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第23話:鍾乳洞

 鍾乳洞の近くまで来た。


「おお~・・・」


「あれね」


 人工的に石のタイルが敷き詰められてる街並みの中、少し外れたところにゴツゴツした体育館ぐらいのサイズの天然っぽい岩があった。思ってたより小さいけど地下に入ってくんかな。どっちにしても洞窟の1個や2個があってもおかしくない。


 船を降りて行ってみると看板があって、この辺り一帯が自然公園になってるらしい。鍾乳洞の近くだけは自然のまま残して街を作ったってことか。


「行ってみましょう」


 近くまで行くとまた看板があって、それに従って左に回り込むと洞窟の入口が見つかった。


「意外と普通だな」


 緑のコケのついた、黄土色と灰色を混ぜたような色の岩に穴が開いてるだけだった。でもなんか、天井からツララみたいな形で岩が垂れてるのは、鍾乳洞っぽい感じもする。あと人もそれなりにいて、近所のスーパーぐらいの往来はある。


 入口に立ってみると、内側から涼しい風が吹いてきた。おお、なんかそれっぽい雰囲気だ。でもここから見える分は中もまだ淡々とした洞窟で、神秘的な要素はあんまりない。


「進むわよ。寒くはない?」


「全然」


 むしろ気持ちいいぐらいだ。冷蔵庫に入った気分を味わえる。

 中ではぽつぽつと電球が吊り下げられてて、それなりに見えるようになってる。あとやっぱり下り坂で、地下に入ってくみたいだ。


 5分ぐらいで、広い空間に出た。


「うおぉぉぉ・・・」


 ザ・鍾乳洞って感じの場所だった。天井からだけじゃなくて、下からも針の山みたいな感じで細い岩が何十本も突き出してきてる。針ってほど先は尖ってないけど、どことなく身の危険を感じる怖さがある。


 特に通路とかは整備されてなくて、自由に歩きまわれる。触ってみると、確かに岩だった。


「エルダ、これ動かせたりしないよな?」


「できるわけないでしょう。水ではないのだから」


 だいたい、動かせたらこれを使って襲うとでも思ってるわけ? と言いたげな視線まで一緒に返って来た。


 その部屋を抜けて、また細くなった洞窟を更に奥へ進んでみる。基本は下りだから、何かの深淵にどんどん迫って行ってる気分だ。神秘的と言うよりは不気味で、こんな場所もあるんだなぁとつくづく思う。自分たち以外にも人がいるっていうのがちょっとした安心材料だ。


 また広い場所に出た。


「おおぉ~~っ」


 今までは茶色とか灰色の味気ない色合いだったけど、ここは淡い青の色が付いていた。この部屋の1/3ぐらいは池で、それの反射もあって今度こそ神秘的な空間が出来上がっていた。


「ライトアップか?」


「照明自体は普通のようね。けれど岩石に含まれる成分のおかげで、青系統だけが反射されているみたい」


「へぇ~~」


 じゃあ電気は普通ってことか。それでこんな色合いになるんだから、岩って凄いな。


「水場の方に行ってみましょう」


 水があればもちろん、俺たちは行く。水に触っちゃいけないとかも無いらしくて、水操術でぴちゃぴちゃ遊んだり、飲んだりしてる人もいる。あんまり美味くないらしい。


 エルダが手を水に入れた。水を調べてるんだと思う。


「・・・やっぱり、鍾乳洞の岩石に多く含まれるとされるツーゼリウムが多いわね。さっき水を飲んだ人が不味そうにしてたのは多分このせい。それから、サーテニウムも少し入ってるわ。これの酸化物結晶が青い宝石になることがあるから、この空間を青くしているのはこれね」


 エルダが淡々と調査結果を語る。水調べるだけでそんなことまで分かるんだな。


「あらお嬢さん、詳しいのね」


 近くにいた人が話しかけてきた。いかにも冒険映画に出てきそうなベージュの服と帽子を身に着けたおばさんだ。女の人でもこういう格好するんだな。この人もエルダと同じ学者タイプか?


