友好(同盟締結)
「エルフの里を救ってくれた英雄に感謝を! 人族とエルフ族に栄光あれ」
エルフの里に戻って数日が経過した。
エルフの大半が傷も癒え元気になったことから、現在俺とリア様はエルフ王達からの歓待を受けている。
ライベルを捕らえる事は出来なかったが倒すことは出来た。
最後の口ぶりを聞く限りだとまず間違いなくもう一度エルフの里を襲いに来ることは無いだろう。
むしろ俺を倒しに来るはずだ。
「ハヤトさんも食べないのですか?」
「え、いえ。食べます」
リア様が不思議そうな顔で俺の顔を覗き込んでくる。
……と、いけない。せっかく沢山料理があるのに食べないのはもったいないな。
見れば机の上には見た事もない料理が並んでいる。
エルフの国ならではの物が多い気がした。
ちなみに椅子は無く立食パーティーのような形である。
「それにしてもハヤトさんの戦いを私は初めて見ました」
「初めて? ああ、そういえばリア様の前では戦ったことが無かったでしたっけ」
食べていると話しかけられた。
ヒューネルで戦った時は、リア様捕まってたもんな。
リア様がちらっと俺を見る。
「リヒトの言っていた通り、本当に強いんですね。驚きました。正直想像以上です」
「あ、ありがとうございます」
「でもどうしてそんなに強くなったんですか? すいません、失礼な物言いとなりますけど数年前はそこまで強くなかったと思うのですが……」
「どうしてってそれは」
リア様を守りたいからって言いたいけど口を開いた所で止まってしまった。
なんかそれを目の前の相手に言うのって恥ずかしいな。
「それは?」
「それは……そう、どうしても守りたい相手の為に頑張った……というか」
「……そうですか、ハヤトさんに頑張ってもらったそのお相手は幸せですね」
リア様は目を細めて笑う。
これは伝わった? いや、それにしては反応があれだし、……いや良いけどね。
「は、はは……」
「失礼」
会場の一角から道が出来る。
人が避けて出来た道から歩いてくるのはエルフの王、クードラとククル、クルーエだ。
「これはクードラ様、ククル様とクルーエ様も」
俺とリア様が一礼するとクードラは手で制す。
「良い良い、英雄に礼をさせてしまってはこちらの立場が無い」
クードラが笑っていると失礼します……とクルーエが前に出て来る。
今日のクルーエは前と違い肩の出たドレスを着ていた。
素材の良さもあり、非常に似合っている。
じろりと俺とリア様をそれぞれ見てから、
「先日は申し訳ありませんでした。非礼をお許しください」
深々と頭を下げた。
「兄から聞きました。私も相手にならなかったあの悪魔を倒してエルフの里を救ってくれたと、自分の未熟さを痛感いたしました」
「いえいえ」
先日とは打って変わって非常にしおらしい。
しずしずとクルーエが下がり、王が代わりに前に出た。
「先日、我が娘が失礼した。ともあれ、此度は本当に助かった。礼を言おう」
「いえいえ、困ったときはお互い様です」
「ふふ……そう言って頂けるとありがたい。さて、今回の件、褒美を授けようと思うのだが何か願いはあるか? 各々の願いを叶えようと思う」
王は俺とリア様の両方を見る。
俺もか。とは言ってもな。別に願いなんか……。
何を言おうかと考えているとリア様が先に口を開いた。
「では私から、このリア・ローファス家、主として、ローファス伯爵家とエルフとの友好関係を結びたいと考えております。」
「友好か、同盟ではないのだな?」
「はい、私はあくまでもルグナ王国に属する貴族に過ぎません。エルフの国と単独で同盟を組むのは分不相応かと」
「そうか……分かった。では表向きは友好関係としよう。だがあくまでも表向きは……だ。我々は勝手に同盟関係に近いと考えているが構わないな?」
「はい、私も同盟に近い友好関係だと認識しております」
「……ふふ、ならばよい。困ったときはエルフが助力しよう」
「頼りにしています」
リア様とクードラはそれぞれ手を出し、握手を交わす。
公式では有効関係、非公式では同盟が今結ばれた。
☆☆☆
ライベル視点
悪魔は無から生まれる。
気付いたらそこに俺がいるというだけで親や兄弟はいない。
物心付いた頃には大きな体があり、魔力と力がすでに強くて、そして同族に恐れられていた。悪魔は物語で言われる程残忍な奴はいない。
むしろ温厚な奴ばかりで好戦的な奴は少数だった。その中でも俺は負けたことが無かった。
それなのに俺より先に生まれただけで偉そうに従えと言う。悪魔族内でのルールを守れと。
なんだそれは、俺より弱い奴に従えと言うのか。
俺は悪魔族の住む谷を飛び出した。
そして強者を求めて他種族に戦闘を仕掛けた。
ドワーフに俺より強い奴はいなかった。
次に獣人の村に行ったが俺より皆弱かった。
エルフの里に行ったが俺より弱かった。
だがそこで初めて敗北を知る。
俺は人に負けた。決して強そうじゃない人族にだ。
しかも奥の手を使った上で……。
そもそも、俺は魔力で自分の身体の表面に魔力障壁を作っている。
だから思った。これを突破する技は無いのかと。
それが、
【デナミス・ボルト】
雷魔法で魔力障壁を電導していき本体にダメージを与える。
まさにガード不可の奥の手だ。
しかし、それが相殺された。
俺は目が覚めてすぐに聞いた。
どうやってあれを防いだのかと。
するとそいつ、ハヤトとかいう奴は言った。
「魔力障壁の属性を雷属性にして、更に地面にも障壁を伸ばしアースの原理で地面に威力を逃がしました」
魔力障壁の属性変更? そんなことが出来るのか?
そこでまず衝撃を受けた。
更に衝撃を受けたのはその次にそいつが使った魔法だ。
俺のデナミス・ボルトを使ってきたのだ。
その魔法はガードを使う相手に好んでよく使うが、これまで真似をされたことは一度もない。
まずありえない。
何故なら魔力の球を二つに分ける事、更に身体から離しての魔力構築。
これらは多大な魔力と複雑な魔力制御の二つが必要な魔法だ。
まず普通の魔法使いには使えない、扱いが難しすぎる。
それを一度見ただけで使いこなせる奴は見た事がない。
しかも俺のより更に強烈な威力になっていた。
化け物だ。間違いなく悪魔族で最も優れている俺をはるかに凌駕する化け物。
だが、あいつは俺にとどめを刺さなかった。
俺が目を覚ますまで待っていた。
内心悔しさをにじませながら俺は言った。
「今は引くがお前の顔は覚えた。エルフなんかどうでも良い。お前は俺が倒す」
格好悪いが今は仕方がない。
しかし、ダメージが治ったら再びあいつの所へ行くつもりだ。
俺に敗北を教えたあの化け物に再戦する為に。




