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044 連係プレー

土日休日20時、それ以外の日は22時に毎日更新予定です。

間違えたり忘れたりすることは残念ながらあります……

 


「こんちわー!」

「おじさま、こんにちは。ウサギ持ってきました♪」

「おっ、ありがとう。あれ?その3人は?もしかして新しい仲間が見つかったの?」

「まだお試しなんです。私たちの狩りを見てもらいました。」

「お試しかぁ。なるほどね。それ、いいかもしれないね。

 ちょうど暇だから中に入っていいよ。」

 お肉屋さんに行くとシルベルがにこやかに出迎えてくれる。

「はじめまして。よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくね。どれどれ?ウサギは……メルリーちゃんが1羽、ユイナちゃんが3羽ってところか。」

「「えっ」」

「なんでわかるんですか!?」

「だって、2人の使ってるナイフ違うだろう?切り口見れば誰だってわかるよ。」

「「「「「(誰もわからないと思う……)」」」」」

「メルリーちゃんが仕留めたのはメルリーちゃんさばいてみなよ。」

「はい!さばくのが得意って言ったのにまだ見せて無かったからちょうどよかったです。

 でも、おじさまと比べちゃ絶対ダメですよ!」

「うん。見たいです。やってみてください。」

 メルリーが1羽のウサギをさばき始めしばらくすると、ユイナが一撃で仕留めたウサギにシルベルが取り掛かる。

「うん。いいところにナイフが入ってる。これなら毛皮も高く売れるぞ。」

「たまたまだよ、たまたま。それに1回失敗して怪我しちゃったし。」

「怪我!?大丈夫か??」

「うん。仲間に助けてもらったからね。」

 メルリーは集中してナイフを入れて行くが、おっちゃんはしゃべりながら鼻歌交じりにウサギをさばいていく。



「はい!上がりっ!メルリーちゃんも終わったね?」

「速い……」

「プロってすげーな……」

 お肉屋さんの仕事ぶりを初めて見た3人は感動している。

「メルリーちゃんも開拓者としてはすごく上手だぞ。自分たちでさばくのもできないと困ることがあるんだろ?」

「はい、おじさまにそう言ってもらえると自信を失わないで済みます。」

「そうだ、代金を払わないとね。肉代だけにしとくよ。毛皮は別で売った方が高く売れると思うぞ。」

「さばいてくださってるのにいつもありがとうございます。」

「そうだ、もし西の狩場に行くようだったら気を付けておいて。最近ウルフの群れを見かけることもあるらしいからね。」

「わかりました!いろいろありがとうございます!」

 決して少なくない代金をいただいて、雑貨屋に毛皮を売りに行ってから、ユイナとメルリーにとってはいつものように、他の3人にとっては非日常を満喫するためにニームクメの町に繰り出していく。



