ここからがはじまり
「滝…やっとお前と戦えるな」
「もし、お前を殺してしまっても、文句言うなよ、お前は暗殺者なんだから」
道場に着いたあと、俺たちはそれぞれ武器を構えた
「あと…純の仕返しに」
「それはお前がやったんだろ!?」
純が倒れたのは、滝の力が暴走してしまったからだ
「…ふん、いくぞ!!」
<挿絵>
滝は細長い棍棒をひたすら振り回した
1歩動きが遅ければ打撃を食らう
猛烈なスピードで俺を襲ってくる
俺は攻撃したいのだが、全然隙がない
「くそっ…全然攻撃ができない!」
「俺と戦うのは初めてだったよな陽仁 顔は見ているが」
滝はずっとこちらを見ている
一瞬の隙も逃さない
ひたすら棍棒を前へ突き出す
「くっ…最早これまでか…っ」
とうとう壁に追いやられてしまった
棍棒が壁につく
ドン!!
「おい…まだ能力出してねえぞ」
棍棒を握りしめながら、ニヤリと笑う滝
「…っ俺は…どっちみち殺される…滝を殺しても、殺さなくても…」
俺はその場に座り込んでしまった
「陽仁…?」
「お前に…お前に殺されるなら、本望だ 貴明さんの力を舐めていたよ」
「陽仁…」
俺はナイフを滝に突き刺した
「しめた!!」
「なんだと!?」
「滝!!!」
突然現れたのは、滝の親友、智嬉だった
智嬉は間一髪、俺のナイフの刃先を手で握り食い止めた
智嬉の手が、血だらけになっていく
「智嬉…智嬉!!手が…!!」
滝は動揺している
「陽仁…もうやめろ…言っただろ…滝を殺すのは、俺を倒してからにしろって…」
そういうと、智嬉は力尽きてゆっくり座った
「智嬉…智嬉…っくそっ…」
「いってえ…」
「陽仁、もう許さない!!」
キッと俺を睨みつけ、俺の胸ぐらを掴んだ
「滝!!そこまでだ!!」
「司令官…?」
俺は一瞬、滝に殴られるかと思いひるんだが、声がした方向を見ると、襖の近くに司令官が立っていた
「陽仁…君の勇気、しかと見た お前を能力者のリーダーにする」
「司令官!?」
「実は、先程君の上司が司令官室にやってきてね… 私はそいつを懲戒処分とした」
俺は頭が回らなかった
「俺は…一体どうなるんです…」
「その上司も、私を殺す目的だったみたいだな」
「司令官、俺はなんでもします!!」
傍で聞いている滝は必死で智嬉の手当をしていた
「……能力者のリーダーになれ 君は、強い子だ」
「司令官…」
「俺を殺しかけて能力者のリーダー…?司令官、どうして!?」
司令官は滝の目の前に行った
「滝 お前もそろそろ能力の限界が来ているんだ 智嬉 お前もな」
「俺も…!?」
「純も滝を庇って負傷した」
司令官は俺を抱きしめた
「お前の力が強いんだ、こいつらを負傷させる程の力だ」
「司令官…」
「陽仁 能力者のリーダーになりたいのか?」
滝は怪訝そうな顔で俺を見る
「……1度、考えさせてください」
「殺し屋に戻ったところで、無駄だぞ」
「なんですって!?」
「情報支部にいるみづきと智嬉が全員倒してきた」
俺は力尽きて床に手を着いた
「そんな…もう、俺の居場所はない…」
「私を、倒すか?陽仁」
司令官は俺の目の前に手を翳す
「司令官には勝てないの、分かっていますから 司令官の力が本気を出せば、この街も吹き飛ぶ」
「っははは!!決まりだな、 君は能力者のリーダーになりなさい」
俺はまだ知らなかった、ここからがはじまり、なんだと
「…はい」