「一応、調べて回っているから」


 エルダは、手を水から出して首だけで振り向き、しゃがんだまま応答した。


「すごいわねえ。まだお若いのに」


「はぁ」


 さすがのエルダも反応に困っている。それをどう捉えてるのかは知らないけど、その人は話を続けた。


「いい所でしょう? 天然の岩石が積み重なって、同じく天然の炭酸水に溶かされて洞窟になる。そしてところどころから顔を覗かせる酸化・水酸化金属種によって様々な模様が作り上げられるの。理屈はあるけれど、理屈の存在は神秘。私たち人間の力を超えたものを感じるわ」


 その人は、誰に向けて言っているのか、左手を胸に当て、右手を横に伸ばしながら歌うように語った。うん、この人も学者タイプだ。エルダとはちょっと傾向が違うけど。少なくとも洞窟マニアなのは間違いない。でも確かに、この景色が自然にできあがってるのは神秘だと言いたくなる気持ちも分かる。


 エルダも、ふふ、と軽く笑みをこぼして立ち上がる。


「こういうのがあるから、私も旅をやめられないのよね」


 ランデス湖群に、モンス・コリスにヨーラー。もちろん人工物もあるけど、自然の景色も見てきた。旅行の醍醐味だよな。こんなものが現実にあるんだって驚いた。


「旅に出る前も、よく岩石を採って金属や酸化物結晶を取り出していたものだけれど、綺麗なものだったわ。人の手で作れるものでも、その材料は天然物だからね」


 そっか、人工物でも材料の木とか石は自然にあるものだ。存在は神秘ってのはこういう意味もあるのか。エルダの反応にはその人も上々だった。


「分かる人がいてくれて嬉しいわあ。下の方はまた違う表情を見せてくれるから、行ってみてね。私もまだこの洞窟にいるから、もしタイミングが揃えばまたお会いしましょう」


「ええ」


 それでその人は手を振りながらどこかへ行った。“表情を見せてくれる”のは、洞窟が俺たちに、か。ホントに、左見るか右を見るか、しゃがむか立つかだけでも全然景色が違うからな。飽きない。



 洞窟は一本道ではなく、順路のない美術館のようにあっち行ったりこっち行ったりできた。迷いそうだったけど、というか俺1人だと絶対迷ってたけど、エルダがそんな体たらくを見せるはずもなく、同じ場所も二度は通らず少しずつ深部に向かっていった。


 灰色の岩肌の方が多いのかも知れないけど、光を反射するのは青や緑の結晶。照明は数が少ない上に薄暗いから岩はほとんど見えなくて、至る所できらめく結晶だけが目に飛び込んで来る。壁を触るのもためらってしまうほどだ。


 やがて、洞窟が先細ってきた。順路は一本に絞られ、上に戻る人と仕切りロープ越しにすれ違いながら階段とも坂とも言える道を下る。通り道さえも、ところどころに青や緑がきらめく岩があったりして、肌が冷たくなっていくのも忘れるほど見入っていた。はずなんだけど、急激に狭くなる場所に入った時にヒュオォッと凍えるような風がきた。


「うおぉぉっ・・・!」


 思わず身を縮こまらせる。


「さすがに5℃ともなると冷えるわね」


 やっべそういや5℃だった! 洞窟に見入ってて感覚が麻痺してた。なんでエルダは平気そうなんだよ。長袖っつっても薄いだろそれ。


 冷たい風を受けながら、緩やかなカーブと共に狭い通路を下りていく。


「開けた場所に出るわね」


 壁が広がる方向に反っているのが見えた。広い空間がある。多分この先が終点なんだろう。人間って何故か、こういった勘はよく働く。


 カーブの先が見えるのと同時に、狭い通路の出口も迎えた。


「うお・・・」

「・・・・・・まぁ」


 思わず目を見開いた。これまでの青や緑系の色とは打って変わって、真っ白だった。ペンキのような白じゃなくて、水晶みたいな透明感のある白い輝き。なんだこれ。なんだこれ。言葉が出ないとは、正にこのことだ。


