おっぱいを喰いたかった
※不快な表現あり
※食人表現あり
20XX年4月1日。日本にも「サムの息子法」が制定された。この法律は、犯罪加害者が自らの犯罪ストーリーを書籍出版・映画化するなどして、利益を得ることを防ぐためのもの。
元はアメリカの法律であり、日本にも同様の法を望む声は以前から上がっていた。
そして――昨年。ある死刑囚の手記がベストセラーとなり社会問題に発展。メディアでも大きく取り上げられて波紋を呼んだ。
このような背景も合わさり、ついに日本にも「サムの息子法」が導入されたのだ。
……これから私は、社会に様々な影響を与え、サムの息子法を制定する要因となった「死刑囚の手記」の原文を一部抜粋して記す。
タイトルに釣られた方、「おっぱい」が好きな方、その他様々な理由で開かれた方、最後までお付き合い願いたい。
……あまりにも不快な表現が続く内容であるため、意図的に載せていない部分がありますことを予めご理解下さい。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
俺はおっぱいが好きだ。……いや、「好き」なんてもんじゃないな。大大大大大大大大大大大大好きだし、おっぱいと結婚したいほどだぜ!!
おっぱいはやはり、大きいおっぱいに限る。大きければ大きいほどいい。おっぱいの価値は、大きさが全て。巨乳と呼ばれるE カップが最低条件だ。
大きいおっぱいは最高だ。特に上から見る谷間おっぱいが至高だ。1時間でも2時間でも飽きずに眺めていられる自信があるぜ!!
ちなみに、俺が実際に出会った中での1番の爆乳はOカップだ。勿論日本人だぜ。かなりのポッチャリだったけど、俺にとっては些細なことだぜ。おっぱいは――大きさが全てだからな。
知ってるか? 約Jカップ以上のおっぱいになってくると、持ち主の本人は足元が見えないんだぜ? おっぱいが大きすぎてな! 足元に視線を向けても、自分の爆乳が遮って見えないんだとよ。爆乳あるあるらしいぜ? ためになったろ?
♢ ♢ ♢
俺が「おっぱい」に初めて興味を持ったのがいつだったかは……覚えていない。
ただ中学生の頃には、女子のおっぱいに視線がよく向いていたのを覚えている。
特によく覚えているのは――中学2年生の頃。体育祭で女子の徒競走を眺めていたら、おっぱいをブルンブルン揺らして走っている女子を何人か見かけた。俺はその時思った。おっぱいってあんなに揺れるんだ……と。激しく揺れているおっぱいを見て、俺は強く思った。触りてぇ――と。
この体育祭でブルンブルン揺れていたおっぱいが、今思えば俺の始まりだった……。
♢ ♢ ♢
高校生の頃に付き合った彼女で童貞を捨てた。けれど、俺にとってセックスは気持ちよくなかった。セックスよりも、おっぱいプレイの方が断然気持ち良かったのだ。
この事実が、俺をおっぱい好きへと加速させた。おっぱいに大きさを求めるようになり、巨乳派に目覚めたのだ……。
♢ ♢ ♢
20歳になった頃に、巨乳では満足出来なくなった。もっと大きいおっぱいが欲しかった。もっと大きいおっぱいで、おっぱいプレイをして気持ちよくなりたかった。
だから、巨乳を越える爆乳の持ち主に簡単に出会えるところ――つまり風俗に遊びにいくようになった。
俺にとって風俗は最高だったぜ。
何故ならば――爆乳専門店があるんだからな!
もう巨乳では物足りない俺にとって、まさに天国のような店だったぜ……。
おっぱい最高!
爆乳最高!
♢ ♢ ♢
なんとか大学も卒業して社会人となり、風俗遊びを趣味にして約20年。俺は日本全国の爆乳専門店を巡り、全ての在籍嬢とおっぱいプレイを楽しんだ。
もはや俺が知らない爆乳など限られた数しかないだろう。俺はおっぱいマスター、爆乳マスターとなったのだ!!
……そんな俺の天狗の鼻は、餓えを凌ぐために人が人を食う場面がある映画によって――へし折られた。
だって俺は、おっぱいを喰ったことが――なかったのだから。
全てのおっぱいプレイを試し、楽しんできた。全国の爆乳も、ほぼ堪能した。そんなおっぱい(爆乳)マスターの俺だが、おっぱいを喰ったことは――なかった。
おっぱいを喰わずして、おっぱいマスターを名乗れるだろうか?
答えは否だ。
ならばどうする?
決まっている。
おっぱいを喰うんだ。
いや……違う。
俺は――おっぱいを喰ってみたい。
おっぱいマスターという称号のためもあるが、純粋に俺は――おっぱいを喰いたかった。
人間を食うとしたら、やはり柔らかそうな部分を食べてみたいと思うはずだ。
そして人間の最も柔らかい部分といえば――おっぱいだろう?
♢ ♢ ♢
俺が初めて食ったおっぱいはFカップ。比較のために二の腕や尻も食ってみたが、やはり「おっぱい」が1番柔らかくて食感も良かった。ただ……生で食うべきではなかった。鉄臭い血の味しかしなくて、正直美味しくはなかった。何らかの調理が必要だと思ったぜ……。
♢ ♢ ♢
俺は「おっぱい」を喰いたかった。
そのキッカケは映画だった。
けれど、俺はそのキッカケとなった映画を見なかったとしても、いずれ「おっぱい」を喰ってみたいと思ったはずだ。
だって「おっぱい」は――旨そうだろう?
丸い。白い。ムチムチ。柔らかそう。
――触りたいだろう?
――揉んでみたいだろう?
