対レブナント
「何を言い出すかと思えば、下らん」
レブナントは腰から剣を引き抜いた。
戦ったことのないレブナントの様子を見ているとレブナントはそのまま斬りかかってきた。
速いがそれだけだ。
剣は俺に当たると同時に弾かれる。
折れはしなかった、強度が凄いのか、それとも技か。
「ただの剣じゃ俺には通用しませんよ」
これは嘘ではない。事実俺と戦ったレナウン子爵の護衛剣士も腕はそれなりだったが剣が折れた。人外であるライベルの拳すら俺の魔力壁を突破出来なかった。
同じ魔力を使ってもレナの魔法ですら突破できなかった。
「…………」
レブナントは剣を正眼に構えた、余裕の表情だったのがスッと目を座らせる。
違和感。
手から剣へ白い幕が伝わっていくのが見えた。
なんとなく無属性の魔力壁に似ているそれは嫌な予感がする。
「ハァっ!」
一足飛びに俺の懐へと飛び込んでくる。
斜め下からの斬り付け、右手で受け止めようとして、背中の方から冷やりとした感覚が全身に行き渡る。
咄嗟に後方へステップで飛んだ。
かすった頬から血が流れる。
「避けたか……」
片手で触れ、確認する。
魔力の壁を通過した、突破されてしまった。
「何をしたんですか?」
「剣気、剣に身体の気を伝わせる技だが、そういえばこの国には無いようだな。一年前に斬ったイズールド公の騎士団長とやらも知らなかった」
こいつがやったのか、まあこの技を使えるなら騎士団長位なら倒せるだろうな。
恐らく剣で受け止めようとしてそのまま剣ごと斬られたのだろう。
「魔力の壁とはこざかしい真似をするが……剣気の前には大した障害にはならないな!」
レブナントは続けて俺に襲い掛かってくる。
袈裟斬りを躱し、横薙ぎを上体を下げて躱し、突きを寸前で引いて躱す。
防御不可の絶対攻撃も当たらなければ致命傷にはなりえない。
振り抜いた直後に腹を蹴り飛ばすと片手で抑えながら後方へ飛んだ。
「……ドブネズミのくせに逃げるのは速い」
「お腹、痛そうですね」
「その蹴り、鈍器でも仕込んでいるのか?」
「まさか、素の攻撃力ですよ」
「…………」
余裕の表情を見せるとレブナントは無言で俺を睨みつけてくる。
そして、小声で呟く。
『聖霊よ、我に護りの加護を……』
【ウォレス】
レブナントは再び飛び込んできた。
剣閃を躱してから俺はもう一度レブナントの腹を蹴る……が。
硬い……!?
先ほどより硬くなった身体、今度は怯むことなくレブナントは俺に追撃とばかりに斬りつけてくる。
やられる!
体勢を崩している俺は身体が空中で横になりながら地面の砂を掴みレブナントの顔に下から投げ付けた。
突然飛んできた砂にレブナントの視界が一瞬曇る。
一瞬鈍った剣筋、俺はレブナントを真横から思い切り蹴り、そのまま間合いから脱出した。
「こざかしい真似を……」
レブナントはそのまま俺を睨みつけて来るが俺は、息を吐きながらそれを見る。
額からは冷や汗がどっと流れ落ちる。
今のは危なかった、完全に斬られるタイミングだった。
だが何故急に硬く?
真顔で対峙しながら頭の中ではぐるぐると推論が駆け巡る。
そして考え付いたのは、彼はガレリアの……魔法を鍛える学校の教官であったという点だ。
レブナントが魔法を使っているのは見た事が無い、だが見た事が無いからといって使えないとは限らない。
ならば結論は一つだ。
「教官は魔法が使えたのですね、それも珍しい付与術士とは……」
「ふ……ふふ……別に私は使えないと言った覚えは無いがな。とはいえ終わりだな、体術と役に立たぬ魔力の壁では私を倒せない」
「そうですね、体術と魔力の壁ではあなたには勝てません」
ですが、
【ファイアアーム】
炎の手がレブナントの脚を掴む。
「俺も魔法使いですよ?」
【アイスウォール】
続けてハヤトとレブナントの間に氷の壁が現れる。
「ふん、こんな物。私には効かぬ!」
炎の手、そして分厚い氷の壁を剣で斬る。
「時間稼ぎなど私には……!」
「終わりです」
詠唱を終えた俺は右手を前に出した状態で止まっている。
掌にあるのは大きな黒い球、そしてそれはレブナントの背中側にもいつの間にか浮かんでいた。
「なっ、これは……っ!?」
【デナミスボルト】
「ぐああああああ……っ!」
白い閃光が球と球の間を通過する。
焼けるような匂い、煙立つそれは雷が通過した証だ。
「防御力が上がったとしても中を通過する雷の前にはそんなもの、関係ないですよ」
レブナントは前のめりに崩れ落ちた。