 ひとくちに白とは言っても、透明感の強いもの、弱いもの、メタリックな感じのするものなど、様々だ。さっきの人の真似じゃないけど、色んな顔を覗かせてくる。


 言葉が出ないながらも、後ろから人は来るので足は動く。坂を下りきってこの空間に降り立つと、あらゆる方向を宝石のような白い輝きに囲まれていた。さすがに地面は全面白という訳じゃないけど、岩肌の中にも散りばめられていて、これはこれで幻想的だ。

 こんな場所が、この世に存在していいのか。存在したとして、辿り着いたら死ぬんじゃないかと思えるような場所だった。


「凄いわね・・・」


 生きているので、声は聞こえる。エルダが歩く姿も見える。我に返ることがままならないながらも、エルダを追った。


「ホントに凄いな・・・」


 少しずつ頭が働いてきた。けど、気を抜いたらまた脳が溶けるような気もして、妙な緊張感がある。綺麗な場所ではあるけど、落ち着けるかというとまた別問題だ。ここで寝たらマジで起きれる気がしない。


 壁まで着いて、エルダがゆっくりと手を当てる。俺も、触ってみようかな。恐れ多いけど。

 触ってみると、当然だけど普通にゴツゴツしていた。けど普通の岩みたいなザラザラ感はないかな。ガラスってほどツルツルでもないけど、ガラスに近い。


「これは・・・ツーツリア結晶・・・」


 エルダがぼそりと呟いた。やっぱり結晶って名前が付いてて、エルダも知ってるみたいだ。


「本当に詳しいのねえ、お嬢さん」


 この声は・・・やっぱりさっきの人だ。ここにいたのか。これを見たエルダの感想が聞きたかったのかも知れない。


「ごめんあそばせ。どうかしら、オズパーシー至高の宝庫は」


 その人はさも自分のもののように言った。ここのファンみたいだし、オズパーシーに住んでるんだろう。宝庫って表現も一蹴できるものじゃないな。壁と床と天井以外は何もないけど、それら自身が宝石みたいなんだから。


「驚いたわね。こんなに大量のツーツリア結晶があるなんて」


「でしょう」


 洞窟が意思を持たない代わりに、その人が胸を張る。


「ツーツリアってのが、この結晶のことなのか?」


 玄人同士の会話に素人が混ざって申し訳ないけど、置いてけぼりにされたくもない。


「そうよ。正確には酸化ツーツリウム、文字通り酸化したツーツリウムのことなのだけれど、ツーツリアと呼ぶことが多いわね。ツーツリアの結晶だから、ツーツリア結晶」


「へぇぇ~っ」


 要は、材料名の後ろに“結晶”って付けただけか。


「でも、これ全部同じなのか? 色んなパターンがあるけど」


 透明感もメタリック具合も十人十色じゃ済まない。百でも足りるのか?


「その辺りは、微量に含有している他の成分や結晶構造の乱れによって変わったりもするわ」


 ここでもまた含有成分か。何が混ざってるかで変わるなんて、不思議な世界だな。


「でも基本的にはツーツリアだと考えればいいわね。純度の高い方が価値も高いけれど」


 ま、そりゃそうだわな。俺とエルダで話してて蚊帳の外に出されかけた洞窟マニアさんが、ここで補足を入れた。


「見た目の美しさからも、貴族が装飾品として集めることもあるものよ。そしてここは、世界で唯一とも言える、まとまったツーツリア結晶が見られる場所なの」


 マニアな人がいると、こういった説明をしてくれるから助かる。エルダが2人いるような気分にもなるけど。


「そんなに珍しいのか?」


 俺程度の知識でこの人と話すのは申し訳ない気もして、エルダに聞いてみた。


「ツーツリア自体は珍しくないわ。私もオンラヴァ周辺の山で採ったことがあるぐらいよ。けれど、あまり大きな塊で見たことはないわね。洞窟の壁に埋もれているのを削り出す必要があるわ。珍しくないとは言っても、1メートル四方の中に指で作る輪っかほどのものがあるぐらいで、大量に採れるものではないわ」


