9話 完済しても……
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「――最低限の業務は完了っと。それじゃあ郷田、後は任せた。何かあったら上の受付から呼んでくれ」
「了解だ。ただ、高野の力だとすぐコンビを組まされて外に行くことになりそうだけど」
「ふ、悪いな。俺優秀だから、さ。じゃ、頼んだぞ」
地上に戻ると高野さんは地上へ向かうエレベーターの元へ。
普通だとダンジョンで発病するまでが業務、きっとプラスで説明とか案内とかしてくれようとしてくれるのは2人の優しさなんだろうな。
「……。ふ、2人きり、だな」
「そっすねえ。……。ちょっと疲れたから、休みた――」
「や、休みたっ!? それはまだ駄目だ!!」
「な、なんで? よくわからないけど、先に寝泊まりするところ確認はしたいんだけど」
「あっ……。もう、誤解するようなこと言うな……。言わないでよ」
「な、なんか、ごめん」
「……。ついてこい。ついてきなさい」
怒らせちゃった……なんでかわからんけど。
黙って歩き始めちゃったし、空気おっも……。
ああ。高野さん、戻ってきてくんないか――
「あ、そこのお2人さん。ダンジョンの帰りかい? よかったらどうこれ? 半額にするよ!」
「……新しい出店か。じゃあ豚玉そば入りを……2つ」
「はいよ! じゃあ2つで100イルになるよ」
「100イル……。じゃあこれで」
「はい! じゃあおつりが900イルね。毎度あり! 今詰めるからちょっと待ててよ」
お好み焼き屋か。屋台飯ってたっけえからから買ったことなかったけど、こんな短時間でそこそこ稼げるなら……まぁ買えるっちゃ買えるか。
でも今は手持ち1500イルしかないから、ちょいしんどいな。
「えっと、郷田さんこれ」
「ん? ああ、これは私が驕るからいいぞ。価格も大したことないから、気にするな」
「いやいや100イルってことは、1000円。1人あたり500円って結構するけど……本当にいいの?」
「もちろんだ。私のランクは『10』。自慢じゃないがダンジョン街だと、そこそこ金はある方で、施設の利用条件もほとんどクリアしているんだぞ」
「ランク? 施設の利用条件?」
「――はい。お待ちどっ! 目玉焼きもサービスしといたからね」
「ああ。ありがとう」
俺が首を傾げていると、店主がパック一杯に詰められた美味そうなお好み焼きを手渡してくれた。
いい匂い。さっき食ってた人間とか、オーガとかと比べると信じられないくらいに美味そう。
でも郷田さんの顔がちょっと悲しそうなのはなんでだ?
「――うまっそう! でも100イルって、やっぱり屋台の食べ物はちょっと高――」
「いいや。十分安いさ。こんな値段でここで商売なんて……。しかもサービスを。折角ダンジョン生活から解放されたはずなのにな……。あんなんじゃ3年の猶予中に建業の際の借金は返せない。ダンジョン生活に逆戻りだ。……。ほ、ほら、熱いうちに食べよう。ふふ、ベンチで2人でなんて……。これがデートか?」
……。俺は今日から借金返済生活スタートしたわけだけど……それが終わったら? 地上に戻ることができても、どうせ素寒貧で戻ったところで働ける場所もない。
それだったらここで働き口を見つけた方が……。
多分今の屋台の人も郷田さんたちも、そうやって思ったからここで職に就いた。
結局開業しようが何をしようが、この金融会社自体からは解放されない。
最悪郷田さんの言ったようにまたダンジョン生活に戻どることも……。
俺ももしかしたらここで一生……。はぁ、自由になりたくてあの家出たんだけどな。
「おお! これ美味いぞ! 清四郎も食べてみろ! ……。ほ、ほら、あーん」
「……。あ、あーん……。ん! 美味い! 美味いけど……ねえ、郷田さん。今の生活って幸せ?」
「……幸せだぞ。前の生活に比べればな。こんな美味いものが食えて、住むところも保証されて。ま、変な身体にはなったけどな。清四郎ならすぐ幸せだって思えるようになるさ」
「そんなもんかなぁ?」
「そんなもんだ。そうだ清四郎は廃墟に住んでたよな? だったら最初に住むところでさえ最高に感じられるはずだぞ。ん、ぐ、あむ……よしっ! 早く清四郎の住むところに行こう!」
「え、は、早っ! 俺まだ食べ切ってな――」
「そんなのは空調の効いた部屋のベッドの上でゆったり食えばいい! テレビでも見ながらさ」
「え? べ、ベッドが!? 部屋にベッドがあるの? しかもテレビと冷暖房付き? それ最高すぎん?」
……なら自由じゃなくていいかも。
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