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第四話 ヴァステルデからの提案

「なるほど、前世でこの世界によく似た世界を見たことがあるってことか」

「デスです、俺は悪くない、前世を覚えてるそれだけが悪い!」

 乙女ゲーってコトは隠しておいたしエンディングを知ってるのも隠しておいた。

 居心地よくないだろうから。

「うーん、お前の言葉には嘘がないというか、嘘つけるほど器用じゃねーだろうから教えるが。お前、このまま行くと、嫁も娶らず永久に毒医者として流離うぞ」

「……なぜに?」

「オレの書く預言書シナリオでは、姫様はお前を選ばないからだ」

「まぁ選ばれなければ選ばれないでいいよ」

「第三王子だから王様にもなれねぇし、胡散臭い職だから毒泉国から外には出られないぞ」

「まぁ何とかなるだろ、俺何でも食えるから。それで仕事できねーかなぁ」

「毒泉国なんて毒きかない奴多いぞ。にしても、――オレの預言書シナリオがばれるのは、まずいんだ。この国にとっても、世界にとっても。もし姫様が、アルデバラン国の第一王子を選ぶように手伝ってくれるのなら、お前の未来もイイモンになるよう手伝うけど?」

 ゲームではあんなにうざかった予言者システムがこの世界ではこんなに、素晴らしい画期的なもんだなんて!

 攻略をすべて知りながら、未来を安泰に出来るって、楽できてラッキー!

 ただ、気になるのは……。


「ヴァスティ、お前さんさ、……何かの病ではない?」

「お前は千里眼かよ、よく判ったな、隠しても無駄だから言うが不治の病だ」

「姫様ってお前の予言通りにしようとしてくれる?」

「一切合切、言うこときかねぇな。まァそんなんでも、可愛い姫様だから面倒はみたいよ」

「……はああ……判った、まずは姫様にお前の言うこと聞かせる」

 そうしねぇとこいつ死ぬし、姫様国外追放なるしで、駄目すぎる……。

「姫様の名前って何だっけ」

「キャロライン・シリウス。――婚約者候補側に偵察を送れるとは思いもしなかったが、まぁいい。アルデバラン国のアッシュ王子と仲良くなって、後押ししてくれ。二人がイイムードになるように。それと――」

 ヴァスティは大きな予言の本を開き、青い光を放つ妖精を召喚し二言三言、オレには判らぬ言語で会話すると妖精は閃光を放ち消える。

「……お前についての予言をしてやろうとしたが、お前の未来が一切見えん。本当にこの世界の者か? 前世の件は判ったが……まァいい、できることなら、アッシュ王子の妹姫シルビア様には気をつけられよ。職と衣食住の提供はしてやるから、お前は母国に手紙を書け。暫しこの国が気に入ったから滞在すると」

「は、はぁい」

 苦笑いした後に、ヴァスティを囲う大きな天井まで届く程の本棚たちを改めて、見やる。

「この部屋凄いな、かっけぇ」

「――……姫様以外に、部屋を褒めてくれた奴は、初めてだ。連絡はこれを使って取り合おう、いいか、お前自身の未来が可愛いものにしたいならその鈴は外すなよ」


 しゅるりと青白く発光する妖精がオレの傍に近寄り、瞬くと首に鈴がついたチョーカーがついていた。

 鈴にそっと触れると、ヴァスティからの声が聞こえる。


『それでは、今日の所はこの部屋からお帰り願おう、そろそろ姫様がくる』




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