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第五十五話 メビウスとヴァスティの謎、生き写しの姿

 アッシュの看病を俺がすることとなった、アッシュは意識が戻らない。

 病状を診ても、まるでどうなっているかがまるで判らない。

 病気ではないが、確かに元気でもないのだ。何か、日本や中国で言うならば、気のようなものがなくなっているとしか言えない。

 そういう得体の知れない気合いだとか、迫力とかがなくなっているのだ。


(最終的に出来上がるものを奪う、か。シルビア――チリコはヴァスティをどうにかしたいのか、俺を生かすために……? メビウスはそれで何の得がある、邪神だぞ? 何故手を貸す……?)


 世界征服と同時に企んでいるものがあるのかと思うと嘆息をつくと同時に、疲れも一気に出てくる。

 イミテがお茶を淹れてくれて、部屋へやってきた。今はアッシュの部屋にいる。


「お茶は、要らない」

「そうは言うな、この私の淹れた有難いお茶であるぞ。暖かいものでも飲み、一息つくとよき。此度はまことに疲れたであろう?」

「……俺の、判断は、間違っていたのかな」


 イミテから温かいお茶を無理矢理持たされ、俺はちびりと飲みながら、ふと愚痴っていた。

 一気に暖かいお茶を飲むと、色んな感情が渦巻き、それを吐露したくなっていたのだ。


「あの賭博場に二人とも連れて行けば……こんなことには」

「その代わりディスタードが非常に荒ぶっていたと思われるぞ。お前様、人の身にはどんなことでも限界というものはあるのだ。お前様は見たところ、全ての、様々な運命を引き受けようとしている。自分以外の運命もだ。それでは、潰れてしまうぞ?」

「……でも」

「でもではない。まずは、お前様自身の運命に目を向けたらどうだ? 何もかも背負うことはない。もうかつて知っていた未来ではなくなっているのだろう、今日の反応から見るからに」


 ヴァスティルートに本格的に入っているからか、それとも失敗してるところがあるからか判らないのだが、それでも確かに知らないシナリオなのだ。

 このシナリオは見た覚えがない。

 それもこれも、きっとシルビアの存在が大きいと思う。あの子も、何かしら変えようとしていたから。


「女の子のが上手うわてって、厄介だな」

「おのこが上手うわてよりかはかわいげがあるであろう? ほれ、クッキーも貰ってきた、食べると良き。少し腹が膨れたら、少しくらいは落ち着くであろう?」

 それもそうだな、とようやく暗い思考が落ち着く。

 俺はそのときに一番いいと思った選択肢を選んだんだし、セーブからのロードなんて今現実となっているこの世界にはないんだ。

 それなら失敗していたとしても、そこから挽回できるよう頑張るしかない!


「そういや、ヴァスティにメビウスのこと聞いてみろって言われてたな、メビウス自身から」

「明日にでも、城に向かうか? 看病を少しの間、変わってもらい」

「それがいいな、アレク先生に頼むか、もしくは――」


 りぃん、と鈴が震える。


『それには及ばない』


 鈴から聞こえる声に、ヴァスティちゃんたら盗み聞きしていたのねーと、微苦笑し鈴をつつく。丁度ノック音が聞こえたので、扉を開ければアレク先生が付き添った変装しているヴァスティと出会う。


「う゛ぁ?!」

「名前を言うな、極秘で外に出たんだ。……疲れるな、外の空気は汚くて」

「汚くて悪う御座いますぅ! つか、大丈夫か、何かごほごほいってるが」

「ああ、病が進行していてな。ッ、けほ、姫様には風邪だと言ってある。部屋へ入れろ」


 これはこれは気遣いが遅れてすまん、と思案しながら部屋へ招き入れる。

 アッシュの部屋なのだが、勝手に使ってごめんねぇー?

 とりあえず、お詫び代わりに、おでこの水で濡らしたタオル、もっかい冷やしてやろう。


「看病とはそのようにやるのか」

「知らないのか、ヴァスティ」

「いや……オレが言っているのは、アルデバラン殿下の周りに転がっている薬草どものことだ」

「ああ、これはね、片付け忘れてただけ。調合するのにどれがいいか悩んでたんだよ」

「ふむ、で、どれがいいんだ、アルデバラン殿下には」

「今のところ、薬とかの問題ではないな。やっぱりピュアクリスタルとられた部分が大きい」

「……――そうか。リーチェ、一つ話しておきたい事実がある」


 今更かしこまってどうしたんだろう、と思っていたら、ヴァスティはアレク先生からウィッグのようなものを借りて、それを手に持てあましながら話す。

 ウィッグの色はメビウスと同じ色、銀髪色だ。


 んー? いやあな予感するぞ-。


「前に、破滅の神はオレでもあると話したな」

「うん……もし、かして」


 ヴァスティはウィッグをかぶり、まっすぐとオレを見つめる。


「なっ――?!! はああ?!! お、ま、お前……」

「メビウスはオレの欠片……分身かもしれないんだ」


 確かにウィッグを被ったヴァスティの少し気まずい表情以外は、メビウスそのものであった。

 メビウスの衣服を用意さえすれば、替え玉になれます! と詠えそうな程には。



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