それと同じだ。
「おっぱいを触りたい」に理由がないように、「おっぱいを喰いたい」にも理由なんぞない。
理由があるとしたら――男の本能だろうぜ。
俺が男として生まれた以上、おっぱいに欲情するのは当たり前だし、その延長として「喰ってみたい」という欲望が目覚めただけのこと……。
俺にとっては、おっぱいを触りたいも喰いたいも、同じ「ただの男の欲望」でしかないぜ。
きっと中学生の頃から俺は――おっぱいを喰いたかった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
……以上が、死刑囚「田沼玄一」作『おっぱいを喰いたかった』の一部抜粋である。
いかがであっただろうか?
あまりにも身勝手で稚拙な動機であり、作者の「おっぱい」への執着が伺える内容だと、私は思う。けれども、私も1人の男として共感出来る部分はあった……。
そう、「おっぱい」である。
恥ずかしながら、私もおっぱいが大好きだ。巨乳や爆乳も好きだが、1番好きなのは「ちっぱい(貧乳)」である。「ちっぱい」こそ至高。己のバストサイズが小さいことを気にしている女性が1番可愛いのだ!!
……ごほん。少し熱く語ってしまったが、やはり大多数の男は「おっぱい」が好きなのである。
だからこそ、『おっぱいを喰いたかった』という死刑囚(犯罪者)の手記がベストセラーになったのだろうと推察する。
勿論、ベストセラーになった理由は他にも存在する……。
実際に起きた連続女性殺害事件の犯人が作者である事。ノンフィクション作品である事。タイトル『おっぱいを喰いたかった』があまりにも注目を集めやすいタイトルであった事。有名芸能人が、この死刑囚の手記を読んだ……とツイッターで呟いた事。そのツイートが大炎上し、結果的に知名度が上がってしまった事。さらにはメディアまでもが、炎上したツイートと死刑囚の手記を取り上げてしまった事……。
これら様々な要素が組み合わせって、『おっぱいを喰いたかった』という死刑囚の手記は、税込1500円という値段にもかかわらず10万部以上売れたのだ。
印税が5%だと仮定して計算しても、750万円が作者の収入になる……。
強調するが、この作者は犯罪者である。計7人の女性を殺害し、その女性達の「おっぱい(人体)」を食し、死刑判決を下された重罪人である。そんな人間が、750万円という大金を手にしてよいのだろうか?
唯一救いなのは、この作者が「死刑囚」であることだ。750万円という大金を得ても、死刑囚は拘置所から出られないので、お金の使い道は、ほとんどないに等しい。
だが、仮に死刑囚ではなかったらどうなっていた?
人を殺めたにもかかわらず、その殺めた経緯を本として出版し、印税で遊びたい放題……。
そんな事は許されるのだろうか?
被害者の遺族はどう思う?
私はかねてより「日本」という国が、被害者よりも加害者に有利な法律が多いことに疑問を感じている……。
今でもそう感じているが、日本政府が「サムの息子法」を制定したことは評価する。
願わくば、この法律が導入されたのをキッカケとして、少しでも加害者有利な法律が見直されることを期待したいものだ。
♢ ♢ ♢
私は「おっぱい」が好きだ。
巨乳や爆乳が好きだった――妻に出逢うまでは。
妻はいわゆる「ちっぱい(貧乳)」だ。
その「ちっぱい」が妻のコンプレックスであるが、ちっぱいを気にしている妻がとにかく可愛いくて、巨乳好きから妻の「ちっぱい」好きに――クラスチェンジしてしまった。
当たり前のことかもしれないが、やはり好きになった人の「おっぱい」が1番なのである。
そのことに気づかせてくれた妻には最大限の感謝をしているし、私の兄のせいで迷惑や負担も掛けているので、少しずつでも妻に恩返しをしていきたいと思っている。
♢ ♢ ♢
神が女性に与えもうた神秘「おっぱい」
おっぱいには、男の夢が詰まっている。
おっぱいには、男のロマンが詰まっている。
おっぱいには、母性が詰まっている。
おっぱいには、愛が詰まっている。
おっぱいは偉大で至高であり、癒しであり、母性の象徴であり、男が劣情を抱く対象でもある。
結論――おっぱいは素晴らしい!!!!
巨乳派・貧乳派という違いはあるかもしれないが、大多数の男は「おっぱい」が好きなのである。
男性に限らず女性でも、己以外の「おっぱい」を揉むのが好き――という方も存在するだろう。
実際に私の知人の女性には、そういう方がいらっしゃったのだから……。
おっぱいは素晴らしい。
その気持ちはよく分かる。
だが、決して同意がない「おっぱい」に触れてはならない。それは犯罪である。肝に命じよ。
そして、同意がある「おっぱい」に出会ったとしても、相手は人間である。1人の女性であるのだ。それを理解せよ。理解出来なければ、嫌われ捨てられるだけである。女性は男性の性の捌け口ではない。肝に命じよ。
おっぱいは素晴らしい。
けれど「おっぱい」で道を踏み外すな。
決して私の兄のように「おっぱいを喰いたい」なんて欲望を抱かないよう注意して頂きたい。
おっぱいは、触ったり揉んだりパフパフしたりおっぱいプレイしたり――で満足しておくべきだ。
恐らく、「喰いたい」なんて欲望を抱く異常者は他にいないと思うのだが……。
くれぐれも、「おっぱい」に魅了され過ぎないよう留意して頂きたい。兄のように「おっぱい」で人の道を踏み外す方が生まれないよう――私は筆を執らせて頂いたのだ。
おっぱいは素晴らしい。
だが同時に――ひどく恐ろしい。
1人の男に、「おっぱいを喰いたかった」と思わせてしまうほどの「魅力」があるのだから……。
著者 田沼玄二