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第七十四話 仮面を取れば泣き濡れるシンデレラ

 黒に紫のアクセントのある礼服に、アメジストのカフスをつけ、髪型もセットする。

 皆はダンス相手とともに会場に向かっていく、城でダンスをするので、馬車が学園からひっきりなしだ。

 ディスタードも、アッシュも、アレク先生も、さっさとパートナーと出かけていく。

 キャロラインはドレスアップして、ヴァスティが来るまでは俺とおしゃべりしてくれた。


「ヴァスティがね、ドレスを贈ってくれたの」

 心から嬉しげにドレスをお披露目するキャロラインに俺は嬉しくなり、そろそろ二人がきちんと結ばれるような予感がした。

 やがて一番豪華な馬車がきて、中からヴァスティが現れ、人々がざわめくなかキャロラインを連れて出て行った。

 俺とも目を合わさないもんだから、相当怒ってるなあれは。

 でも体調はこの日のために整えていたようだったから、安心はした。


 やがてどんどん人はいなくなっていく、イミテとレオナルド兄様も最後まで待ってくれたが、時間になり、しょうがないと行ってしまった。


 すっぽかされたかなぁと不安になりながら待っていると、真っ赤な髪の女性が真っ赤なドレスでくっついてくる。


『あんなことするもんだから、すっぽかしてやろうかと思ったわ』

「俺のあなただもの、そんなことできやしないよ。なんだかんだで優しいから君は」

『そんなことないのよ、……仮面はとらない変な女でもよろしくて?』

「もちろん、毒を扱う変人王子だからね」


 俺が笑えば、女性も笑い、俺と女性は一緒に遅れて馬車に乗り会場へ向かう。

 会場につけば、既にダンスパーティは始まっており、俺は女性をエスコートして中へ入る。


「靴が銀色だ」

『めざといわね』


 銀色っていうと、シンデレラを思い出すな。

 シンデレラはガラスの靴って言われてるけど、銀色の靴説もあったんだっけか。

 中に入ってダンスをお披露目すれば、皆は女性に注目する。

 素敵な人だろうと、得意げになる気持ちは当たり前だ、こんなに可愛い人だもん。


 ただ、何を考えているのか全然分からないんだよ、シルビア。

 何を考えているか分からないし、他の野郎を待っているのかもしれないって考えるだけで、心臓がきゅっとするんだよ……。








 会場ではヴァスティとキャロラインもダンスをしていて、キャロラインは俺とダンスをしている人を見るなりぎょっとしていた。


 視線で「大丈夫?」と問いかけていたので、微苦笑しておいた。


 他の奴らはアッシュとヴァスティ以外気づいていない、だからしばしダンスを楽しもうと思っていた。


 曲が別の物に変わってからイミテがすっとやってくる。

 イミテは髪をアップにしていて、じ、とオレと女性を見つめてから女性に「お借りしても?」と訪ねる。

 女性はどうぞと空で文字を描き一礼を。


 オレとイミテはダンスをしながら、先日のことについて話そうとした。


「安心して欲しいのだ、お前様」

「何がだ」

「私は、お前様の従者で、お前様の一番祈る神でありたい。だから、もう恋慕を強請るなどせぬよ」

「……自分勝手でごめんな」

「謝るな情けない、……代わりに、お前様は絶対に幸せにならないと許さないからな」


 イミテとダンスを終え、女性の元へ戻る。

 女性と目が合うだけでどきどきとし、オレは使用人が配っていたグラスを手に取り、喉を潤す。


 ……邪魔が入る。


 パーティー会場にメビウスが、哄笑しながら現れたからだ。

「今日はよき日だ、あしらえたかのように我が乙女が華麗なドレスを着ておいでだ」

「メビウス! 何しにきたの?!」

 キャロラインが騒ぐなり、ヴァスティがキャロラインを背中に隠す。

 にっこりとメビウスは笑いかけ、ふとシルビアに気づく。


「ルルが以前に敷いた魔方陣を発動させ浮かれた人々を恐怖へ訪れるためと、浮かれた我が女王を連れ戻しに。この場に未練がまだあったようだ、なぁ、シルビア?」

「……ッ、メビウス、無粋ね」


 キャロラインは庇おうとしてくれたけれど、それよりも先に皆の白い目に耐えきれなかったシルビアが髪の色を戻して、その場から逃げ出すように走って行く。


「この場は俺たちに任せるといい、行け」


 アッシュは俺を追い出すように背中を叩くと、メビウスと対峙する。


「ピュアクリスタルは盗られたが、心は無事だ、残念だな?」


 アッシュの言動にメビウスは肩を竦めるが、それを合図に場にアンデッドたちが出現する。


「こいつらだけは我が女王の命ではなく、我が命をきくのだよ」


 戦闘が始まりそうだったが、戸惑いながらも、俺は皆を信じてシルビアを追いかける。

 シルビアを追いかけると、何かに躓いて転んでいた。

 ドレスの裾を踏んでしまったのだろう、俺は駆け寄り、脱げ落ちた片方の銀の靴を手渡す。


「馬鹿だと思うでしょ」

「思わないよ」

「いいえ、馬鹿よ。結局は、私はあなたを諦めきれなかった。あなたは追いかけてきてくれたけど、私はあなたを利用しているの。いい加減あなたも気づいているでしょう?」

「気づいているのは、利用利用って言ってるけど、結局は全部俺かヴァスティのための目的って事実かな、ほら、仮面外して」

「いやよ」

「なんでそんなにかたくな……顔見せろって」

「お願い、見ないで」


 無理矢理にでも仮面を外せば、泣き崩れているシルビアの姿。

 ぐすぐすとお姫様にあるまじき泣き方で、ぼとぼとと涙の滴をこぼしている。

 シルビアの目元に口づければ、シルビアは俺に抱きつく。


「お願い、五生宝を譲って」

「俺だけの品なら渡せたけど、あれは皆で手に入れたものなんだよ」

「それなら、力尽くよ」


 シルビアが何かを唱えている、俺が気づいたときには遅かった。

 シルビアたちの根城へ転送されていた。



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