 エルダは親指と人差し指を合わせてOKサインを作りながら言った。


「そうなのか・・・」


 それでも、適当に山で洞窟掘っても石ころサイズのものが見つかる程度には珍しくないってことか。


「しっかし、こんな綺麗なのでも金属が酸化したやつなんだな」


 普段見てる錆びとは大違いだ。


「宝石の類はだいたい金属の酸化物よ。ダイヤモンドだけは非金属の炭素だけれど」


 ダイヤの話は聞いたことあるな。鉛筆の芯もダイヤも同じ炭素だとか。てかこの世界でもダイヤモンドって名前なんだな。本当に金属だけが違うらしい。


「これの元になってるツーツリウムってのも、見た目は普通に金属なのか?」


 “普通に金属”とは、鉄とかアルミとかみたいなのをイメージして聞いた。この世界で言えば、船上バーベキューに使ってるスタビリウム板とか、建物内の配水管 (あれもスタビリウムらしい)のことだな。エルダならこっちの意図を汲み取ってくれるだろう。


「ツーツリアは酸化されやすくて、天然のツーツリウムは存在しないけれどね。大変だったけれど、精錬して取り出した金属ツーツリウムは、普段使ってるスタビリウム板と似たような見た目だったわよ。新品だったから光沢の差はあるけれど」


 じゃあ見た目は“普通に金属”ってことか。いつも使ってる板は火ぃ起こしてるせいで光沢なんてほとんど失ってるけど・・・。


 ここで、また、洞窟マニアさんが口を開く。けどその様子が、今までとは違った。


「ちょっと、あなた、今、なんて・・・」


 心の底から驚いてるようだった。目を見開いて、口も開けたまま固まって、中途半端に曲げた指をエルダに向けて。今エルダ何か変なこと言ったか?


「・・・ツーツリウムを精製、のことかしら」


 エルダはエルダで、“多分これかしら”といった様子で聞き返した。何となくの推察はできるけど自信は持ちきれない、ってところか。


「そ、そうよ。・・・ツーツリウムの精錬なんて、本当にできたの・・・?」


 エルダの推察は当たってたらしい。どうやら、さっき“大変だった”の一言で済ませたツーツリウムの取り出しが、よっぽど難しかったみたいだ。エルダのことだから難しいことでもサラッとやってのけるんだろうな。淡々と“ええ、できたわよ”と答える姿が目に見えて分かる。


 けど、そんな俺の予想は外れた。


「本当に、大変だったわ・・・」


 エルダは、視線を少し落としながらそう言った。声のトーンも低かった。エルダの口からこんな言葉が出るなんて、意外だった。でもエルダと初対面のマニアさんにとっては、この反応は当然だったみたいだ。


「でしょうね。でしょうね・・・! 未だかつて、純金属のツーツリウムが流通した記録は残ってないのよ。あなたが初めてではないの?」


「は・・・!?」


 声を上げて驚いてしまった。未だかつて、記録は残ってない? もちろん記録がないだけってこともある。けど、マニアさんの口ぶりからすると、相当難しいことなんじゃないかとも思える。


「文献を漁っても方法が出て来ないと思ったら、やっぱり・・・」


 エルダが苦虫を嚙み潰したような顔をした。そんなに大変だったのか、ツーツリウム。でも、錆びた鉄から錆びを落とすようなもんか?

