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陰キャの主人公を養うアイドルがメインヒロインなんですか?  作者: ホイップは硬めの方がうまい。
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4.アイドル少女は家庭的。



チュンチュンという鳥のさえずりと声とともに龍成は目を覚ました。


「今日もいい朝だ。」


時刻は午前6時35分。

龍成は布団から上半身だけを起こした。

いつもは湿気でジメジメしていた布団であるが、この日は違う。

ぽかぽかの太陽の匂いがする。


それに部屋もそうだ。

散らかっていた部屋には何一つとしてゴミが落ちていない。

ここが本当に男の一人暮らしの部屋なのかと疑問に思うほどにきちんとした部屋だ。


姑のように人差し指で床をなぞってみるが、そこにはホコリひとつ付いていなかった。


そして、龍成の隣にはスースーと吐息を立てて寝ているネグリジェの美少女が一人。


「…………」


ジト目で彼女を見つめてみた。

薄ピンクのサラサラな髪の毛。

潤いのあるみずみずしい唇。

少しでも触れて仕舞えば崩れてしまいそうな白くて細い四肢。


「…………」


陰キャにとっては刺激的な光景である。

いや、陰キャ出なくてもそうだろう。

可憐な容姿の少女が自分の隣で丸くなって寝ているのだ。


ゴクリと固唾を飲まない方がおかしい。


「おい。星宮さん。起きろ。おーい。起きろ。」


どうやらその少女の名は星宮と言うらしい。

何処かで聞いたことのある名だ。


ペチペチと星宮の柔らかい頬を叩いてみる。



だが、星宮は

「うぅ………もう…龍成……くん。もうそれ以上は………ダ……メ……」

と寝言を呟く。


「おい。どんな夢見てんだよ。…てか、絶対起きてるよな。おい。」


今度は星宮の頬をプニプニしてみる。


(あっ、柔らかい。)


まるで高級なお餅のような弾力であった。

硬すぎず、柔らかすぎず。


龍成はその感触に若干の至福を感じていた。


「ふにぁ〜。……私……しらゆきひめ……

キス……されないと………目……さめな……い……」


頬を触られて気持ちよさそうにしている星宮は顔を赤らめて、寝言を呟く。


「……こりゃダメだ。…救急車呼ぶか……」


「!?ちょっ、ちょっと待って!起きてるから!私!」


刹那。星宮は瞼をガッと開き、一心不乱になって龍成の通報を抑制した。


「なんでキスして起こしてくれなかったの!」


開幕1発目の言葉がそれだった。

"おはよ〜。"でもなく"いい天気だね。"でもなく、"なんでキスして起こしてくれなかったの!"。


お付き合いを始めて1週間目になるラブラブ絶頂期のカップルにでも起こりえないであろう事案。


それに龍成はこの星宮とは付き合っていないどころか、龍成にとっては出会ったのも昨日が始めてなのだ。


いきなりキスなど、チャラ男熟練者でもない限りなかなかできたものではない。


「なんでキスして起こしてくれなかったのだと?馬鹿か!普通に考えてみろ!

キスするわけねぇだろ!このアホうんこ!」


「!?う、うんこ!やめてよ!

