第六十二話 一難去ってまた一難
会場はもう人はおらず、しぃんとしたただの博物館とかしている。
展示物も皆が落としていったから、何もないし。
伽藍堂だ。
俺はぼんやりと今日のことを思い返していた――そこにイミテが現れ、イミテはきっちりとドレスから制服に戻っていて、俺の隣へ座った。
「どうした、お前様、間抜け面しているぞ」
「俺達――俺達とシルビア達は、本当に敵対していていいのかな、って思って」
「確かにのう、話を聞いていると、敵味方などないように聞こえる」
「……シルビアがどうしてそこまで、俺と手を組むのを諦めているのか、判らないんだ。動機が判ったけど、ピュアクリスタルは狙い続ける理由も」
「一つ判ったのは、これは私の見解だが、皆お前様に期待しておるのだよ。お前様次第できっと。きっと何か変わるし、何か嬉しい未来が待っているのでは、と。無駄ではない、お前様の働きは!」
「……さんきゅ、はぁ、今回も色んなコト起きたな-。とりあえず、誰にも奪われないうちに、これ食べるか」
俺は有難く、人魚の涙を口にし、即座にレベルアップをはかった。
一気に薬学のレベルは高まり、復活薬の作り方が判るまであと少しな予感もした。
「あとは、アッシュが目覚めるのを待つばかりであるな」
「それとシルビアから貰った飴を食べるタイミングもみないとなぁ……」
疲労回復効果のあるグミを取り出して食べながら、俺はふとイミテの唇を見やる。
イミテは視線に気付くなり、舌をべーっとつきだし笑った。
「ようやく意識したか、馬鹿者め」
「き、キスするこたあないじゃないの、イミテつぁん!」
「良き働きであっただろう? 悪女らしく。……リーチェ、龍はな健気な生き物であるのだよ、それで、その」
「どうした顔が赤い」
「……リーチェ、お前様はシルビアが好きなのかえ?」
唐突な言葉に、俺はウーンと小首傾げ、考え込む。
「この感情はうまく、言えないや」
「……そう。さて、リーチェ、学園に戻るか! 皆が、待つあの学園に!」
「ああ、やっと少しは、休め、そう――」
あれ、ぐらりと視界が揺れる……ああ、忘れていた。
俺、ずっと体調悪いままだったのだ、あのテスト近くの日から。
俺は意識を失い、イミテの悲鳴が聞こえた。




