ! ありえないっす! あんな攻撃直接食らったら、普通は…」
「なん…です…!」生徒を指揮していたバーゼルも、生徒に混ざり、その事実にただただ驚愕しているのが見えた。
「ブオ…………ブオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
「こ、攻撃ィイイイイ!!」
ガブが雄たけびを上げると同時にバーゼルは再び生徒たちに指示を出すが、オークは攻撃が当たっているのにも関わらずガードもせず、ただふらふらと歩き回り、何かを探しているように、鼻をひくひくと動かすばかりだった。
目は白目を剥き、耳も恐らくは聞こえていないだろう、こちらの声には全くと言っていいほど反応しなかった。
ただ、うわごとのように――。
「ど…こだ、ど…こだ…」
ただうわごとのように。
「かた…き、ユルサネェ…ユル…サネェ……<悪魔>は、どこだ――――」
そう言いかけた瞬間。
ガブの体から、一本の、太い丸太が貫通する。
「ったく、さっさと死ねや…こっちは寝飽きたんだよ」
違う。
丸太じゃない。それは、腕だ、ズルズルと引きずり出される腕が抜けると、ガブはそのまま倒れこみ、その後ろから、赤い肌の巨大な鬼が姿を現した。
「よお、ちょっくら破壊しに来てやったぞ。お? リリィちゃーん! また、会ったなあ、やっぱり俺たちゃあ、赤い糸で結ばれとるんかなあ! ガーーハッハッハ!!」
だとしたら、ここに来なければ良かったと、そう、思った。




