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天才剛毛ロリ童女を添えて~【バトル】オークの戦士、もあるよっ!


「あ、あぁ…ぁぁ…」

「リ、リリィさん…リリィさん…!」

「ゴフッ、グフッ……! ボフゥ…ボフゥ……」


 私は間違っていた。

 私はこの戦場を、無意味な争いを、変えるだけの力があると、そう思っていた。


 重々しい足音が私に向かって、一歩また一歩と歩み寄る。


 私は、自分の無駄な知略によって一体どんな影響を及ぼすのか、その意味すら分からずこうして獣人族オークの逆鱗へと触れてしまった。

 この焼け焦げて、傷だらけになった<戦士>を恐るべき<怒れる戦士へと>ジョブチェンジさせてしまったのだ。


「ガキ…テメーがなぜ使者に選ばれ、そして俺たちの里で追い出された後、ボフゥ…こうしてすぐこの街へ引き返したのか今ならわかるぜ…テメーには確かに変えるだけの<力>がある」

「そうかね? 私には…そうは思えないね、今となっては」


 巨体は私を見下ろしながら、以外にも冷静な声で語りかけてくる。


「テメー、もしそれが<無駄>なことだとしたら、そんな抵抗すらも、本当に無駄なんだとしたら、どうする?」

「回りくどいね、反省してるさ、私は所詮戦士ではない。キミたちの戦いぶりを見れば、いかに苛烈な状況に立たされても、それをあきらめない心持が大切なのかが分かる…今になってようやく私は、戦場に立っているという感覚が芽生えてきた。怖くて怖くて仕方がないよ…本物の戦士を前にするとね」


 ボフゥ…、苦しそうな鼻息を吐き、厳しい顔をさらに厳しくゆがませた。

 何か…かみ合っていないのか? そんな気がした。


「…そんな話をしに来たんじゃねーが…ゴフッ…! ハア…伝わらねーもんかね、ま、仕方ねーか。テメーらはそうやって、焦点をずらして、見えてるもんに蓋をして、そうして取り返しのつかねーところまで来ちまったわけだ…そして俺も、とうとうココまで出張って来ちまった」


 なんだね? さっきから話が見えてこない。

 オークは少し顔をそらし、最初は空を見ていたのかと思ったが、それは……防壁の…上?


「テメーたちに助言することは何もねー。俺はな、オサみてー信心深くねーんだ、生物は死んだら土にかえる、これは絶対の法則だ、今まで幾度となく仲間を土に埋めてきた、何度生き返ってくれと強く願ったかわからねー。みんな俺より先に行っちまう、けど…そいつらは戦士として、死に際は戦場で散っていった、俺の教えだ、戦士は戦を勝利に導くものに非ず、戦士とは、戦の中で死ぬことと見つけたり」

「…………。」

「ボフゥ……このガブ、戦士として…稀代の天才魔法使いリリ・リマキナ。そしてこの街の全てと――――勝負願う」



 雄叫び。



 そう言うとガブは、口と、その特徴的な鼻から大量の血を吐き出しながら、この街深いところに響かせるように、宣戦布告するように、全てに轟く雄叫びを上げた。


 私は初めて、本物の雄叫びを聞いた。私は初めて、本物の死に物狂いを見た。私は初めて、本物の緊張状態による渇きを感じ、毛が逆立つというものを知り、本物の敵の、焦げるような血液の匂いを嗅いだ、そして、私は、始めての本物の殺意に戦意を喪失した。 『殺しに来たぞ、ガキ』 その意味を脳髄の深くで理解した。


 私の目の前に長槍が振り下ろされる。

 凄まじい音を立てて、それはアルマ君のあらかじめ張っておいた結界に食い込む。


「リリィさん!!!!」

「なにボケっとしてんだ!」


 アルマ君と、何処からともなく現れ、ガブに飛び掛かった看守君は燃える短剣を抜き、切りかかる。

 私はその光景が信じられなかった、こんな化け物に、魔物に切りかかるなんて、常人の出来ることじゃないと思った。けれど、私の後ろに居たアルマ君は私の手首を掴むと叫ぶ。


「リリィさん! いったん引きましょう! 戦う必要なんてないっす!!」


 た、戦う必要なんてない?

 い、いや、だめだ。こんな魔物、放っておいたら街は一瞬にして侵略されてしまう。オークたちは本気だったのだ、数的にも、魔法も使えないオークたちは、どうやってこの街を落とすつもりなのかと思っていたけれど、オークたちは本気だった。そう思えるほどの覇気を感じたのだよ。


「う、うわあああああああああああああああああああああ!!!!」

「リリィさん!?」

「何やってんだ!!」


 私はアルマ君を振り払うと、手首に思いっきりナイフを突き立てた。

 そこで初めて気が付いた、私は≪痛覚無効≫も≪ビルドアップ≫もかけるのを忘れ、ただざっくりと自傷行為を行っていた。


 どうしたというのだ…? どうなってる? 心臓が破裂しそうだ、気持ちが悪い、やけに感覚が敏感で汗が滝のように吹き出ている、痛い…痛い、何故アルマ君や看守君はそんなにも冷静なのだ!?

 来る。

 また攻撃が来る、早くどうにかしなければ、何が出来る? この化け物を倒すには、何が出来る!?


「<サイコロジッ――>」



「逃げれば勝ちっス!!!!」



 …………。

 逃げれば、勝ち?

 私は顔を上げた、ガブを見上げた。

 血を吐きながら戦うそれは、確かに恐ろしいが、同時に満身創痍だということに気が付いた。

 そうだ、なぜ今まで気が付かなかったのだね!?

 自然と肩に入っていた力が抜けた気がした。そうだ、もう既に彼は満身創痍なのだ、私は、私がこの化け物に出来ることは、――逃げること。


「お前ら! こっちだ!!」

「ちーちゃん!!」

「騎士君!!」


 そうだ、逃げろ。

 時間を稼ぎ、冷静になれ。私は何のために戻ってきたというのだ!


 ドスッ――。


 後ろで、何かが刺された音がした。


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