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11話 爽快グロテスク

「――あ、えと、おはようございます」

「……。ふん、ダンジョンか……。死ぬなら、ちょっとでも入口近くの奴らを蹴散らしとけよ」

「はーい」


 結局、物価が高すぎて飯を買うのが勿体ないって思っちゃって……あれ以上胃に入れないまま朝になった。

 1500イルなんてマジ秒で消えるわ、この街。

 あー腹減ってるのと、扉の前を歩いてた鬼頭とかち合ったせいでイライラが……。


「もうダンジョンで発散するしかな――」



『先にダンジョンへ行く。1500イルじゃ、ろくな飯も食べれないだろうからこれを食っていけ。別に感想を電話で教えてほしいとは思っていないからな! 明美』



 ドアノブに引っ掛けられた小さめのバケットとメッセージカード。

 中は色とりどりで美味そうなサンドイッチがぎっちり。


 ……あ、ありがてぇ。


 テンプレツンデレ炸裂でこっちまで恥ずかしいけど、そんなの気にならないくらいうれしい。

 郷田さん、料理も出来て、甲斐性もあって……。

 最初は喋り方も相まって不器用で苦手な印象があったけど……ほんといい女だよな。

 顔も綺麗だし、意外に下着可愛いし、脚太いのもそそる――


「――ぶっ!! な、なななななななんだこれ!? か、かかっかっか辛っ!!!」

「おい騒々しいぞ! 罰金とられたいのか!!」

「いや、これは……。いや、これ食わせればわかるか」

「ん? おま、何を――。ぶはあああああああああああああああああ!!!」

「あはははははははははははははっ! うるさいのはこれでおあいこっすね! そんじゃ行ってきまーす!」

「ま、まひぇ! あぁぁぁああ辛ぁぁあぁあいっ!!」


 訂正と判明。

 郷田さんは料理下手でした。

 でも鬼頭に一泡吹かせてやれたからオッケー!


「んーっ! 清々しい朝だなあ! こりゃダンジョン日和だぜ! 準備運動兼ねて走ってこっ!」


 出店から放たれる食べ物の匂い。人気の少ない街の景色。住まいの窓を開ける音。

 そんなちょっとしたものたちが五感を刺激しながら、俺はダンジョンの入り口に到着。

 眠そうな顔した受付の女性に500イル手渡す時さえも、気持ちが軽いのは自分でも意外なほど。


「――今日の標的は……魔法系のモンスター。稼ぐぞおっ!!」


 ダンジョン侵入後も勝手に気合が入る。


 ついつい出てしまった声のせいで、買取担当の女性にくすくす笑っているのが気にはなるけど、その程度で俺のやる気は止まらんぜ!

 魔法系のモンスター、確か昨日の場所から数キロ移動した辺りにオーガプリーストってのがいるらしくて、郷田さん曰く、今の俺の強さならそれを狩るのが最高効率なんだとか。

 

 でもでもでもぉ、今の気分のままそこまで何もせず進むのは勿体ないから……。


「――いった! でもこうすればいやでもモンスターが近づいてくるんじゃないの?」


 昨日もらったナイフで無理やり自分の眼球を抉る。指を切る。

 辺りに血と肉っていう餌を撒き散らせば、嫌でもモンスターが――


「ぐぐああぁ」

「ぎ、ぎゅ、が」

「――がああああああああああああああああああ!!!」

「出た出た出た! 食欲に忠実で馬鹿なモンスターたちがさあっ!」


 オーガ、ヒートヴォルフ、コボルト……。

 その数は全部で30くらい。

 どいつもこいつも馬鹿の一つ覚えで突っ込んでくるから、余計に上がっちまう。


 ――ばぎ、ぐちゅ、べちゃ、ぐちゅぎゃちぃ……。


「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……。ははははははははっ!! どんどんこいよ!!」


 コボルトは普通に顔面殴打。ヒートヴォルフは毛の部分があっちいから腹を蹴り上げて内臓ぐっちゃぐっちゃ。オーガは頭蓋骨を殴り割っても、生きてたりするから基本無視してわざと身体を食わす。

 モンスターたちの死体と、自分のもんも含めた血と肉が辺りに飛び散って、なかなかグロテスクな光景になる、けど……。


「おら、どんどん来いよ! こっちは『不死身』だからいくらでも相手してやるぞ!」


 気持ちはどんどんどんどん高揚していく。

 食われた時の痛みは慣れないけど、今は楽しみたいって気持ちの方がでかい。


「――おらおらおらおらおらあっ!!」

「く、ぅぅん……」


 少し遊びすぎたかな? なんかモンスターが逃げ始めたんだけど。


「ちっ。しらけるなぁ。でも別に俺、鬼ごっこは嫌いじゃ――」

『剥ぎ取りっ! 剥ぎ取りをしろ馬鹿っ! それと魔素! 魔素を取り込んどけ!』


 息多めに発せられた声が微かだけど聞こえた。

 一体どこから見てるんだ? 見てるんならちゃんと声掛けてくれればいいのに、郷田さん。


「んー。……。とりあえず、素材剥ぎとって……くそまず食事タイムにするか。あー、んっ! うえ、やっぱまず。郷田さんのサンドイッチが恋しくなってきたかも」

『恋しい!? あ、え、やば。あんまり1人に固執して業務にあたってるとバレたら……。そもそもダンジョンに入る前から私が清四郎の様子を見ていたとバレたら……』


 ……バレバレっすよ郷田さん。


 これ、次ちゃんと会った時ちょっと気まずいかも。

 ……ちょっと冷静になったわ。一通り処理したら寄り道せず奥いこ。

お読みいただきありがとうございます。

モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。

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