陽仁、脱走
「佐々本陽仁か!」
滝さんの弟さんは俺を見るなり大声で俺を呼ぶ
「あ…はい」
「てめぇ…俺の兄貴を…殺そうとしたな!!許さねえ!!」
「圭介!!やめるんだ!!俺はもう陽仁を恨んじゃいない!!仲間なんだ!!」
滝さんは俺に殴りかかろうとする弟さんを力づくで止めた
俺は圭介さんになら殴られてもいいと思い、ただ目を黙って伏せた
「圭介さん…いいですよ…俺を気が済むまで殴って…」
「陽仁…」
「いや、兄貴だけじゃない、他の仲間にも怪我をさせて、許さねえ!!」
圭介さんの声に気づいたのか、司令官室から司令官が飛び出してきた
「何事だ!!お前たち!!」
「司令官!!」
「これは、蒼山圭介くん…」
司令官は圭介さんが来るのを知っていたようだ
「司令官 見苦しいとこを見せてしまいました…すいません」
圭介さんは深々とお辞儀をした
圭介さんと俺は司令官室へ向かった
「彼は蒼山圭介 蒼山滝の弟だ 彼も能力者なんだよ」
「兄貴と同じ技が使えるんだ 兄弟だから」
「……っ」
俺はただ、2人の会話を聞いているしかできない
「……陽仁?どうした?さっきから黙って」
「俺は…滝さんを殺しかけたのに、圭介さんと一緒に戦うなんて、できない……!!」
「陽仁」
隣にいた圭介さんも俺の様子が違くて動揺している
「陽仁?大丈夫か?」
「俺は圭介さんと一緒に戦う資格なんて、ない」
俺は司令官室を飛び出し、ただひたすらに走り出した
「圭介、圭介!!」
「……司令官…」
「君が追いかけたら、陽仁はますますどうしていいか分からなくなるだろう 君はここで待機しているんだ」
「…分かりました」
外は雨だった
ただ、辛い記憶を忘れたくて、ひたすらに走っていた
滝さんを殺すだけが、智嬉さんや、純さんまでも殴ってしまったあの日……
俺を恨む 俺の家系を恨む
ただ、ひたすらに走っても記憶は止まらない
「はあっはあっ……くそっ!!」
能力者の情報がどれだけ凄いのかは分からないが、きっとすぐに見つかってしまうだろう
久しぶりに自分の住んでいた家へ来てしまった
「……こんなとこへ来たって、仕方ないのに…」
「はあ……はあ……陽仁…さすが殺し屋やってただけあって足早いな…」
「えっ!!?」
俺はびっくりして後ろを振り返ると、そこにはゼェゼェ肩で息をしている、しぐれ、純がいた
「しぐれ…純…どうして…」
「心配だから、後を追っかけたんだ この雨だ、お前ん家でちょっと休もうぜ」
純は長いハチマキをかきあげ、ハァハァ言いながらそう話した
「2人ともびしょ濡れだ、早く中入って!!」
俺は小さいアパートの2階に住んでいた
鍵はいつでも帰れるように常に持っている
「おじゃまします」
俺たち3人はみんなびしょ濡れだった
無我夢中で走ったから濡れることなんて気にしなかった
「ただ…記憶を忘れたかっただけなんだ 俺は」
純は俺の洗濯を手伝ってくれていた
しぐれは濡れたTシャツを俺に渡す
「それだけか」
普段低いしぐれの声が、一段と低い声になった
「しぐれ?」
「圭介さんと…一緒に戦えるはず、ない 滝さんを殺しかけた 俺にはそんな資格なんてない 仮にも俺は、蒼山家を恨んでた!!」
純は苦い顔をして俺を見る
「なんで…なんで圭介さんが…俺のチームに…っ!!」
「お前の敵は、圭介か?」
純は優しい声で俺に聞く
「……違う」
「カルテー二だろ、 俺たちの目的は」
「しぐれ…」
しぐれは自分の手のひらをじっと見る
「俺は蒼山家を恨んだこともない ただ、カルテー二が憎くてずっと戦えない自分が悔しかった ただ、親友がこんなに悩んでる姿を見たくなくて」
俺は一筋の涙が溢れた
「しぐれ…」
「陽仁、お前の力が必要なんだ、滝があんな状態で、カルテー二と戦えるか!!」
「純…」
洗濯も終わり、気づいたら空も晴れていた
「俺は…強くなりたい…みんなを守りたいんだ」
「陽仁…」
すると突然、俺の身体がオーラで光出した
「この力は…!?」




