3.ランキング入り
次に書いたのは『魔女と王都と金色の猫』という連載小説でした。
前作を書き上げた頃には、女性向けの現実恋愛作品をなろうにアップすることの難しさに気づき始めていたので、『女性読者がたくさん居る異世界ファンタジー物を書いてみよう』という、なんとも単純な理由です。
しかし、当時の私はなろう小説を殆ど読んだことがなく(これはぶっちゃけ今も)、コミカライズ作品すらもかじっていない状態でして……(本当に薬屋のひとりごとだけだった)。
どういう作品が好まれるのか、全く考慮していなかったのです。
そうして出来上がった魔女と王都と金色の猫。
今思い返してみても、なろうらしさの欠片もない作品だなぁと思います。
キャラクターといい、展開といい、キーワードといい、如何に私が何も考えずに書いたのかがよく分かるといいますか。好き勝手に書き散らかしてます。
更に、このお話はヒロインやヒーローの成長や仕事、家族関係なんかを描いた作品で、ジャンルをコロコロ異動していたんですよねぇ。異世界恋愛なのか、ヒューマンドラマなのか、自分でもハッキリと定義できなくて。今思えば、これは致命的だったと思います。書きたいことがブレていたんですよね。
あと、この話を書き始めてから、コロナのせいで業務が超多忙になりまして。全くコンスタントに書けなかったのも、かなりのダメダメポイントでした。
とはいえ、この頃にはなろうの評価制度、ランキングというものを知ってしまった私。少しぐらいは作品が読まれるようになってみたい――――そんなことを考えはじめます。
しかしながら、作品をランキングに寄せることはしたくなくて、二作品目までは完全に思うがまま、伸び伸びと書き上げました。(性癖盛り盛りのお話で、二年がたった今でもお気に入りの一作となっています)
上記小説の完結と時期を同じくして、短編小説は案外読まれやすい、評価されやすいということをエッセイで学んだ私。
よし、一つ書いてみようと決心しました。
書くにあたり、さすがに少しは勉強せねばなぁと思いまして。私ははじめてランキング上位の作品を読んでみました。
すっっっごく正直なことを言うと、思っていたのと違うなぁと思いました。
ランキングと言うからには、めちゃくちゃ斬新な展開の小説がゴロゴロ溢れているとか、ものすごく文学的な表現の美しい小説で溢れかえっているとか、そういうのを想像していたのですよ。
実際はそんなことはなくて。似たような展開のお話がたくさん、味付けが違う形で溢れていました。ストレスなく小説を読みたい人、テンプレを求めている人が多いんですよね(もちろんそれだけじゃないですけど)。
そりゃあ私の小説は読まれないよなぁと。何が求められているか全く理解していなかったのだから当然だなぁと思いました。
そんなこんなで出来上がったのが短編小説『もう二度と、お目にかかることはありません』です。
・人気のキーワード、婚約破棄とざまぁを入れ(と書くのは恥ずかしい)、
・読んでて驚けるような要素を盛り込み
・『この文字数ならブラバせずに最後まで読んでみるか』と思えるような分量に押さえて
みました。
複雑な展開や人間関係等も極力押さえ、言い回しも簡潔に。とてもシンプルな作品を目指しました。
結果、これまで掠りもしなかったのが嘘のように、ものすごく簡単にランキングに入ってしまいました(覚えてないけど、6位が最高順位らしい)。
それまでの数倍、数十倍の人に作品を読んでもらえました。
嬉しかった。
だけど同時に、とてもショックでした。
これまで書いてきた作品と何が違うんだろう?って(いえ、自分で意図して変えたんですけどね)。
私の作品は面白くなかったのかなぁって。人と感覚が違うのかなぁって。
結構本気で悩みました。
テンプレに載せつつ、自分らしい作品に仕立て上げたと自負していますが、それでもやっぱり悔しかったんですよ。
この短編と同時期に、私は『王太子妃候補クララの恋愛事情』という連載作品を書きました。
この作品は、これまで書いてきた自分らしい作品とテンプレや流行り要素を本気出して混ぜた作品でして、連載初期にランキングに載りましたし、連載中にもある程度読んでもらえましたし、完結ブーストも(小さめですが)起こりました。
『もう二度と〜』を気に入ってくださった方が『クララ』を読んでくださったのも、読者様が増えた要因でした。
少しずつですが、なろうの歩き方が分かってきた――――そんな風に思いました。
以降、毎回ではないと思いますが、ジャンル別ランキングにのせていただけるようになり、沢山の人に読んでいただけるようになって、ありがたいなぁと思っています。また、現在の私の作品は、完全なるなろう作品だと胸を張って言うことができます。
(とはいえ、さじ加減とか個性の出し方とか、今でも色々試行錯誤をしながら書いていて、なろうの難しさを感じています)
しかしながら、ランキングには怖さも存在する。
以降、それまでとは違う形の悩みも出てきてしまいました。