8話 初めての『あれ』
いいね、ブクマ、評価ありがとうございます!
「いってぇ! ……。ぷはぁっ! いっ! ……。ぷはぁっ!」
ぐちゅごきゅくちゅめきょ、ごぐ、んっ!
血がくせえし、いてえし、まずぃし、一瞬暗くなってこえぇし、でも……最高に気持ちいいぜぇ。
『核』がどんどん体ん中を圧迫して、敏感になって、『魔素』が流れ込んでるのが目で見てるのかってくらい分かる。
力いれっと筋肉がいつもより大きく、勢いよく膨らんで、そんで腕が持たないくらいの速さで拳が突き出せる。
素寒貧で餓死予備軍、ひょろひょろがりがりの俺の身体とは到底思えねえよ。
「目? 動体視力? も良くなったのか、お前から噴き出す血の一滴一滴が鮮明に見えるぜぇ。『魔素』すげ、えっ!!」
「う、が……」
――ばぎ
瀕死の化け物、じゃなくてモンスター、オーガの頭にギュッと握りしめた拳を思い切り振り落す。
そうしたらさ、響く頭蓋骨の音、それに味付けのりをいっぺんに食ったとき、ラーメン型のスナック菓子を一気に口に放り込んだときにも負けない快感が俺を刺激してくれてさ……。
――超気持ちいい。
「もっともっと、試してみた――。って痛っ!」
「馬鹿。遊び過ぎだ。売却できるのは犬歯だけとは限らないんだぞ。あーあ、安いけど眼球だって売れるのに……」
「ご、ごめん」
「……。分かればいい。ふぅ……自分を見失ってはいない、か。……。俺は先にモンスターから素材を剥ぎ取る。郷田、剥ぎ取り方のレクチャーは頼んだぞ」
高野さんの拳骨で頭が揺れた。
確かに調子に乗ってたかもしんないけど、そこまでする必要ねえじゃんか。
「清四郎。あいつはちょっと兄貴肌というか、お節介すぎるときがたまにあってな。まぁ悪く思わないで欲しい。今の拳骨分は……」
――ちゅ
「こ、これで許せ。さ、さぁモンスターから素材を剥ぎ取るぞ!」
「……。……。はい」
キス。初めての。頬っぺただったけど。あったかくて、柔らかくて……最高。
なんか今は、何も考えずに余韻に浸りたい。
はぁー、キス。今度は口に……舌を絡ませたり……。ぐふふ……。ふふ。ふふふふふふ。
「――えー、全部で3000イルですね。通常であればまだまだイルは足りませんが、初回侵入ということで今回のみ出口を使用してもいいですよ。それと、今後ダンジョン内に侵入する際はスマホや近代武器、例えば銃などを持ち込むのは禁止になりす。知能の高いモンスターがそれを利用、複製する可能性がありますから。持ってきていいのは、こちらのセット。ナイフ、モンスターの情報の乗った冊子、頭陀袋の3点で……って聞いてます?」
「ぐふふふ、キ――」
「だ、大丈夫だ! 気にするな! そ、そうだろ清四郎!」
「え? 郷田さん? あ……ああっ! 勿論ともさっ!」
本当に何も考えてなかったら、全部終わってたっぽい。
……。ま、まぁいいか。買取場所はえっと、セーフティエリアの出口近くで……。剥ぎ取りもなんか適当で大丈夫っぽいし。
「はぁ。お前らなんかずっと様子おかしくないか?」
「ちょっと心配ですね。ともあれ、借金の返済分を引いて……。はい! 1500イルです! 無駄遣いは駄目ですよ」
不安そうな視線を送る高野と買取のお姉さん。
でもごめん。正直今日1日は浮ついたまんまで大丈夫そうにないや。
「あ、出口はそこの細い洞穴を潜って進む形になってます。勝手に地上へ戻ろうとする人がいるので、なかなかな傾斜になってますが、ロープを伝って頑張って登ってください。こう、SASU●Eのファイナルステージみたいに」
「……それもうこんなか、傾斜って言えるレベルじゃなくない」
「これもしっかり返済させるため仕方のない仕組みだから、観念しないと駄目だぞ清四郎」
「はーい。でも、やる気出ないなぁ……」
ちら。ちらちら。どうだ? やる気のない振りをすればもう1回キスできるんじゃ――
「まったく、仕方ない奴だな。……私が先に行く。と、ととと、特別にその途中上を向いてもいいぞ」
「……。思ってたんじゃないけど……。あざっす!」
小さな声で耳打ちをしてきた郷田さんは、顔を赤くしながらそそくさと先陣を切った。
これでまたパンツが見れ――
「――。……。……。……。なんで帰りは暗いんだよおおおおおおおおお!!」
「な、なんでだ。私まで残念な気持ちに……」
「いいからお前ら、さっさと進めって!」
お読みいただきありがとうございます。
モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。