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第六十五話 キャロラインの好感度変化

「そういうことであれば、本当に相手が誰もいないという姫君達を誘ってみる、頼むぞ父上のこと」


 アッシュは気まずそうに頼むと、キャラヴェル様の頭を撫でて良いものか悩んだ末に撫でずに、一礼し、部屋へ戻っていった。

 イミテはドッグフードを選別しながら、会話を聞いていたのか俺に話しかけてきた。


「お前様はやはりシルビアを選ぶのだな」

「ん? どうしたよ、イミテちゃん」

「――別に、何でも無き。それよりも、だ。涙をどうやって出すのだ、嘘の涙ではなさそうだし……」

「多分、舞踏会までにはでるんじゃねーかな、舞踏会がメインだとは思うんだ。それまでに涙が出るか、それまでにキャロラインの恋心が判明すれば何かしら話は進むとは思う。イミテはそういえば舞踏会どうするんだ?」

「どうするも何もお前様の世話に決まってるだろう。興味もなければ、私は召使いという立場だ」

「女の子だし、ドレスアップくらいはしようよ、費用は今までのポーション売ってきた金とかでさ」


 イミテの頭を撫でようとし、イミテも嬉しげな、明るい顔をしたかと思えば、キャラヴェル様が俺の伸ばした手を噛んだ。

 しかも結構痛いやつ、俺ペット飼ったことねぇからあれだけど、犬ってこんな痛い噛み方するのか?!


「いってて……な、何で噛んだわけよ、今!?」

「さて、不吉だからかのう。こら、噛んではいけないものであるぞ! 我が主人に何をする!」


 キャラヴェル様はイミテにわんわんわんと吼えまくっている、何か主張はありそうだが、それでも意味は分からないのが悲しいところだな。

 そういえばあれから作れる薬増えたんだっけか、他に薬何が作れるんだろう。

 材料確認も込めて、見ておこう。


 自分のステータスから作れる薬リストがあったので見てみれば粗方薬は作れるようになっていた。

 最上位ポーションのロデラから貰った虹光薬は置いといて、光源病に効く五生宝を使った五行特効薬や、復活薬か。作れないのは。

 五行特効薬と、復活薬は材料が少し似ている。金色香草を主に使うのが復活薬っぽいから、キャラヴェル様から事件解決したら沢山貰いたいな。


「お、変身薬なんてあるのか」

「なんだそれは」

「動物に化けたり変装したりするときに飲む薬」


 もしかしてこれを応用すれば涙を舐められなくても、治せるかもしれない。


 俺はこの決断を大いに後悔することとなる。





 駆け足で実験室に誰か来る。

 俺は学園長に許可を貰って授業後でも、実験室を使えるようにしてもらっていた。

 人体に影響が負の面で強すぎない材料や、調合をすることとして、毒は禁止だ。

 正統なほうの薬剤も作れることは作れるので、それでも構わない。

 入ってきたのは、キャロラインとディスタードだ。


「アッシュくんから聞いたよ、アッシュくんの父君の犬化! 実に辛い! 辛いお話だ! よりによってトイプードルとは。もっと雄々しい犬であれば威厳もあっただろうに!」

 ディスタードの登場に犬はきゃんきゃん吼える、いや、言葉に反応したのか。

 キャロラインは気まずそうに俺を見つめると、俺とキャロラインに漂う微妙な空気に気付いたディスタードが、目を細めてイミテに問い詰める。


「黒き方よ、これはどうなっているんだい? いつもだったら、それこそ犬のようにリーチェくんの周りではしゃぐ姫君が! しおらしい!」

「乙女心というやつが姫にも産まれたのであろう」


 君達聞こえてるし、適当なこと言い過ぎ。

 という意味を込めて、ディスタードとイミテにそこらにあった紙くずを投げた。


「わ、わ。何をするんだね! キャロラインくんはアップルパイを焼いてくれていたんだよ!? 是非リーチェくんに食べさせたいのだなと勘の良いボクは悟った! これは愛しの人のためのパイだと! 略して愛パイ!」

「……あの、リーチェ」

「判ってるよ、それは俺宛てじゃないんだろ、うちの馬鹿がすまんかったな。門限になる前に早く行くといい。誰も責めないよ」

「……うん! あの、あのね。〝皆〟にはクッキー焼くね!」


 ――ようやく、か。

 ようやく、俺もその他大勢として扱われ始めたか。

(少し寂しいけれど、これがきっと正しい)

 キャロラインは微苦笑を浮かべて、実験室を出て行った。

 きょとんとしたディスタードが、小首傾げる。


「リーチェくん、ボクの心友よ、いったいこれはどうしたことか」

「目標を達成しそうだということだ、余計なこと言ったり何もしたりするなよ、今は」

「なるほど、それはめでたいことなのかな!? そうであれば、このボクが祝いの剣舞でも……」

「実験室では大人しくしてろ。まぁ今の反応で、大体俺がどうなったか判ったよ、有難うな、ディスタード」


 ディスタードを褒めればきょとんとした後に、どや顔をして嬉しそうに威張るディスタードであった。


「何せボクは君の心の友だからね!! しかしもしかしてキャロライン姫の好きな人ってぇのは……ヴァステルデ様なのかね?」

「ああ、そうだよ」

「だとしたらボクはシルビア姫の狙いが半分は判ったかもしれない、君と同じ狙いだとしたら」

「お前それ、何かの推理ものだとしたら明日お前死んでるパターンだぞ?!」

「何だねそれは? そういうルールでもあるのかい? いやいやこのボクが簡単に死ぬわけがない。ボクはきっと龍に火を噴かれても、死なないぞ! あ、最初にメビウスと会った時はぬいてね!? それで、何を作ってるんだね!?」

「変身薬を応用して、キャラヴェル様が人間に戻らないかなぁっと」

「なるほどなるほど、よし、ボクは何か差し入れを持ってこよう、此処で待っていたまえ!」


 ディスタードは実験室を出ると、アッシュと出くわしたらしく、何かを話してから去って行った。アッシュが実験室に入ってくる。


「どうだ調子は? 父上何事かされてませんか?」

 アッシュは犬にあまり近づくこともなく、問いかければキャラヴェル様がきゃん!と一回吼えた。


「試したいことは出来た、毒薬ではないから安心して欲しい。姫君紹介どうなったよ」

「――世界一、いや、二番目か。キャロラインの次にお美しい姫に声をかけることに成功した。手紙を送れたんだ」

「へ、その人とお前さんは踊らないのか?」

「俺は……その姫君が何を考えているのか、判らないからな。兎に角、話すチャンスは作ってやった、今夜か当日かは判らんが姫君と話すと良い」

「名前は?」

「会えば判る、印象の強い御方だ」


 結構妖しさがすごいが、そこらへんはアッシュを信じることとしよう。


「さて変身薬が出来た、飲んで貰おうか、キャラヴェル様」



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