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第六十九話 もう後ろは振り向かない、前だけを見る

 夢から目が覚めれば、俺とアッシュは起き抜けのけだるさにやられていた。

 夢の中で、納得のいく答えが見れたならいいのだが。

 起き上がるなりアッシュのほうを見やれば、アッシュは目元を隠しながら、笑っていた。



「間抜けだな。俺は。妹と家族にすべて背負わせてしまったことすら、忘れていたようだ」

「暗殺ってぇわけでもなさそうだ、あいつの考えてることがいよいよわからない」

「メビウス、か……一つ、意趣返しをしてやりたい。待ってろ、意趣返しになりそうなものを一つ持っているんだ俺は」


 アッシュは自室のデスクから、やたらきらきらと紫色に光るそれを取り出して、にやりと笑いかけた。


「それ、もしかして」

「なぜだか、持っていた。ピュアクリスタルだ、俺にはもういらない。君に闇に傾きかけているなど心配されるという、稀有な体験は二度とごめんだな」


 紫色のピュアクリスタルを受け取るなり、俺の中で何かがひらめいた。

 これは、……多分アイテムを生み出すときのレシピを覚える感覚に似ている。

 脳裏によぎった単語は、「聖なる乙女のティアラ」――これはアイテム名だろうか。

 まじまじとピュアクリスタルを見つめる。

 そもそもあいつらはなぜピュアクリスタルに拘るのだろうか。

 あいつらなら自力で願いすら叶えられそうなのだけれど。


 紫色のピュアクリスタルは、不思議と昔から持っていたかのように、手になじんだ。






 後日きちんと金色香草と仰々しい手紙が届いた。

 個人的な手紙だというので、こっそりあけてみれば、王様からひと言メッセージが書かれていた。



『我が子らは、君の采配にかかっているかもしれないな』



 手紙をしまいながら歩いていると、キャロラインと話すアッシュに出くわす。

 どうやら先日の婚約者候補にあがっている話について、語り合っているようだった。


「俺は随分君の心を大事にしない態度を取ってきていたと思う。君や、とある馬鹿を見ていて、人を愛する思いの伝え方を学んだつもりだ」

「アッシュ様……あの」

「大丈夫、君が誰を好いているかは分からなくとも、俺は選ばれないのは分かっているんだ。断っておくから安心して思い人と結ばれるといい――幸せにならないと、この俺をふるんだから許さないぞ」

「っふふふ、はい、分かりました! 絶対に……幸せになります」


 盗み聞きした話は知らんぷりしたほうがよさそうだ。


 ただ後で果物を差し入れしたところ、盗み聞きがばれて俺は怒られるし、何故だかため息もつかれた。


 アッシュの顔つきはそれでも、つきものがとれたようにすっきりとしていたのでほっとはした。



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