1話 白の布地……じゃなくて借金取り訪問
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「う……うめえ! やっぱ生きる源は肉だよなっ! 肉がただで手に入るとか、今日の俺めっちゃついてる――」
――コンコンコン。
「……。誰? 食事の邪魔なんだけど」
「あ、どうも消費者金融会社『ライフ』の高野と申します。って臭っ……」
いきなり押しかけてきといて鼻をつまむとか、スーツ着てるからって失礼じゃないか?
それにこの匂いが臭いとか、食料になってくれたカラスさんに悪いとは思わんのかね。
「そ、そのぉ今食べてるものってもしかして……」
「肉ですよ。カラスの。いやーたまたま車に引かれた奴がいてラッキーしたっ。湧いてた蟲は流石に不味かったんですけど、肉はうまいっすよ。ま、見た目は悪いかもだけど」
「そ、そうですか」
「そんで、消費者金融会社がなんのようっすか? そもそも俺、金借りてないし、てか借りれないんですけど――」
「三鷹清四郎。20歳。家出3年目。捜索依頼中。叔母に見つかる可能性を危惧して知り合いから教えてもらった治験バイトや手足の指を売って生活。両親は数年前に蒸発。現在の住まいはこの廃墟。……確かにこんな状況の方に貸し付けるのは不可能です。しかし、親が死亡し、3か月経過した場合、その借金は相続されるんですよ」
「親が死亡? それに……そう、ぞく?」
「はい。あなたの父親の死亡は私たちで確認しております。死因は病死です」
「病死……」
俺を捨ててどこかに行った親父。
それでも母親と違ってたまに父親らしいことしてくれてたっ……いや、してなかったな。
死んだことは別にショックじゃないけどさあ、一発くらい顔面ぶん殴ってやりたかったわ。
「では次にこれを見てください。これはあなたの父親が抱えた借金を記載したものです」
「えっとぉ……。1、10、100、1000、10000……。あはは、うっそでしょ、これ」
「いいえ。嘘ではありません。残り1憶円ちょうど。ここに来たのはあなたからこれを取り立てるためで――」
「無理無理無理無理無理無理無理、無理だって! ほ、ほら見てよ! あんたたちもさぁ、腐ったカラスの死体を美味そうにしゃぶる奴がこんな金額支払えると思わないっしょ!」
こんなの支払えるわけがないじゃん。
いやぁ、頭おかしくなる。なんとか同情を買ってこの場は一旦引いてもらうしか……。
でもなぁ、さっきと違ってこいつ、高野の野郎、同情するどころか、さっきみたく鼻をつまむ仕草もしないんだが。
くそ、そのめっちゃ真剣な顔やめろよ。
「はい。普通であれば」
「そうだろ! だから今日は見逃してくれよ……って普通であれば?」
「さてと、そろそろ敬語はいいか。おーい! やっぱりこいつ払えないってさ!」
「え? おま、どこに向かって喋って――」
――ドン。
鈍い音。唐突な痛み。
高野に殴られた……わけじゃない。
やつはまだ後ろ向いたままで――
「ってえな……。お、おま、誰だよ?」
「……1発で意識を失わないか。ふふ、これは期待できそうな債務者が手に入ったかも」
ムチムチ……って言うにはおかしなくらい筋肉質で、異常なほど太い脚の女。
こいつ、いつの間に俺の腹の辺りまで……・
「こんなんで気ぃ失うわけねえだろ。こっちは麻酔なしで指とか切って売ってんだ。んで、お前誰? それにどうやって――」
「私は郷田明美。地下労働場、いや……『ダンジョン』の1階層で主に『見回り役』を任せられている。頼むからお前は完済前に死んでくれるなよ。いくら『発病者』の死体から魔石が取れるとはいえ、ポンポン死なれると他の資源が集まらないからな」
「ダンジョン? 発病者? ……死? お前ら俺に何させようってんだよ! くそっ、離れろよおま――」
「私、うるさいのは嫌いなんだよ」
押しても叩いても動かないその屈強な身体から放たれた手刀が首に落ちた。
ぼやける視界、失う手足の感覚。
いてえ、いてえけど……。『そこ』の景色のためにもうちょっと……。もうちょっとだけ、動け。
「う、ぐ……。白、か。意外と可愛らしいのは、履いて――」
「なっ!? み、見るなああああああああああああああああっ!!」
筋肉で閉ざされたスカートの隙間から微かに見えた純白。
覗き込んだとき『なんだスパッツか』って一瞬がっかりしたけど、はち切れんばかりのこの筋肉で激しく動けばパンチラガードのスパッツなんか簡単に――
「うがっ! ぐっ!」
「こいつ殺す殺す殺す殺す!」
「おいおいおいおい、ちょ、ちょっとストォーップ――」
恥じらい女子の殴打ラッシュ。
あ、これ、もう……でも、いいもん見て死ねるなら本望じゃ、ね――
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