天才剛毛ロリ童女を添えて~雑談はお好きでしょうか?、もあるよっ!
◇ ◇ ◇
私たちはオークの里を追い出され、一時休息を取るべく、近くの村へ向けて、この一面、緑黄色世界の草原をひたすら歩いていた……。
……。
雪が積もり、真っ白になった地面のことを銀世界なんて表現するので、思い切って、何の変哲もない草原を緑黄色世界と、感受性豊かに、センシティブに言い換えてみたけれど、違和感がすごすぎて新用語成立にはほど遠い出来だったみたいだね、うむ、これは長距離移動による思考力の低下だということにしておこう。そうしよう、キラベルきっての大天才が、こんなしょうもない新用語を作り出そうと努力し、あえなく散っていったことなど、誰にも知られてはならないのだから。私の思考の中に留めておいて正解だった。
特に。
私の後ろにいるあの魔族に知られなくて本当に良かった。
「一体どこまでついてくるつもりだね」
「だから村までっつってんだろ?」
「そうか、なら離れて歩き給えよ、クズが移る」
「ウイルス扱い!?」
「私の間合い、半径四メートルは離れたまえよ」
「オメーは凄腕の剣士か」
「あっ! 入ったなっ! 私の領域に! ……はあ、だめだ、歩きすぎてそんなことやってる元気もない」
「なんだよ殺さないのか?」
「もうそんなこと知らないね、キミなんか勝手に滅んじゃって下さいって感じだよ」
「なんだか、堕落した天使が言いそうなセリフだな」
草原は広く、そして私の心は狭かった。
疲れた、もはやこの魔族と話すために口を開くのも億劫だ。ま、そんな時に限って、雑談しようなどと言ってくるのだよ、このクズは。
「天使といえば…前に天国と地獄ってゲームを魔王城でやったんだけどよ」
ほらね。
「いいじゃねーか、暇だろ?」
嫌な事ばかり当たるのだよ。ほんとに。
だが、暇なこともまた当たっていた。大当たりだった。
「まあ、君が喋る分にはいいかね、それよりもいまだに君が魔族だったことが信じられないよ」
「魔族だったかどうかは、この話にあんま関係ね―んだが…ま、ホント戯れで、オークの野郎がカードじゃ勝てねーってゴネリだしたからよ、じゃあお前がゲーム決めろって」
それで、そんな懐かしいゲームを…、あえて長尺になりそうな説明はしないがね、鬼ごっこの、セーフティゾーンがあるバージョン、とでも言うのが正しいのか分からないけれど。そうだね…魔族もやるのだね。
「ああ、俺もまさか人間もこんな物騒な名前のゲームやってるとは思ってなかったぜ、ケケッ、まあそれは置いておいて、始まったはいいが、普段動いてねーと結構きつくてな、天国に居られる時間、持ち時間が十秒しかないからな、結構走ることになったんだけどよ」
「ん? たしか天国は二十秒までオッケーじゃなかったか?」
「あ? なんだそりゃ、それじゃあ人数によっちゃあ鬼が結構きつくねーか?」
「そうかね? まあ、こういうのはローカルルールがつきものだからね」
「この話しだすと最悪喧嘩になりかねねーからな…」
それは…同感だね。
私は話の続きを促すように、無言を貫いた。
「で、鬼の俺含めて七人ぐらいいたんだが、体格でも戦闘力でも負けてた俺は、全くタッチ出来なかったんだよ。当然だよな、だからあのオークの野郎はこれを選んだんだから。で、考えた、どうやったらこの鬼ごっこに勝てるか」
「もはや鬼ごっこ扱いかね、ま、構わないがね、で、どうしたんだね?」
「天国は四か所、真ん中を空けて、大体四角形になるような形で設置されてた、天国と天国をつなぐ間は結構距離があったからな、当然、対角線の天国じゃなく、隣の天国に移動するわけだけどよ、やってみると分かるんだが、六人が別々の場所で、別々に移動する、十秒間以上は居られねーから、その前に出ることにはなるんだけどよ、一つの天国に近づくと他三つの天国がおろそかになる、だからといって左右に顔を振りながらだと、目の前のがおろそかになっちまって隙を突かれる、俺なんか雑魚中の雑魚だ、一歩遅れれば絶対に捕まえられねーってわけだが…」
「うむ、こういう遊びは体力の多い奴が勝つのだよ、いつだってそうだよ」
「なんだか経験ありそうだな。まあ俺もそう思ってた、けどよ、俺には勝たなきゃいけねー理由があったんだよ」
「ん? 一体何だねそれは」
私は止まり振り返ると、顔の前で、構えるように人差し指を立てたジン君。
「金だよ」
はあ、この魔族は…。
「この勝負に調子に乗って全額かけてたんだ、カードで勝った分も全部な」
「ホントどうしようもないね、キミは」
「それはいいんだよいつものことだ、そんで考えた結果、ある法則に気が付いた、というよりも習性にチケーかな」
「習性?」私は首をかしげると、奴は真面目ぶった表情のまま、軽くうなずいて見せる。
「アイツは同じ天国にいるやつが飛び出すと時間が余っていても、必ず、後を追うように飛び出すんだよ」
「な、何故そんなことをする必要がある? 折角先に飛び出してくれたのだ、普通は同じ方向なんかに行かずに逆側から出るなり、するだろう…」
「そうだよな、俺も違和感があったんだよ。全員の天国に入るタイミングと持ち時間を計測してる時オークだけが、半分以下の時間、もしくは一秒足らずで次の天国に入ることに気が付いた、まるで、何かに、強制的に動かされているみてーにな」
一種の強迫観念。
「なるほどね、普通は持ち時間のどのタイミングで、どの位置から相手が飛び出すか分からない、当然、種族の身体能力の差を埋めるのは難しいだろうね、人間単体でさえ、難しいのだから。けれど、その<習性>があれば、あるいはタッチできるかもしれないね」
「ああ、一歩も遅れを取らなきゃ、相手が走ってスピードに乗る前の走り出しのタイミングなら、俺とオークの身体能力は同じになる、俺はのその一瞬に賭け、オークの野郎をタッチすることに成功したんだなあ」
「…………ふーん、そうか、良かったね」
「ケケッ、ああ、まあ…その後、普通にタッチ返しされて、一人も捕まえられないまま負けたがな」
「なんだね! そのオチは!」
「おっ、村みえて来たぜェ」
ケケケッ、と笑いながら前を指さすジン君。まったく酷い話だった、私は笑いにうるさいアマチュアサーカス団員でもなければ、そういったオチに厳しい国民性の産まれでもないが(…たしか西の方にそういった国民性の国があると聞いたことはあるののだけれど)、これに関しては意義を唱えたくなる出来だね、まったく…。
はあ…。
……相手を追って、追いかけてしまう習性。
オークは自分たちで何かを作り出すことはないと聞いたことがある、奪い、犯す事が彼らの生命活動。例えば複眼のように目の構造事体に動くものを的確に捕らえるように進化した種があるように、我々人間にも、カラーバス効果のような、少ないがそういった無意識下で起こりうる本能を、きっと、長年の蓄積の末、獲得したのだろうね。
ま、どうでもいい、これも、雑談に過ぎないがね。
「はあ、下らない話でどっと疲れた、少し座りたい…」
「それよりも風呂貸して貰え、オメー、拘留所にいるときより臭せーぞ、剛毛だからか?」
「ごっ、剛毛かんけいないよッ!! キミはいちいちデリカシーの無い奴だね!」
「オメーはエチケットがなってねーよ、いつから風呂入ってねーんだ? ん?」
「あー…………、あっ……」
「マジかお前…」
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