天才剛毛ロリ童女を添えて~説得成功!もあるよっ!
緊張のなかそんなことを言われた両者は最初ポカンとしていたが、その意味が分かったのだろう、俺の方を向き、武器を構える。
「な…なんだって…?」
俺のすぐ後ろではリリィが驚嘆の声を上げる。まわりもそうだったのだろう先程まで俺のことを一匹の弱い魔物だと思って見ていたイカツイ隊長までも、俺の動きを逃さないようにと注視していた。驚いただろう、何故なら、当の本人である俺までも驚いているのだから。
魔族。魔王軍の傘下にあり、魔王の手足となる魔物の事だ。魔物と魔族に違いはないが、意味はこうして使い分けられている、まあ俗語といったかんじか、いわゆる族というイメージが先行して使うようになったと思う。
「ブ、バーゼル貴様! やはり――!!」
「ち、違います! 想定外です、あ、あなた魔族だったのですか!?」
さっきの冷静さは何処へ行ったのか、センター分けのバーゼルと呼ばれている男は焦った様子で身を乗り出しそんなことを言っていた。
魔王の影響力がこれほどまでとは…、まあいい、今となっては好都合だ。俺はこの機会を最大限生かそうと、一歩、前に出る。オークどもがザワっと一瞬ざわめき後ずさる。
「此度の戦について、始末を付けに来た、そちらの長に話しをさせてくれまいか」
「ぐっ…」
「…。」
オークの多くは後ろに後ずさるが、隊長オークだけはいまだに俺の動きを注視し、バーセルの方に一瞥を送ると目をつぶり、そのデケー豚鼻から息を吐き出すと、諦めたように肩を落とす。
「…………おい魔族」
「あ? なんだ?」
「お前ェ、――――悪魔を見たか?」
「…あく――」
「悪魔だと!?」
俺が疑問符を付ける直前、何故か後ろにいたリリィが驚いた様子で突然割り込んできた。なんなんだよ畜生。
悪魔ぐれー魔王城には沢山いた、小さいのから大きいのまで、まあ総じて腹の底の見えねー気色のわりィ奴らだったがな、そういう意味では見たと言っていいだろうが、あいつの意図が見えてこないうちは下手な事言わねー方がいいだろう。とにかく、俺は俺よりも前に出しゃばってきたチンチクリンを制止し、オークの方を見る、が特に驚いた様子はなく、リリィの行動にも何も言ってこなかった、というよりも、これ以上何も言う気はないといった様子と表現する方が適当か。数秒の静寂の後、隊長オークはくるりと反転すると、来た道を戻るため歩き出した。
「ボフウウウ…来い、引き上げるぞ」
「お前ら! 撤退だああああ!! …何ぼさっとしている、魔族こっちに来い! 我らが長に謁見させてやる」
「――ふう」
はああああああ、何とか乗りきったミテーだなあ、危なかった。肩をなでおろしていると「あ、あなた、そこの魔族の」バーゼルがそんなことを言いながら兵の間を抜けながらこちらに歩いてくる。
この役立たずが、テメーのせいでおじゃんになるところだったぞ。
「あなた、魔族だったのですね」
「あ? だったら何だよ」
「…いえ、意外だったので」
「チッ」
何が言いてェ、まあいい、とりあえずの脅威は去った、そんなことよりも今はこの先どうするか考えなきゃなんねーんだ、こんな奴に構ってる暇はねー。
オークの後をついていき、門の先、外に大きめの馬車が何台か見えてきた辺りで、俺の後ろですれ違うオークに一々ビクついているチンチクリンの存在に気が付き…。
「…お前、何で付いてきてんの?」
「え?」
「え? じゃねーよ、何で付いてきてんだよ!」
「キ、キミ忘れたのかい!? 私はキミのバカみたいな作戦に巻き込まれた言わば被害者なんだよ! 私だってついて行きたくなんてないさ! だがこうして使者として選ばれてしまった以上、キミについて行くしかないんだよ!」
「はあ?」
「なんだ? どこが分からない!?」
このチンチクリン本当についてくる気か? 最初は天才魔法使いの影に隠れていればいいやと思って、それなりに使い道はあったんだが…今となっては只のチンチクリンだもんなあ…。
「な、なんだその目は! 何故そんな要らない子を見るような目で見る!! このっ、私は天才魔法使いだぞ! 敬え!!」
などと言いながら地団駄を踏むこのチンチクリンは、どうやったってお荷物になるような予感しかしない、正直ここで置いていきたい…。
俺はイライラを抑えながらオークの催促する馬車へと乗り込む。




