表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/79

女神に呼ばれて

一応あらすじで大体プロローグの要約が出来てるので読んでも読まなくても大丈夫だと思います。

長いので面倒だと思いましたら飛ばして貰っても大丈夫です。

 自分が死ぬ体験をするのは初めてだ。

 空は青く、それが徐々に近づいて来るような錯覚を覚える。

 何度も嗅いだ車の排気ガスの匂いがするも徐々に感覚は薄れていく。


「おい! 兄ちゃん! しっかりしろ!」


 視界に見知らぬおっさんが見えた。

 轢かれる前に目が合ったから覚えている。

 さっきまであった身体の痛みはなく、俺は意識を失った。


 ☆☆☆


 暗闇が現れた。

 そこは音もない静かな場所。

 ここはどこだろう。

 試しに自分の名前を思い出そうとしたが思い出せなかった。

 

 感覚はある、うっすらとした文字が見えそうで見えない。

 【ハヤト】という言葉がようやく頭に浮かんだ直後、急に光が空間を満たした。

 起き上がる、起き上がれた。


「お、おお……?」


 身体は動くし声も出せる。


「おいおい、どうなってんだ」

「私死んだはずじゃ」

「なんだこりゃ」


 見ればいつの間にいたのか、周囲から声が聞こえた。

 どの人も顔から足の先まで身体が存在しており、生きているように見えた。

 勿論自分も同じくさっきまでと違って身体の感覚があり、事実身体が存在している。

 

 状況を把握しようと周囲を見て様子を窺っていると、それは突然現れた。

 白いローブを着た女性だ。

 淡い光を放っている。


 人だかりの中心に急に現れた少女は神々しい雰囲気を纏っていて、

 困惑の空気が漂う中、一度パン……と手を叩いた。


「ようこそいらっしゃいました、貴方達は幸運な方々です」


 新興宗教の殺し文句のようなものを言い放った。

 周囲に沈黙が流れる中、一人の男が前に出る。

 眼鏡をかけた知的な大学生風の男だ。


「ここは一体どこですか? 確か僕は死んだはずなんですが」


 少女は男を一瞥し、若干の不快さを感じさせる笑みを浮かべた。


「サクマさんですか、あなたを中心にお話をした方が早そうです。では、説明を始めます。私はあなた方人間でいうところの神様です。あなた方が死んだことは間違いありません。そして最初の質問に対しての答えですが、ここは生と死の狭間の空間。あなたたちは死んでいるのですが厳密には死ぬ前に私によって生かされている……実際に生きているという矛盾を抱えた存在なんですね」


 少女は微笑みながら言う。

 周囲がざわつく。

 何言ってんだこいつ……という空気だ。

 俺もそうだ、身体があるのに死んだとか冗談にしか聞こえなくて何かのイベントに参加させられている……という方がまだ信用できる。


「生と死の狭間? 神様? 悪い冗談ですか?」


 男が俺の思考を代弁するように少女に聞くが少女は笑うだけだ。


「まあ、信じられないというのも分かりますが、では試しに適当な誰かを……」

「ふざけんなよ!」


 そういった直後、一人の男が前に出る。

 ガタイの良い男だ、眉間に皺が寄った顔は厳つい。

 男はずかずかと少女に近づいたかと思えばグイっと少女の胸倉をつかむ。


「てめえ黙ってりゃ適当な事言いやがって、早く俺をここから出せ! 殺すぞ!」


 少女を掴む手に力が入っているのが分かる。

 しかし、少女はそれに対し何も反応しない。

 にやにやと笑みを浮かべるだけだ。

 男はその態度にイラついたのか右拳を握る。


「舐めてんのか? 何とか言えよ!」


 そのまま拳を少女に向かって振り下ろした。

 ――が。


「ぐうっ!?」


 男は少女から手を放し苦し気な表情を浮かべながら胸を押さえて倒れた。

 そして暫く震えた後、そのまま動くことは無い。

 少女は掴まれていた場所を払い、俺達を見て微笑む。


「お分かりいただけましたか? ああ、気にしないでください、彼は生前神に唾を吐く人でした。あまつさえ自分は神と同等な凄い人間だと信じていた信仰心の薄い方で……馬鹿馬鹿しい。全く本当に度し難い大罪人です」


 クスクスと楽しそうに笑う。

 その表情を見て俺はぞっとした。

 彼女は半信半疑な自分達を信じさせるためだけに信仰心の低い彼を殺したと言っているのだ。

 これ見よがしに目の前で、言わばパフォーマンスとして。


 確かに少し暴力的なタイプに見えたけどそれでも殺す必要はあったか?

 これが神様、神様で良いのか?

 そう思った瞬間、少女は瞬時に視線を動かし俺を見た。


 少女が薄く笑った気がしてぞくっとした。

 少女は俺からすぐに目を離し周りを見る。


「では話を続けましょうか。今回あなた達がここに集められたのは他でもありません。あなた達にやってもらいたいことがあるからです」


 やってもらいたい事?


「これからあなた達にはチャンスを与えます。年齢を下げた状態であなた方が住んでいた世界とは別の、異世界に行ってもらいます。そこは一度魔王が倒され平和となったのですが、今度は人間同士で争いが起き、現在沢山の国が混在しております。そこであなた達はどうにかして再び平和を取り戻してください」

「どうにかって……」


 少女はまたにやりと笑う。


「質問はなさそうですね、では……」

「ちょっ、ちょっと待ってよ!」


 隣から声がした。

 髪を後ろに束ね、ポニーテールのようにした活発そうな少女だ。


「私達が送られる目的はわかったけど、でも世界平和って言っても私達別に戦えるわけじゃないよ? 歳も低くするってなおさらどうやってその争いっていうのを終わらせることが出来るの? 特別な武器とか貰えるの?」


 確かに、どうやってだろう。

 武器もなく人が出来る事なんてたかが知れてるぞ。


「多少ではありますが能力のボーナスはあります。年齢を低くするのはそれに準ずる能力上昇のためです。……が、基本的には皆さんの努力次第となるでしょう。いかなる方法でも構いません、力が欲しければ努力してください、生き残りたかったら努力してください。勿論、目的が達成できたならばどんな望みでも叶えましょう。大金が欲しい、恋人がほしい、もしくは……地球に、日本に戻してほしい。どんな願いでも叶えましょう。記憶を持った状態でもう一度生をやり直せるんです、これでも十分すぎると思います」


「最初から何かを与えないが努力すれば力を得られるし、目的を達成できれば成功報酬は与える……か。悪くないな」


 サクマと呼ばれた男は呟く。

 少女は満足そうに微笑んだ。


「ご納得いただけたようで何よりです。では早速ですが向こうの世界に行ってもらいます。もう一度言いますがあなた達の目的は世界の平和です。忘れないでください」


 そうして再び周囲には闇が訪れた。


『月が赤く染まるとき、上国からの使者が舞い降りる。

 使者達は皆強大な力を持ち、世界に平穏を与えるだろう』


☆☆☆


 この世界には古くからの言い伝えがある。

 これはあくまでもかつて一つの大きな国であった頃の伝承の類であり、それが真の話になるとは国民の誰も思っていなかった。


 しかし、ある日月が赤くなる奇怪な現象が起きる。

 誰もが空を見上げ不安になるとき。その使者たちは現れた。

た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