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010 痴話喧嘩!?

 

「ユイナさん。あなた、嘘をついてますね?」



 メルリーが少し冷たさを含んだ声できっぱりと告げる。

 なんで!なんでバレるの!おかしいでしょ!わたしの理論的な話にはどこにも穴が無いはず!

「いや、嘘だなんて、ひど……、うっ、ごめん……なさい。嘘、ついてました。」


 必死になって否定しようとしたらメルリーの目が細くなってじーっとにらみつけられ、こらえきれずに降伏した。

「でも、なんで、なんで嘘だってわかったんですか?我ながら完璧っ!て思ってたのに……」

「話の内容は確かに完璧だったけれど、あなたの態度を見ていればわかります。装備の話になったとたんに目があっちこっちに動いて髪をいじりはじめたでしょう?

 ピンとこない人はいませんよ。」

 えーーー!?わたしってそんなにわかりやすい!?もしかしてケイルでも嘘ついた時って全部バレてたってこと!?

「あと、髪をそうやっていじるのはいただけませんね。痛みますよ。せっかくのきれいな髪なんですから。」

「は、はい。ごめんなさい……」

 年下に見える少女に叱られてしゅんとなるユイナだった。



「それで、どうして嘘をついたんですか?」

 メルリーの表情が少し和らいでじーっと見つめてくる。これはもう嘘をつくことはできないと覚悟を決める。

「わたし、装備のことなんて全然考えて無かったんです。町に出て仲間が見つかったら一緒に旅をして、いつかなにもないところに村を作って、町になって……、みたいなこと考えてるだけだったんです。」

 メルリーはうつむいてぽつぽつと話し始めるが

「それはあなたのした作り話の説明にはなっているけれどそれだけじゃないような気がします……気のせいでしょうかね?」

 メルリーは自分から視線を離さない。それは全部話すまでは心を許すことは無いぞと言っているようでもあった。

「はい。正直に言います。」

 ユイナは決意を固めた。




 ◆




「わたし、ミヨ族なんです。だから家族にニームクメまで連れてきてもらうことは良くあったし、必要なものがあれば少しの量なら誰かが転移すれば町に買いに来れたんです。

 商人の話は本当ですよ。

 重いものとかかさばるものは転移だと大変だったりめんどくさかったりするから、商人さんがときどき売りに来てくれました。欲しいものができたらだれかが町に転移してお願いをしておけばそのうち来てくれるんです。

 そのついでに消耗品とかも持って来てくれるんです。」

「やっぱり……。転移持ちですか……。」

「はい、嘘ついてごめんなさい。ついでに言っちゃいますけど、旅に出たっていうのにわたしほとんど毎日家に帰ってるんです。

 メルリーさんがニームクメに来たのにわたしがいなかったっていう日は1日中故郷でのんびりしちゃってたんです。」

「あの話の時も変だなって気が付いてましたよ。いきなり嘘つき呼ばわりするのは気が引けたんで言いませんでした。」

「ごめんなさい!初対面の人に嘘をつくなんて……わたし、開拓者なんて無理なのかも……。

 もしかしたらずっと一緒にいることになるかもしれない人にいきなり嘘をついちゃうなんて、こんな人、誰も信用してくれませんよね……」

 ユイナの瞳からぽろっと涙がこぼれてほほを伝う。涙は止まることなく華奢な手のひらで顔を覆って声をあげて泣き始める。

「なんだなんだ!?痴話喧嘩か?」

「若い子2人でって男の取り合いか?」

「ちげーよ。あの子たちつきあってるんじゃねって話?」

 などと周りの客たちが勝手なことをささやきあってるが2人の耳には幸いにも届いていない。



「ユイナさん、顔を上げてください。わたしが困ってしまいます。別に嘘をついたことを責めているわけじゃないんですから。」

 メルリーの表情からは険しさが消えているがその口から「嘘」っていう言葉が漏れるとユイナの肩が揺れて

「ごめん、ごめんなさい!メルリーさん!!嘘ついてごめんなさい!!!」

 泣き声で謝り続ける。

「しょうがないですね。落ち着くまで待ってあげますね。」

 メルリーはユイナの隣に席を移してしゃくりあげて揺れる肩を抱いたり頭をなでたりして落ち着くまでなだめるのであった。




 ◆




「重ね重ね本当に本当に本当に申し訳ありませんでした!」

「だからもう気にしないでください。それ以上謝ると本気で怒りますよ?」

 テーブルに額をくっつけて謝るユイナと必死になってなだめてるメルリーを周りの大人たちは生暖かい目で見守っている。

「ユイナさんに悪気は無かったってことはわかりますから。」

「いえ、悪気はなくてもだまそうとしていたことに代わりありません。その上なだめてもらえるなんて……。メルリーさん、こんないい人なのに……」

「まぁまぁ、落ち着いてください。」

 メルリーは店員に目配せしてピースサインを作り2人分の飲み物おかわりと追加の食べ物を注文する。



「それにわたしにもユイナさんが悪い人じゃないってことはわかりましたから。泣かせてしまいましたが結果的にはよかったのかもしれません。」

「うーーー、恥ずかしいですぅ。こんなに泣いたのいつ以来だろ?しかも初対面の人の前で……」

 うーうーうなってユイナはまたメルリーを困らせてしまう。



「ユイナさん、1つ提案があるのですが聞いてくださいます?」

 すぐに届いたおかわりでのどを潤しながらユイナと向かい合わせの椅子に戻っているメルリーは話し始める。

「いずれはセイグモルドに行くとして、しばらくはここで資金稼ぎするんですよね。」

「はい。そのつもりです。街道を使うとは言っても最低限の装備は必要だって思いました。」

「だったら……」

 正面に座る少女を見つめるメルリーの目の力が強くなり

「ここにいる間はわたしと一緒に行動しませんか?」

「はい??」



 その瞬間2人の少女たちの運命が未来に向けて動き出した。



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