12話 強襲でどや顔
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今日の続きはお昼になります。夜は……力尽きなければいける、かも。
「――ヒートヴォルフ、オーガ、コボルトの眼球と牙、コボルトの毛皮……返済分を差し引いて手取り4000イル。うん。やっぱ、出口の利用条件高すぎるね」
素材を買い取ってもらうと、手に入れたイルをポケットに詰め込んで、セーフティエリアを出る。
郷田さんは『魔法系のモンスターが狩れるなら出口の料金くらいすぐ稼げるぞ』って言ってたけど、この成果を見るとどうしても信じられなくなるなぁ。
「それに魔法系のモンスターが出るのは、セーフティエリアから半日歩いた辺りって……。その分近場で狩ってたほうが効率いいんじゃ――。ん? これって……。それになんか声が……」
買取額の低さにテンションだだ下がりで歩いてると、前から人間の声と伸びた草花をかき分ける音が響いてきた。
また誰かがモンスターに襲われてるのか?
どいつもこいつも……帰れなくて焦る気持ちは分かるけど、もっと狩るモンスターを選んでさぁ、命は大事にしようよ。って俺がそんなこと言うのはおかしいか……。
「ひ、ひぃ! はっ、はっ、はっ、早く……もっと遠くへ行かないと……こ、殺される!」
「はっ、はっ、はっ、お、落ち着け! あいつはもう追ってきていない! 乱れた呼吸は他のモンスターたちに自分が弱ってると錯覚させて、襲われるリスクを高める。冷静に慎重に、セーフティエリアに向かうんだ!」
「おお! 今度は死にかけじゃないじゃん! なぁなぁあんたらもしかして、オーガに襲われて逃げてきたのか? はは、あの程度のモンスターに手こずるとか、俺のがよっぽど強――」
「誰だか知らないが、お前も逃げろ! あれはこの辺を狩場にしてる探索者には勝てない相手だ! くそっ! なんであんなのがこんなとこにいるんだよ!」
……狩るモンスターを選ばなかったわけじゃない、か。
前言撤回、この人たちはちゃあんと作戦命大事にを決行してる。
「ごめん、誤解してた。そんで、注告助かったよ」
「誤解? よくわからないが、礼はいいっ! 早く逃げ――」
――ボンッ!
何かが爆ぜるような音。
遠いからか、ぼやけて聞こえたけど、今のって……
「オーガプリーストの火球が何かにぶつかった音だ。人に当たった感じじゃないし、音の大きさからしてここから距離もある。はぁ、これなら少し安心かもな」
「火球?もしかしてオーガプリーストって火を操れるのか?」
「操るというより、『火球を打ち出せる』、だな。新米探索者はそれだけかって思うかもしれないが、その速さ、威力、範囲はランク3の探索者でもしんどいレベルさ」
「そっか……。じゃあこいつもそれにやられたんだな」
「何?」
俺はさっき見つけたコボルトとオーガの死体を指差した。
すると、男の人は黙ったまま動かなくなった。
「えっと、焦げた痕からして、こいつらもそのオーガプリーストにやられたのかなって思ったんだけど……。違った?」
「……違わない。違わないから、ヤバいんだ」
「ヤバい?」
「ああ。この死体は明らかにこの短時間で焼かれたもの。でも、俺たちはあっちにいるオーガプリーストともう2時間は鬼ごっこをしていて……勿論ここにはその間ここにはきていない」
「ということは……」
「いる。間違いなくもう1匹――」
――ボウッボウッボウッ
「上かっ! く、そおおおおおおおおっ!」
木の上から突如として現れた火球。
それから守るためか、男の人は大声を出しながら俺と、落ち着きを取り戻そうとするもう1人の背中を押した。
「く、うぅぅ……」
「い、てて……。俺は当然だけど……2人も無事っぽいな。――ただ……。あのやろう、こっちが弱ってると思って……」
――く、くくくっ
俺たちの目の前でどや顔を見せ、しかも笑いを溢すオーガプリースト。
きっと舐めプ気味に止めを刺しにきたんだろうな……。
「……でも残念。俺は火球だろうがなんだろうが殺せないぜ」
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