私の髪の毛!茶色じゃないよ!それにそんなに臭くない!!」


確かに臭くはなかった。


龍成が寝ている間、ずっと星宮の匂いを感じていたが、それは天にも昇る心地であったのは間違いない。


そのおかげで龍成は快眠だ。

まぁ、だが隣に美少女が無防備に寝ている事を知っていればそう言うわけにも行かなかっただろう。


その事を考えると龍成の頬は自然と赤くなってしまう。

陰キャ代表を名乗る龍成には勿論のこと、女子への免疫は皆無。


そうなるのも無理はない。


「……んで?なんでまだ家にいるんだよ。

昨日、つまみ出した筈だけど?」


「うん。……だから龍成くんが寝静まったのを見計らってピッキングして鍵あけちゃった。」


「………不法侵入。……」


「ごめん。……でも、昨日のご飯は美味しかったでしょ?……それにあの食材も❤︎」


「…………まぁな。」





























それは龍成が中野アリサとの一件を終えて、夕暮れ時に帰宅した時のことだ。


「んで?…なんで人の家に不法侵入して料理してんの?」


「……ぅぅ……ごめんなさい〜。」


龍成は台所の前で仁王立ちし、その目の前で一人の少女が裸エプロンで正座をしていた。


「龍成くんに喜んでもらいたくって……ご飯、作ってました。……」


「……なんで、俺の名前知ってんの?」


ゴゴゴと言う効果音が龍成の背後に見えるのは気のせいだ。


「覚えてないかもだけど……この前のライブの時……私、龍成くんに助けてもらったから……」


この前のライブ…というのはおそらく、龍成が佐江内賢治に無理やり連れられて行ったライブのことを指しているのだろう。


「先月のやつか?確か…横浜MSホールだっけ?」


横浜MSホールとは横浜マジ サイコー ホールの略称で収容人数が、5万人を超えるほどの大きなホールである。


歌手は一堂にその場で歌うことを夢見ているが、その夢が果たされる確率は数千分の一とかなりの競争率を誇っている。


それを成し遂げた、このアイドルの少女どれほど人気なのかはそれをみれば火を見るより明らかでだった。


「はい!覚えてくれてたんですか!」


少女は目を輝かせて龍成に飛びついてきた。

期待の眼差しだ。


「うーん。……あのライブで確かに人助けはしたけど…君のような人ではなかったな。

どんな顔かはサングラスとか帽子とかしてて見えなかったけど………あの時のあの子は君のような明るい雰囲気は無かったな。

むしろ俺みたいな陰キャの空気だった。」


少し考えた後、龍成は唸るようにしてそう呟いた。

それを聞いたアイドルの少女は少し残念そうな表情を浮かべつつもすぐに笑顔を浮かべて、「あはは。そっか。そりゃ残念です。」と髪をクルクルさせる。


「さぁ、ご飯、今出来上がったところですから、一緒に食べましょう。……あっ!…

お風呂にする?ご飯にする?それとも…わ・た・」

「言わせねぇよ!

つーか、思い出して無理やり言おうとするなよ。」


アイドルの少女の言葉に被せるようにして、龍成はツッコミを入れる。


「えへへ。じゃあご飯を食べましょう。

私もうお腹ぺこぺこです。」


「はぁー?お前が作ったご飯だからまぁいいけど、お前、まだ帰らないのかよ!」


「帰りませんよ〜。帰るつもりなんてゼロです。…さぁ、分かったらちゃっちゃとご飯食べちゃいましょう。」


アイドルの少女は龍成の手を取って椅子に座るように促す。


「おい、ちょま……!?!?!?!?」


その時、龍成は見てしまった。


彼女の美しき背中と桃のようにツヤのある臀部を。


パシャりと脳内レコードの奥深くに記録・保存したのはここだけの秘密だ。



結局、龍成は彼女の促されるままに食事をすることになった。











「では自己紹介からいきましょう。

私は星宮春亜。アイドルやってます!

好きなものは龍成くんが好きなもので嫌いなものは龍成くんが嫌いなもの。

好きな人は龍成くんで、嫌いな人は龍成くんのことが好きな女子と数学教師の伊藤(いふじ)誠先生。

趣味はカラオケと人間(龍成くん)観察です。

何か質問はありますか?」


食事取る前に前に彼女……もとい春亜が元気にそう言った。

春亜は依然として裸エプロンのままである。


台所に並べられている料理は布で覆われており、その中を見ることはまだ出来ない。

代わりに美味しそうな匂いが龍成の鼻をくすぶった。


「………ん?ちょっと待て。………えーと?

