天才剛毛ロリ童女を添えて~その場しのぎの作戦もあるよっ!
「パイセンパイセンパイセンパイセーーン!!」
突然、空気を変えるように奥の扉が開き、一人のショートカットのローブ姿の女が入ってくる。随分と慌てた様子で部屋に入ると、げんなりとした表情の看守に近づき大声で話をする。
「お前…そのパイセンってのやめろってあれほど――」
「パイセン!! 魔物が! 魔物が結界が無くなったのを見計らって、せ、攻めてきたっす!!」
「なっ――!!」
「ついに来たね…」
魔物? 何のことだ? こいつらのリアクションからすると随分大変なことのようだが。
「おいリリィ、魔物って何のことだ?」
「んーああ…知らないかね?」
「あ?」
「ああ、いや知らないのなら良いんだよ。この国はね魔物から宣戦布告を受けている状態でね、今までは小競り合いで済んでいたんだか、何故か結界が無くなったらしいじゃないか? ついに攻めてきたようだね」
……。乳山が不安そうな顔で「な、なあ、もしかして、結界を破って魔物が攻め入るきっかけになったのは…」と何かに気が付いたようだが、それ以上は聞きたくない。
「数は!?」
「た、沢山っす! 奴ら今回は正面突破かけてきてて、街にも被害が、とにかく行くっす!」
「仕事増やしやがって、あのボフボフうるせー奴ら、今日こそとっちめてやる!」
看守の身支度を急かすローブ姿の女。今、街には魔物が攻めてきて暴れまわっている、その原因を作り船爆撃を行い街を破壊した張本人は、身元不明の女騎士と謎の魔物…どう考えても怪しい、俺たちがいくら弁明しても疑いは晴れるどころか本当にこのままでは処刑だ。逃げ出すか? この鉄格子をどうにか出来れば…いや、普通に無理だろこんなもん、見ろ、俺の腕より太いぞ。他は…手持ちのアイテムは没収され、唯一誤魔化せたのは保管の指輪のみ、か。
どう考えてもここから逃げ出すのは無理、かといって逃げなきゃ処刑される。
――一か八か、作戦を試してみるしかねーか。
「おい、そこのクソ看守」
「……。」
「パイセン呼ばれてますよ?」
コイツ無視しやがって。
「…なんだ?」
「ケッ、その攻めてきてる魔物、獣人族じゃねーか?」
「えっ!」
「……お前、何故分かった?」
ケケッ、ビンゴ~。
看守はリリィを見るが、リリィは首を横に振る。
「この近くでオークって言ったら、アイツかもなあ…いやいや間違いない、アイツだ」
看守は数秒の沈黙の後、チラチラとこちらに視線を送りながら俺に顔を寄せてくる。いいぞそれだ、その感情が欲しかった。
「お、お前、もしかして知り合いなのか?」
「んー? おおーっと、そいつはどうかなあ、だが、そうだな、親友ってほどじゃないが、まあ知らねー仲じゃあなかったかもなあ…」
「えっ! パイセンパイセン! この魔物まさか!」
看守と緑髪のローブ姿の女は何かを話すと「す、少し待て!」と言い残し、慌てた様子で部屋を後にし、駆けだして行ってしまった。
「お、お前まさかとは思うが――」
「キミ! もしや、オークと知り合いなのか!?」
乳山の何かを察したような、嫌な予感を確かめるような物言いをさえぎって期待するような目つきでリリィが飛んでくる。どうやら俺が思っている以上に根深い、というか可及的な問題だったようだ。
――当然、知り合いじゃねーんだけどな。