 ニームクメに来てからというものお風呂の中で明日の予定を決めるのが日課になっている。

「明日は西に行ってみます?」

「わたしたちあんまり行ってないから案内できるほどじゃないけどそれでもいいなら……」

「2人だと群れはやっぱり難しかったので北側がほとんどでした。」

「行ってみようぜ!ウルフがいたら私たちがやるから!」

「うーん、なら行ってみよっか!今度は一緒に狩りをしてみよう!でも、邪魔だったらごめんね。」

「こっちこそ邪魔したらごめんな。」

 前衛2人がそういうならということで、後衛と後方待機組は納得するのだった。




 ◇




「この辺りから獣が出るからね。」

「わかった。ウルフだったら下がっていいからな。」

「うん。ありがとう。」

 ウサギの方が多いはずとにらんで西の狩場を歩くと、3羽のウサギを見つける。

「この辺りは今までも狩りをしたことがあるところだから……、うまくいくかわかんないけどやってみるね。」

「「「「何を?」」」」



「転移」

「転移」

「転移」



 ウサギの後ろに回り込んでは攻撃、ウサギの後ろに回り込んでは攻撃を3回繰り返す。ただそれだけの簡単な作業。

「うーん、全部一撃とはいかなかったかぁ。」

「あのさ?思ったんだけど……、私たちいらなくね?」

「そんなことないよ!ウルフは一撃じゃたぶん無理だし、逃げないで襲ってくるからさぁ。」

「ねぇ、ユイナ。ちょっとの怪我ならイベーナが何とかしてくれるから、ウルフがいてもやってみます?」

「そ、そっか……、うーん……」

「危なそうなら私たちも支援するし、1人で転移して逃げちゃってもいいですから。」

「よし!わかった!怖いけどやってみる!」

 ユイナはまた一歩階段を上り始めた。



「いた!」

「2匹?つがいかなぁ。」

「つがいだとやっかいだよね。近くに子供もいるかも。どうする?」

「1匹は私が正面からやるから1匹後ろから頼む。」

「うん、わかった。やってみよう。失敗したらごめんね。」

「初めてなんだから失敗するのが当たり前ですよ。成功したらすごいってだけ。」

「ありがとう。頑張るね。」

 5人はウルフに近づき、そのうち2人がさらに前に進み



「いくぞっ!」

 ティラは注意を引くためわざわざ声を出してウルフの正面に走りこんでいき

「転移!」

 ユイナがティラの方に向かって走り始めたウルフの後ろに回る。

 ティラの剣が一閃、ウルフを1匹戦闘不能にする。

 もう1匹のウルフにはユイナのナイフが襲い掛かるが、一撃入れただけでは戦闘不能には陥らず、飛び掛かって襲ってくる。

「くっ!まだまだっ!」

 ウルフの鋭い爪がユイナの細い腕に赤い線を作るが、至近距離に来たウルフの胸にナイフを突き刺ささる。

「……、や、やったの!?」

「やった、ね……やりましたね!やったよ!ユイナ!」

「わ、わたし、ウルフ倒せた……、これ、ほんと?ほんとのこと?」

「本当だよ。私全部見てたもん。すごい、すごいよ!ユイナ!」

 メルリーも興奮していつもの丁寧な口調が消えてしまっている。

「よーし!やったな!この挟み撃ち、意外といけそうじゃね?」

「使えそうですね。これに私の展開を組み合わせれば……、あのー、ユイナ、ちょっと無茶ぶりが過ぎるかもしれないんですが……」

「なーに??」

「ユイナくらい素早く動けたら私が展開で出す石つぶてとか火の矢なんかも避けられたりしませんか?」

「……、ちょっと……、無理だと思う。」

 ユイナはチートキャラだったり超人だったりするわけではない。とてもじゃないけどミクホの展開で生み出される攻撃を避けられる気はなれなかった。




 ◆




「治癒」

「ありがと!倒せたけど無傷でってわけにはいかないなぁ。3匹いたらかなり危ないかも。」

 ユイナの傷がスーッとふさがっていく。

「ユイナには飛び回ってもらって展開で倒しやすいところにおびき出してもらうとかもありますね。」

「おとり!?わたしおとり???

 あっ、そうか!危なくなったりミクホが展開使うとには転移で移動すればいいんだもんね。」

「そうそう!次、もしウルフがいたらそれでやってみませんか?」

「そうしよっか。でも、もしいきなり襲い掛かってきたら……ティラとミクホでお願い。」

「わかりました。そこは臨機応変で行きましょう。」

 メルリーがウルフを誇らしげに格納している間も次の狩りの計画を練っている。



 しばらく歩いていると試すのにおあつらえ向きなウルフ3匹の群れを発見する。

「緊張する……、怖くってすぐに転移しちゃってうまくいかなかったらごめんね。」

「いえ、その方が絶対いいです。ちょっとでも危ない!って思ったら転移してください。」

「気を付けてね……」



「転移!」



 ウルフがいる場所の近くにあった少し開けたところに転移して音を立てて注意を引くと、獲物を見つけた3匹のウルフがユイナに一斉に飛び掛かろうと走り出す。



「転移」

「展開」



 転移に一瞬遅れてミクホの展開がさく裂。今回は一番得意とする火属性で形作られた矢が三本飛んでいき三匹のウルフを串刺しにする。

 ティラが近づいて剣を振るって痙攣しているウルフにとどめを刺していく。



「ふー……、何とかうまく行きましたけど、ごめんなさい。展開のタイミング少し早すぎてユイナが危なかったです。」

「うーん。わたしの転移がちょっと遅かったような。」

「2人とも!すごいですよ!1回でうまくいったじゃないですか!練習すればもっと上手に出来るようになりますよ!!」

「あのさ、火の矢ってもしわたしに当たったら……大変なことになる?」

「調整しているんで死んじゃうことは無いです。そのかわりウルフも一撃ってわけじゃいかないんですけど。

 私、火属性は得意なんで加減もできるんです。

 でも、大けがはしちゃうかもしれないから……もう少し威力落として動きを止める程度の方がいいかもしれません。」

「(当たらなくてよかった……)」

 ぶるっと震えるユイナだった。







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