天才剛毛ロリ童女を添えて~【交渉】違和感の理由、もあるよっ!
動機は、ハッキリしていた。
彼らオークがこの土地に根付いた頃から、バグライトとの関係は刻一刻とその亀裂を、ヒビを、深く広く、決定的な物にしていった。
「我らは古来より、襲い、奪い、略奪しながら、他文明を犯しながら生きてきた」オークの長はその大きな口から生臭い息を吐き、大きなイボだらけの顔を歪ませながら、顔の割合からしたら小さな、焦点の合わない白く濁った目で俺を見据え、そんなこれっぽっちも興味のない昔話を始める。ったくよ、俺はお前らオークの血なまぐさい歴史なんて興味ねーって、そういいながら長が話した内容を俺は頭の中で整理する。まあ、結果的に言えば、理由を聞いておくのはプラスになった言えなくもないか…いや、<結果的に言えば>そうでもねーな、<アイツ>がいる限りそうでもなかった――。
「昔、戦争に破れ、この山間にたどり着いた何台か前の我らが長がここに根付くため、近隣国であるバグライトとの友好の証として。とは名ばかりの…いわば不平等条約を結び、互いに不可侵の状態を作り出した」不平等条約。余りにも主観的だな。「確かに、それは我らから見たらという意味に過ぎない、本来取り決めやルールなんてものは公平に、平等に作らなければならないということはまったくもってない、そこには立場や権利が絡み、当然、向こうは当たり前の交渉で当たり前のように、このような条件で条約を結んだに過ぎない」そこにある<悪>は唯一、ルールや取り決めから逸脱すること、破ることに他ならねー。長はピクリとも動かなかったが、隊長は再び俺をにらみつける「物や資材、マジックアイテムなど、もちろん関税などかけられず値段も割高だったが、それはショバ代として割り切り。そしてそれ以上に、取引はこの里も豊かにしていった」
「だが、それも最初のうちだった…。向こうは魔物相手だといい気になり、最近では我らには使えない魔導書や腐りかけの食料などを売りつけてくるようになった、この里を見ろ、規模こそ大きいが、どうだ、プレハブに住む我らの民を、食料などとれるはずもないこの岩肌だらけの山間で、そんな取引に応じるしかない我らの気持ちを」
結局、そういうことだった。怒りとはつまり、自分たちの立場を上げたいと思うことに他ならなかった。…そんな下らない理由なら止めておけ、お前の大事な民が死ぬだけだぞ。「死など畏れない、生とは死とはただの状態に過ぎない、我らがオークはそういう種族だ」はあ…なるほど、ココが短命種との認識の違いか。「そして、勘違いしてくれるな、小さき魔族よ、我らの怒りはこれだけではないのだ」
――なに?
「我らも愚かではない、ジン、小さき魔族よ、其方と同意見だ。何故、このような条約に与しなければならないのか、我らの立場が、力が、どの程度なのかそれは十分理解していると言ったはずだ」じゃあなんでだよ? 俺は決められたことのように訊き返した。「ある、出来事だ。ルールを、決めごとを破ったのは奴らだった――」
「メイベルン通りの事件、だろうね」いつの間にかリリィは俺の後ろから前に出てそんなことを言い出した。事件? もちろん人間の街に来たのはつい先日の事だ、知るはずもなかった。「六年ほど前からか…我らの民がたびたび<消える>という事件が起きたのだ」消える、行方不明か、それとも逃げ出したか。「我らも様々な憶測や推理、もちろん対策もした、だが、ある日こつ然と姿を消すのだ。結婚を誓い合った若人、将来有望な戦士、毛も生えそろっていない赤子、様々な民が無差別に、どこかに消えてしまうのだ」それは――、不可解なこって。消えた先は? どこかで見つかったとか、そういうのはねーのか? 「うむ、なかったのだ――――。最近まではな」
なるほど、それが<怒り>か。
「奴らの…バグライトで我らが民が見つかったのだ、無残な姿になってな、許せるか? 我らは今まで耐えてきた、従ってきた、奴らが決めたルールに、どんなに不平等だと感じていても、腹に据えかねても、我らは耐えてきた。だがどうだ! 蓋を空ければ、破ったのは奴らではないか!! このまま許しておけると思うか!? 我らは戦うぞ! 戦士たちよおおお!」周りからも、ボフゥボフゥという興奮した音が響き渡り、リリィはその熱量に再び萎縮し俺の陰に隠れやがった。ったく、やる気満々ってか? オークの話を聞き、こいつらと直接対峙し、熱量を見て、戦争を仕掛けるのも無理はないと、止められないと、そう、思った…………。
が、俺には疑問があった。
「なら何で、俺と話している?」
…………。
長は反論することなく、相変わらず焦点の合わない目で俺を見る。
言うまでもないが俺はこの戦争を止めに来た、バグライト側の使者であり、そんな奴の言葉に耳を貸すほど、この決まり切った怒りの矛先に不安要素などないように思えるが、つーか、そうだ、前回の使者は帰ってきていないとか言ってたな、ならそれこそおかしい、俺の話など無視して、送り付けられた敵の使者など無視し、戦争に行けばいいだろう? それが可能なほどの熱量を、俺は感じていたが…何故、俺の話などわざわざ聞きに来たんだ?
オークの長を見るが、反応はない、周りに居た兵士たちは反論をしない長に動揺し、ざわざわと騒ぎ始める、が、一人だけ、動揺していないヤツがいた。
隊長、隊長は俺の顔を見る。なんだ? 何が言いたい? 俺は話を聞いてから思った、もう一つの疑問をぶつけてみる。
「誰から聞いたんだ? そのバグライトからここのオークが見つかったって話は」
どよめきが、静寂に変わる。
おかしい、こいつらは互いに不可侵の条約を結んでいた、まあ、今となっては破られちまったが、だとしてもここのオークたちは、それに従順だった、だったら、バグライト側はそんなこと自分たちの中でもみ消せばいいだけだ、ここに伝わるには、…そう…誰かが。
誰かがここにその情報をなが――。
「そこまでだ、<裏切り者さん>よお」
低く、地鳴りのような声が響く、いや、コイツが歩いたんだ、地鳴りは実際に起きてたのかもしれない。
「……、ケッ、やっぱテメーか、イボーグ」
長の後ろから、さらに巨大な体を覗かせ、<魔族>のその<鬼人族>は深くかぶっていたローブを脱ぎ捨て、彫刻のような筋肉と赤い肌を見せびらかしながら、姿を現した。