 いや違うな。錆びなんてどうせ表面だけだ。全身が錆び鉄なのを普通の鉄に戻すってことか。そう考えると確かに大変そうだ。でも、学者ならやり方ぐらい知ってそうなもんだとは思う。それが出回ってなかったのをやったから、マニアさんは驚いてるんだろうけど。


「ごめんなさい、取り乱してしまって」


 マニアさんが自分の胸に手を当て、少しずつ落ち着きを取り戻していく。もうちょっと落ち着いて欲しいと思ってるのか、エルダは肩をすくめながらこう言った。


「実用上にどれほどの意味があるかは分からないけれどね。精錬の手間が尋常ではないし、そもそも綺麗なツーツリア結晶をわざわざ金属に戻す必要がないわ」


「それは、そうだけれど」


 純粋に、誰もできてなかったのをできたのは凄いよな。この宝石みたいなのを金属に戻すっていうのもまた、エルダらしいっちゃエルダらしい。


「なあ。さっき、ツーツリウムは酸化しやすいって言ってたけど、1回金属に戻せば大丈夫なのか?」


 金属の状態では天然に存在しないってなると、ほっとけばまたツーツリア結晶になったりして。


「表面だけは、すぐにやられてしまうわ」


 だよな。鉄だって、銅だってほっとくだけで錆びてしまう。


「けれど内側はやられない。その点については他の金属よりも強かったわ」


「そうなのか?」


 よく分かんねえなあ。俺と一緒に、というか俺以上に興味津々の様子でマニアさんもエルダの話を聞いていた。


「きっと、ツーツリア・・・酸化ツーツリウム自体が安定なことが効いているのだと思う。あまりに安定な材料で表面を覆われたから、内側が浸食されにくくなったのね。本当にごく薄皮だけよ。変色さえしないわ」


「マジか」


 鉄も10円玉もあんな黒くなるのに。と言っても、酸化したツーツリウムが元々、ここにあるような透明な色ってのもあるのかも知れない。


「本当に凄いのね、あなた」


 改めて感心した様子のマニアさん。本当に信じられない、と顔に書いてある。


「今日は良い話が聞けたわ。ありがとう。街の外にも洞窟はたくさんあって、どれも素敵な所だからぜひ行ってみてね」


 マニアさんが手を振りながら、俺たちから離れる方向に歩き出す。


「ええ、そうするわ。ここ1つで終わるにはもったいないもの」


 エルダも手を上げて応え、マニアさんが俺にも手を振ってきたからエルダと同じように応えたところで、マニアさんは後ろを向いた。


「私たちも、そろそろ行きましょうか」


「だな」


 帰り道もきらびやかな洞窟をたっぷり堪能して、地上に出た。


「どうするんだ?」


 晩飯にはまだちょっと早い。あと明日以降のプランも決まってない。どっちとも取れるように聞いてみたけど、エルダの反応はどうだろう。


「明後日まではここで過ごしましょう。中央山脈の移動は疲れたでしょう」


「ああ・・・」


 後者で捉えたらしい。そして2日間の休憩は地味に助かる。歩きまくったせいでまだ足の筋肉が張ってる。


「次は氷河に寄ることになるから」


「あァ!?」


 氷河!? 


「氷河って、あの氷河か!?」


「“あの”、がどのことかは分からないけれど、中央山脈は大陸のほぼ北端まで続いていて、標高の高い位置には氷河があるのよ。

 真夏の昼間でも気温は5℃程度で、表面付近は融解するけれど冬場の降雪の方が多いから、年々雪が積み重なることで圧縮されて氷のようになっているの」


「それは紛れもなく、“あの”氷河だよ」


「そう。知っているようで何よりだわ」


 何よりだわ、じゃねぇよ・・・。氷河だぞ、氷河。もちろん、行ったことなんてない。


「って、また山かよ」


「そうよ。海を経由して北側から回り込むし、川をのぼって近くまで行けるけれど、ここで体を休めておくに越したことはないわ」


「だな」


 心の準備も必要だ。山ってだけでちょっと身構えるのに、氷河とまで言われたら緊張してきたぞ。


「とりあえず明日から2日間は、観光と次の準備をしましょう」


 そうだ、体と心の準備だけじゃダメだ。このまま行ったら凍え死ぬ。明日が観光で明後日が準備、かね。と思いきや、夜は冷えるそうだから早速長袖を買うことになったとさ。

次回:観光と準備

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