2つだけ質問がある。」


「はいどうぞ。結城くん。答えたまえ。」


春亜は学校教師のように龍成を指名してみせた。


「えと。まず一つ目。お前、なんで伊藤(いふじ)誠のこと知ってんの?」


一つ目はそれだった。

現在、龍成が通う高校には春亜は通っていないし、OBにも彼女がいたなんて聞いたことがない。


それなのに、春亜が伊藤(いふじ)誠のとこを知るすべなどあるはずがないのだ。


「ん?あぁ、実は私、明日転校することになっちゃって、それで、私の転校手続きをしてくれたのが、その数学教師だったってわけだよ?……」


春亜のその爆弾発言に時間が止まった。


「は?お、お前。……俺の高校に……転校してくんの!?てか、高校生だったの!?」


「うん。」


「し、しかも明日!?だと!?」


「うん。楽しみだね?」


嫌な予感しかしなかった。

小説とかでこう言うシチュエーションはよくある。

いわばテンプレというやつだ。


そして、そのテンプレにはだいたい何かしらの問題が起こるという共通点がある。


平穏を好む龍成にとってはこれほどまでに心を突き刺すような出来事はない。


「な、何年だ?」


「龍成くんと同じ、高2だよ?」


「………」


同級生だったらしい。

嫌な予感がプンプンして来る。


「別に、転校して来るのはいいが……俺にだけには迷惑をかけるなよ?…それと、学校でも話しかけてくんなよ?

俺は一人が好きなんだ。」


春亜のようなアイドルが龍成に話しかけてきたらどうなるだろうか。


端的に言えば、死ぬ。


カースト上位の陽キャに嫉妬されて殴り殺されるだろう。


「うーん。………あっ……えへへ〜〜。

わかった。肝に命じておくよ。」


少し何かを考えた後、頬を緩ませて笑顔になった。


何を考えていたのだろうか。


龍成には春亜の気持ちなど一切わからなかった。



「そ、そうか……なんか不安だが、約束だからな。」


「えへへ〜。了解。」


彼女笑みは龍成の不安をより強固なものにさせる。


だが、ここで頑固になっていても話は進まないので、彼女を信じて見ることにした。


「んじゃ、2つ目の質問なんだが……,」


「うん。なぁに?」


「お前、俺の家に超高級食材、送ってきた?」


今朝のことを思い出す。


山猫ヤマトの宅急便で送られてきた超高級食材のことだ。

確か、その送り名の欄には星宮春亜と書かれていた。


「うん。龍成くんが喜ぶと思って❤︎」


純粋無垢な笑顔に少し胸がドクンと震えしまう。

これは不意打ちすぎた。


(天乃に比べればカスみたいな存在だが、こいつもよく見ると可愛いな。)


「そ、そうか……ありがとな。」


鼻の下を擦りながら照れ隠しをしつつ、控えめな声でお礼を言う。


陰キャとて、礼儀に反することは嫌いだ。

約束を破らないだったり、嘘をつかないだったり、お礼を言うだったり、そう言った当たり前のことは当たり前にできる。

龍成はそう言う男なのだ。


「うん。どういたしまして。」


綺麗な笑顔だ。

この笑顔と張り合えるのは中野アリサくらいなものだろう。


その時。

"ぐぅぅぅ。"

腹の虫が鳴った。


この部屋には2人しかいない。

龍成と顔を真っ赤にしてお腹を抑えている春亜。


犯人は明確だ。


「た、龍成くん。

私、龍成くんのことは大体知ってるから龍成くんの自己紹介はいいや。

それよりご飯食べよっか。」


「…………なんで俺のことを知っているのかは気になるが、そうだな。

俺もお腹減ったし。先に飯にするか。」


「あ、ありがと。」


春亜はそう言うと、椅子から立ち上がり料理にかけられた大きな布を取り外した。


「!?!?!?!?」


そして、龍成は目を大きく広げて仰天した。


そこには宝石のようにキラキラと輝く料理が机いっぱいに並べられており、まるで超一流シェフが作るフレンチのような見た目をしている。


一つ一つ、ラップで綺麗に包装されているが、ラップ越しからでもそのいい匂いが伝わって来るようだ。


「すげぇ!これ全部あんたが作ったのか?」


「うん。驚かせたくて布で隠してたけど…驚いてくれた?」


「驚くなんてもんじゃぁ断じてねぇ!

