第八話 学園長と相談
「災いの星が、人間となり、リーチェ殿下と龍の誓いをされたのですか……」
「龍の誓い、って、何ですか」
「龍は命を助けて貰うと、その人間が命尽きるまでついてまわる一途な生き物なのですよ。しかし、はてさて……他の者にはどう説明したものか」
「学園長も不吉だから置いとけないって考えですか?」
「私自身は気になりません、吉兆は何かしらにより変化を遂げやすい、大変デリケートな存在。何かの拍子で、リーチェ殿下の仰るとおり吉兆となる可能性はある。しかしね、問題はそれを信じない周りです」
「それであればこう申せ、私はこの学園の生徒として暮らす。兵士の他には誰もこの姿を見てはいない。噂を信じる者どもには、黒き龍は怪我が治るなり身が白くなる修行を受ける約束をし、再びいなくなったと」
「……イミテ様、それでしたら……――そうですね、扱いが大変難しい存在なので、貴方にはリーチェ様の召使い、ということになって貰いましょう」
「構わぬぞ、それでリーチェの傍にいられるのであれば」
「それと、イミテ様、お願いが御座います。リーチェ様は大変我が国にとって大変な任務を引き受けている所に御座います。故に、その任務にだけは手出し無用ということで……」
「その任務とは何だ」
「我らが姫様の、婿決めです。キャロライン姫の婿が誰になるかで、この世界の未来が決まる、というのが――高貴な方のご神託でして」
「……――なるほど、その高貴な奴の飼い犬か、面白くないな」
「更に言うと、リーチェ殿下も婿候補ではあります」
「な?!!!ほ、本当か、リーチェ!?」
「それについては俺は知りませんでした! 俺はただ、キャロライン姫とアルデバラン殿下を結ばせる手伝いをしてくれって……!」
「本人にその気がないのであれば……いや、しかし……ふむ」
不服そうだが、十分くらいぶつぶつと呟いて悩んだ結果、イミテは頷いた。
「判った、要するに! キャロラインとアルデバランという者を、くっつければいいのだな、それが主の意志であると。いいか、リーチェ、一目でも靡いたら噛みつくぞ」
犬歯を見せて唸ってから、イミテは口元をすっと戻し、小さな口になる。
イミテの表情が冷静なものに戻ったところで、学園長が頷き。
「それでは、そのように手配します。お部屋はご一緒で構いませんが、周囲にばれないように侍女らしくリーチェ殿下の身の回りを世話してあげてくださいね、ほっほっほ」
「うむ、任せよ。それくらい出来る。行くぞ、リーチェ、その首輪の主とはよう話がしたい。気に喰わんのだ、鈴も、首輪も」
イミテは俺を引っ張るなり、部屋に向かって走って行く。
学園長は、遠い空を見上げ、もう夜空になりかけの空にむかって何かを呟いた気がした。
「運命の者よ、これで良いのでしょうか――」