0話 プロローグ
次話から視点変わります。
「はぁ、はぁ、はぁ……。なんで、なんでこんなところに、オーガプリーストが……。魔法系のモンスターなんて私に倒せるわけないじゃない」
「うがあああっ!!」
「きゃっ!」
オーガプリーストが放った火球が私の頬を掠った。
それだけならまだしも、足元の蔦が絡まって……。まずい、このままじゃ私、殺される。
……借金したからってなんでこんな場所に連れて来られなきゃいけないの?
モンスターって何? 『魔素』を取り込み過ぎて死ぬ病気? 特別な能力?
……こんなゲームみたいな世界もうこりごり!
せめて私がチート主人公みたいな能力を持っていたら……。
なんでなんでなんでなんでなんでなんで!!
「『痛覚緩和』なんて外れ能力なのよおおぉおぉぉぉおおおおおおっ!!」
「お、いたいたモンスター。って大丈夫か?」
「探索者? 逃げて! 私に構ってたらあなたまで――」
――ボウッ!
あ、ああ。私のせいで火球が知らない人に。
頭が燃えて……。これじゃあもう助からない。人が死ぬところなんて、初めてで……しかもそれが自分のせいだなんて……。
「ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!私が弱いせいで、借金なんて作ったせいで――」
「あー。別に謝らなくてもいいぞ。攻撃食らったのはお前のせいじゃないし、そもそも俺、『不死身』だから」
「え? 生き、てる?」
「正確には生き返った、だな。おっ! あいつも驚いてんのか止まってくれてんじゃん! ラッキー!」
ラッキー?
こんな地獄みたいな場所、ダンジョンで? どれだけポジティブなのこの人。
「う、がが……」
「殴り合いは時間が掛かるから……。いってぇけど、腹一杯食いやがれ! 俺の毒の肉体はおかわりし放題だぞっ!!」
――ぎ、ぎこぎこ、ぶ、ち……。
肉と骨の切れる音が微かだけど聞こえた。
それと同時に男の人の手から血が……。まさかあの人自分の指を切断しているの?
「う、があっぁあああ!! ん、がぁ……」
「おうおう、馬乗りされてもやっぱ食い意地だけはあるのな。いいぞ、もっと食え! 食って、死んでくれ!!」
せ、切断した指をオーガプリーストに食べさせてる?
確かに私たちの身体、『魔素』を取り込んだ身体はモンスターでも摂取できる量に限界があるって聞いたけど……。
こんな戦い方……狂ってる。
「見てるだけでこっちまで痛い気に……。あ、そうだ! 『痛覚緩和』の対象をあの人に!」
心の中で『痛覚緩和』と唱える。
すると男の人は今までよりも早く、自分の身体を切り裂き始めた。
なんか、余計に痛そうなんですけど――
――プシッ!
「う、が……」
「これでお前はゲームオーバー。さぁて目を切り抜いて、売却――」
「あ、あの、ありがとうございました」
「だからそういうのいいって。別に元々お前を助けようとしたわけじゃないから」
オーガプリーストが血を噴き出して死に絶えたから、私は思い切って男の人に近寄ってお礼を告げた。
こんなに強いのに、謙虚。ああ、きっと世間はこういう人のことを『主人公』っていうんだろうな。
私なんかただのモブ。負けヒロインにもなれないパッとしない女――
「それに、お前の力……。うん。人柄もまともそうだし……なぁ、俺と一緒にモンスター殺してさぁ、借金返済しねえ?」
「え?」
私、この人の、チート主人公の物語に加わわってもいいの?
こんな、私が?
「その、えっと……私でよければ」
「おう、よろしくな! 俺は三鷹清四郎。『不死身』で……借金1憶返済中っ!」
「い、1億!? やっぱり主人公って桁が違うわね。なんか借金まで中途半端な額の私って……どこまでもしょうもな――」
「いやあ、あのすげえ力と俺の『不死身』があればすぐに借金返済できるなっ!」
「す、凄いって……私が?」
「ん? お前以外に誰がいるんだよ」
おかしい。鼓動が早い。顔が熱い。
欲が、欲が出ちゃう。私、この物語のメインヒロインに……立候補したいかも。
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