凄いぞ!星宮!」


もういつ頃からまともなオカズを食べたことないのだろうか。


だが今、龍成の目の前には大量のオカズがある。

しかもどれも格別に美味しそうだ。


「/// う、うん。龍成くんのためならいつでも作るから。///」


頬を染めて照れている春亜。

軽く布を畳んで、それから龍成のために料理をつぎ分け始めた。


(!?)


龍成は料理をつぎ分けている春亜を横目で見る。

エプロンの隙間に薄ピンクの突起物が……ギリギリ見えない。


龍成はさりげなく姿勢を変えて、何とかして目に取り込もうとするが、どうしても見えなかった。


「はい。龍成くんの分。」


「お、ありがとう。」


まさに家庭的な女の子だ。

そう言えばと周りを見返すと、ゴミが一つも落ちていなかったことに気づく。


「なぁ、もしかしてさ。掃除もしてくれた?」


「うん。したよ。ちょっと散らかってたけど。頑張っちゃった!」


龍成は少しドキッとした。


(ダメだ。この女といると調子が狂うな。)




その後。

なにげのない話をしながら、春亜の手料理を頬張った。


妹の叶恵が作る料理も絶品だったが、春亜の手料理はそれを凌ぐほどの腕前で、驚きを隠せなかった。


具材は今朝、山猫ヤマトの宅急便で送られてきた超高級食材を使用していたのだが、超高級食材を差し引いてもこの味はなかなか出せないだろう。


龍成が春亜の手料理に対する率直な賞賛を述べた時はトマトのようにかなり赤面していた。





食後。

と言ってもまだ時刻は7時になったばかり。

外はもう暗いが、夜はまだ始まったばかりだ。


「そ、そういえば、星宮。ど、どうやって家に不法侵入したんだ?」


龍成の目の前で堂々とエプロンを外して、服を着始めている彼女にそう聞いてみた。

女の裸など知らないまま人生を終えると思っていた龍成にはかなり刺激が強すぎる。

のだが、なぜか大切な部分はピンポイントで見えない。


龍成は悔しそうな表情を浮かべつつ、チラチラと彼女の着替えを凝視する。


「不法侵入って……私はあなたの奥さんなんだよ?そんな野暮な言い方はよしてよ。」


春亜はプンスカと怒っている。

しかし龍成は春亜を妻にした覚えはない。


「………んで?どうやって不法侵入したんだ?」


「龍成くんが家の外に隠してある合鍵を使ったよ?…ほら植木鉢の下のやつ。」


春亜は淡々とそう言ってのけた。


「お前は俺のことをどこまで知ってんだよ。」


流石の龍成も呆れてしまう。

普通なら恐怖を感じてもいいところだが、春亜と話してみて彼女が悪いやつではないことは分かったのだ。


「大体の事は知ってるよ❤︎あ・な・た。」


「はぁ……あっそっすか。」


ため息をついて天井を仰ぐ。


「それで?星宮。いつ帰るの?」


もう時間的に帰宅したほうがいいだろうと考えた龍成はさりげなくそう聞いてみた。


「ん?今日は……というか今日からずっとこの家に住むことにするよ?」


「…………は?」


衝撃の告白に開いた口が塞がらない。


「何で!?」


「だって、私、龍成くんのこと好きだし。

養うって約束したし。

ずっと側でいたいし。……」


「馬鹿か?お前は?お前の一存で決めれるわけないだろ?」


「ふふーん。実はしかるべきところには許可をもらっています!」


春亜は両手で口を隠しながら小さな声でそう言った後、彼女が持ってきたカバンから一枚の紙を差し出してきた。


「か、母さん!俺を…売ったのか!」


それは龍成の母親からの手紙だった。

内容はいたって単純。春亜の龍成の家での同居を容認するものであった。

丁寧に印鑑まで押されている。


「も、文句は言わせないよ!」


「マジかよ。」


龍成は急いで実家に電話をしてみた。


プルル、ガチャ。


電話をかけて1.5秒ほどで誰かが龍成のコールに出た。


「もしもし。兄さん。」


「おお。叶恵か?久しぶりだな。」


声の主はどうやら龍成の妹らしい。

クールで透き通った声だ。


「久しぶり。珍しいね。兄さんが電話してくるなんて。」


