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第五話 ライバルヒロイン・シルビアの登場

 あれからヴァスティの部屋を出るなり、城の兵士が貴族に対する礼をしてから、着いてくるように頼んできた。

 頷いて兵士が促した馬車に乗ると、大きな敷地を持つ学園に連れて行かれる。

 ああ、そうか、確かリーチェってゲームの中だと学生でもあったっけか。

「お部屋はこの星の間をお使いください、ここが唯一予言者様と連絡の取れる間になっております」

「ああと……学生証あるかな」

「ああ、すみません、此方になります、学生証は。使用人につきましては、明日生徒の皆様が使い魔を選択なさいます。使い魔を選ぶときに、重々慎重にお選びくださいますよう、使い魔が使用人代わりとなります、この学園にいる間は」

「使い魔……わ、判った、いいよアンタら帰って。有難う!」

 兵士には帰って貰い、自分の部屋を改めて見つめる、常にプラネタリウムの中にいるような天井だ。やけに広く感じる。

 この部屋の作りは兎に角豪華なのだと伝わる、装飾品が一切ない代わりに、この部屋の装置だけでも金がかかっていると。

 とりあえず、学園をちらっとでも散歩してみようっと。


 今いるところが確か男性寮で、この近辺ならうろついても問題ないだろう。


 道は敷地内なら適当に歩いても大丈夫そうだな、自分の部屋さえ覚えてりゃ。

『自由にうろつくのは構わないが、今は姫様とアッシュ王子の初邂逅の時間だ、精々邪魔しない範囲でうろつけよ、リーチェ王子』

 鈴から聞こえてきた声に、びくっとし、見張られてる気配がしたので頷いておく。

『此方からはお前の動きなぞ見えんからプライバシーは保証する、こうして声をかけることができたのは、ようやくお前の未来が見えたからだ』

「あ、俺ようやく順応してきたかな?」

『順応?』

 怪訝そうな声に、その場にヴァスティはいないというのに、首をふるふると振った。

「なんでもねぇよ、それじゃ姫様がいないところはどこだ?」

『姫様なら、次にきっと――学園の花園へお越しになられるだろう。息抜きなら、庭園でどうだね?』

 疲れが溜まっているっぽいヴァスティの声を聞いてると、これ以上手は患わせたくないな、と感じたので、言われたとおり庭園に行く。


 庭園と言っても学園の校舎前にある、皆が天気の良い日は学園に通う前に通りざま花を見かけて、綺麗さにその日一日機嫌良くなるだろうくらいの。

 近所の公園や地元の花壇と比べたらでかいけれども、とある遊園地ほどには大きくはない、か。


 まぁ気分転換にはとてもイイ気がする、何より陽が当たるし。


「まぁこれはこれは、毒泉国のリーチェ様、御機嫌よう」

 声をかけられたので振り返れば、そこにはヒロインのライバル役として常に存在していたシルビア嬢の登場。

 今はまだ姫様と出会ってないからか、イイコの様子。

 黄土色のツインテールを緩くそよがせ、吊り目気味のブルーの瞳をキラキラとさせている。

 俺なんかと目を遭わせても、にっこりと優しく微笑みかけてくれたよ。

「御機嫌よう、お名前でお呼びしても?」

 うちの国の方が規模が小さいから、お伺いはたてないとな。

 シルビア嬢は小さく笑って、学園支給のドレスをふんわりと揺らした。

「変な方ね、ここは学園ですわ。身分はある程度は、常識さえあれば……気にならないと思いませんこと? 身分を気にしていたら、学校生活も楽しめなくなりますもの」

「自分はどうにも貴族の口調は堅苦しくて苦手でして――無礼を働くかもしれませんよ」

 ようやくちょっとは前世の記憶は落ち着いてきたけれども、だ。

 それでも、貴族としては無礼なほうだとは自覚している。

「宜しいのよ、相手を侮辱さえしなければ」

 おかしな方、とシルビア嬢は笑い続けている。

 笑顔が可愛い子だな、と思って見つめていると、口元をシルビア嬢は抑えた。

「失礼、笑いすぎてしまいましたわ。改めてお初お目にかかります、シルビア・アルデバランと申します」

 ドレスを抓みながら、お辞儀をしてくれたので、此方も胸に手を当て一礼を。

「リーチェとお呼びを、シルビア様」

「リーチェ様といえば、毒泉国の御方ね。変わった方だと聞いてるわ、国のほうも。猛毒でさえも、医薬にする才を持つ、最新の医療先進国だとか」

「そうそう、そのお陰か判んないデスケド、自分は毒が効かないンですよね」

「それは大層羨ましい、暖かいお料理をいつでも食べることができるということでして? いつも味見係の確認が終わってから食べるから、暖かい料理に縁遠いのよ……」

「この学校でも?」

「そうなると思いますわ、城より特に間者が入りやすい性質を学園というのはお持ちですから。それでも学びたいから、こうして来たのですけれどね。でも、貴方のような医学を会得してる方がいらっしゃるなら、いつか暖かい料理を食べてみたいものですわね。毒入りでも大丈夫そうですもの」

 はにかむ姿が切なくて、すごい可愛いンだけど……なんというか、気まずさを感じる。

 俺さ、キャロライン姫様サイドなんだよね。シルビア姫とは多分対立することになると思うンだけど。

 ……仲良くなるだけ、悲しくなる気がする。


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