第四十二話 魔王シルビアとの逢瀬
魔物と出会って戦闘したり、動物の肉が必要で罠をしかけたりとどたばた忙しく。
この日の食料は、罠に掛かった兎の皮を剥いで、捌いて調理する。
最初キャロラインは真っ青な顔色だったけれど、肉塊になる頃には、覚悟を決め一緒に調理を手伝ってくれていた。
「リーチェはこういう料理作るの慣れてるの?」
「まぁある程度は。今回魚いそうな場所見つからなかったしなぁ、ぐろかったかもだが我慢してくれ」
ちなみに俺も自分が捌けて吃驚したけど、ステータスをチェックすれば調理レベルは割とあったのでそのお陰だろう。
「知らなかった、お肉とかこういう形で出されていたなんて。……尚更、料理を台無しにする人達の気持ちが分からないわ」
「台無しにする人? ああ、毒入れたりする人か」
「リーチェは食べられるからいいかもしれないけれど、それでも命に対して無礼よ」
キャロラインの言い分はもっともだな、と思いつつ皆を呼び、スープを囲う。
兎肉を使ったスープ、野菜は食べられそうな雑草を入れてみた。
資源豊富なんだ、この山。
コウモリや蛇とかばかりの山より幾分かマシだな。
「おーい、ディスタード」
「何だね、リーチェくん!」
「その炎虎の大剣で、鍋の火加減みといて。その剣たしか火を扱えるだろ」
「ああ、実に便利な使い方だね、判った! ヴァステルデ様にまた怒られそうだけどね! いっそ、肉を剣に刺して焼くのはどうだろう」
「それは次の調理方法だな、今日は温かいモン呑むといい」
あのスープ確かゲーム内にもあって、材料はあれで足りた筈だから、ヒットポイントや気力回復にはなるだろう。
俺自身はスープは味見くらいしかしなかったが、旅専用毛布を見ると一気に眠たさが加速していった。
スープは明日、食べよう。
「起きたら俺が火の番と見張りする、明日はアッシュが火の晩な。ディスタードはその次の日。キャロラインは、たっぷり寝て皆を起こす係してくれ。朝になったら此処移動するから火を消す余裕あったら、水汲みしてくれ」
「判ったよ、リーチェ、おやすみ! ……顔色悪いけど、大丈夫?」
「寝れば多分治る、おやすみぃ」
イミテも一緒についてきて、俺が横になるとイミテも側で寝ようとする。
「お前様、あのな」
「何……」
「全部お前さんが仕切らんでもあの小娘とて小娘なりに考えなければならぬときがあるのだろう? 明日は指揮は小娘にさせればどうだ?」
「そう、だな……」
今日は張り切りすぎて疲れてしまったのかもしれない。
*
起きてから火の番をし、欠伸をしながらも火を弄り、絶やさないようにする。
イミテには寝てて良いと言ったのだが、一緒に起きると愚図ったので、今一緒にスープを温め食べている。
余ったら竹筒にいれて、保存しておこう。明日くらいまでならもつだろう。
そこまで暑い日ではないし。
夜が更ける頃に、トイレに行きたくなる、イミテに火の番を少し任せ、少し遠くの草むらにでもいこうとすれば――遠くにシルビアの背が見えた。
これは一体どういうことか、と思いつつ、帰り道の道しるべをつけながらシルビアを追いかけ――俺は道から足を踏み外し、一気に転がり落ちていく。
「ちょ、うわわわっわわわわ、俺死んじゃうよこれえええ!!!」
自分でもやばさを感じながら身体を丸め、出来るだけ頭を傷つけないように転がっていくと、とある花畑に着く。
日本で言う月下美人みたいな花が、沢山咲き誇り尚且つ月に反応し、発光していて綺麗だ。尚且つそこには蛍たちがたくさん集っていた。
花畑の真ん中でシルビアが立っていた。
シルビアが花畑の灯りをうけ、女神のように輝いている――美しい人だとふと思った。
「シルビア!」
思わず咄嗟に声をかければ、シルビアは俺と目が遭うなり、切なげな笑みを浮かべた。