「あぁ。ちょっと、急用でな。

悪いけど母さんに代わってくれる?」


「……大丈夫。兄さんは心配しないで。

今、母さんを粛清してるから。」


直後、プープーと電話が切れた。


生唾を飲んで、"実家で一体何が……"と考えていると、龍成のLINEに一軒のメッセージが入った。


"助けて。たっちゃん。……叶恵にたっちゃんが春亜ちゃんと同棲することを許した事を教えたら………ゲフッ……急に叶恵の顔が……お、お、お、鬼が…………きゃーーー!!!たっちゃん!助けて!"


断末魔のようなLINEだった。

送り手は龍成の母親からで、その内容から龍成の母親が春亜に同居を許したのはどうやら事実であることはわかる。


「叶恵……お前は一体何をしているんだ。」


龍成は同居を許した事実よりも、今実家で何が起こっているのかが気になって仕方なかった。


そして、もう一度携帯が振動し追加のメッセージが送られて来た。


"三途の川で……待ってるわ。……

愛してる。……たっちゃ"


メッセージはそこで途切れていた。


「母さぁぁぁああぁぁぁあああん!!……………………………………………………………………………………………………まぁ、どうでもいっか。」


すぐに携帯の電源を落とす。

返事など一切しない。


そもそも、龍成の母親が春亜との同居を許していなければこんなことにはなっていなかっただろう。


「悔いて後悔するがいい。母よ。」


携帯をポケットにしまい、そのように独り言を漏らす。


「ね?言ったでしょ?」


すると、春亜がニコニコとした笑顔を向けて来た。


「ああ。マジだったな。」


「じゃあ、今日から私はここで住むからね❤︎」


春亜は勝ち誇ったようなウインクをして来た。

アイドルをやっているからか、ウインクが物凄くうまい。

一般男性ならこのウインクでイチコロなのだろう。


だが、龍成は違った。


「だが、断る!」


龍成のその言葉が部屋中に轟く。


「………え?」


春亜もびっくりしている様子だ。


「あぁ。約束は約束だ。違える気は無い。

星宮のような家庭的な女子がいてくれたら生活も色々と楽になりそうだしな。……

だが、今日は帰ってくれないか?

その……心の準備が必要なんだ。」


これは真っ赤な嘘である。


龍成は陰キャで、なおかつ女経験ゼロ。

そんなイカくさい男子が女子の…それもとびっきりの美少女の裸を見れば、一体どうなるだろうか。


そう。発散が必要になるのだ。


まぁ、ナニをするかは言及しないが、とにかく発散が必要なのだ。


この狭い家で、女子と二人暮らしをしている時に発散する事はあまりにリスクが高すぎる。


「心の準備か……まぁ、一緒に住んでたらなんとかなると思うから、帰らないよ。」


「何!?」


「だから、帰らない!1日も無駄にしないから!」


何を無駄にしないかは龍成には理解できなかったが、恐らくは龍成との生活だろう。


「どうしても、帰らないというのか?星宮!」


「ぜっっったい!帰らないよ!」


「そうか……では仕方ない!」



龍成は瞬時にしゃがみ込んで春亜の足首辺りを抑えた。


ピキーーーン!!


すると春亜はゆっくりと玄関に向けて歩き出した。


「!?え!何で!勝手に足が……止まんないよ。。。龍成くん。何したの?」


「ふふふ。勝手に駅まで足が動く秘孔を押した。お前は駅に着くまでその足を止める事はできぬ!」


龍成はドヤっとドヤ顔をする。


「ひ、秘孔?………何それ。………………そ、そんなのずるいよ。龍成くん!」


「残念だったな。星宮よ。……ほれ、忘れもんだ。」


龍成は春亜の肩にバッグをかけて玄関になどを開ける。


「また明日、学校で会おうな?……星宮さん。」


「むぅぅ!龍成くんの馬鹿!」


そうして、龍成は駅の方面に春亜が歩いていくのを見送った後、植木鉢の下のカギを回収し、家の鍵を閉めた。







自分、神奈川出身じゃ無いです。

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