5話 不死身ってこと?
「がぁぁあぁぁぁっ!」
「だめ、だ。力が入らない。く、来るな……。来るな――」
――ぶち。
「う、あああああああああああああああああああああああああああっ!!」
痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
脚が、俺の脚が……指を切られたとなんか比に、ならないっ!
死ぬ。絶対に死ぬ。
脚噛みちぎられて痛い、だけじゃなくてどんどん寒気が……。
血が、身体の血が抜けってってるせい、か?
……はぁ。痛みも感じなくなってきた。それなのに、意識があるとか……こんなことなら痛みに慣れたくなんてなかった。
あーあ。死ぬ前に美味めえもんたらふく食いたかったな。
……。
「く、いもん……。た、らふくっ!!」
「うあっ!! こいつ、狂って、る……」
最後の力を振り絞って目の前に見えた肉に齧りついた。
鉄の味が口一杯に広がってちょっとだけ生臭い。
そっか俺、人間食っちゃったのか。でも、そこまで悪くないな。いっそのこと腹一杯食っちゃおうか。
「ん、ぐっ――」
「馬鹿! そんなの食ったら体内の『魔素』が一気に増えて――」
「高野。そんなの教えたところで無駄だ」
高野さんの声が聞こえる。
どうやら人間の体、というか『魔素』? ってやつを体内に取り込むとまずいらしい。
よくわからんけど、『毒』みたいな感じかな?
確かにさっきから体のそこら中から血が噴き出て……でも、もう死ぬからどうでもいいか。
「郷田……。だけど――」
「そもそも、あれは人殺し。三鷹も食われてる方もそろそろ――」
――バンッ
轟音。
不思議だけど、体がバラバラになっていくのが分かる。
頭はまだ残ってるみたいで、周りも見える。
弾けた名前も知らない男。爆発に巻き込まれて死体に変わる化け物数匹。
冷静な顔の郷田さんと悲壮感漂う表情の高野さん。
「あー、腹一杯にはならんかった、なぁ……」
しょうもない言葉が零れて視界が暗くなる。真っ黒だ。
ただ、意識はある。
死ぬと無。なにも考えられなくなると思っていたけど、本当に天国とか地獄に魂だけ連れてかれるみたいなことがあんのかなぁ……。
……。……。……。……。……。
いや、全然なんにも起きないんですけど。
死んだ、んだよね俺。
あれ? 体動く……。目の感覚も、ある。
「うっ。眩し――」
「え? 嘘、でしょ?」
「あ、はは。俺の『自他索敵操作向上』が霞むくらいチートな力だよ、これは」
郷田さん、高野さん。
2人とも鳩が豆鉄砲を食ったみたいに……。
俺、生きてる? ……というより生き返った?
「足も、売ったはずの指も元通り……。どうしちゃったんだ、俺の身体――」
「うがあああああああっ!!!」
「え?」
立ち上がって自分の身体を確認してると、さっき俺の脚を食いちぎってくれた化け物が、慌てた様子で今度は右腕に齧りついてきた。
でも……。痛いのは一瞬。食いちぎられた俺の腕は一瞬で生え変わった。
――ぶち。ぎち、ぶち。ぶしゅ。
何度食われても腕は生え変わる。
これもしかしてだけど……俺、不死身なんじゃね?
「う、がぁ――」
――ぶしぃぃぃぃぃぃぃぃ
「え? 血噴き出した? そんでなんでお前が死ぬの? あ、もしかして俺の身体が『魔素』? 『毒』みたいなのに侵されてるから?」
……。痛いけど……。この方法を使えば……。
「大盤振る舞いしてやるよ。お前ら、今日は食い放題だ!」
全力で舌を噛み切って、それを化け物たちに向かって吐き捨てた。
すると化け物たちは堰を切ったように、一斉にそれに飛びつき、そのまま俺の元まで走ってきた。
脚、腕、腹、頭、いろんな箇所を食いちぎられて痛い。
でも……でもでもでもでもでもでもぉ
「お前らの方が苦しいよなあっ!!」
俺を食った化け物どもはどいつもこいつも血を噴き出して死亡。
「はは……。やった。俺も強いっしょ。高野さん、郷田さん」
呆然と立ち尽くす2人に視線を向けた。
すると高野さんは気が抜けたのかその場に座る込み、郷田さんは何かを決心したような表情でゆっくりとこちらに向かってきた。
これ俺、怒られるとかじゃないよな?
「私は強い男、それに大金の匂いがする男が好きだ。……。三鷹清四郎、お前は私のスカートを何度も覗いたな。それは、そういった関係になりたいということだろ? ……いいぞ。もし借金を返済し終わったら……。その、えっと……私を好きにしても」
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