第四十一話 山ごもり準備
山を歩いているうちに、川を見つけた、川と言ってもそこまで大きなものではないが。
皆に歩みを止め、近づいて貰い、岩の近くにある海苔みたいな闇苔を見せてそれらを採取用の鞄にいれる。
「これが闇苔。特徴としては、こうやって昼間はぺりっと剥がれやすいけど、夜は絶対に剥がれない」
「凄いや、見たことない-! これが愛しのボクの妹を救うモノになるんだね!」
「俺たちも救われるよ、これ毒にきくって言ったろ。俺は必要ねーけど、お前たちにゃ必要じゃないかな」
「じゃあ山ほどとる?!!任せ給え!」
「あ、待て。全部採ると次の日、採取できなくなるから、八分の一は残してくれ どの箇所にも。闇苔は素手で触っても大丈夫、割と乾燥している。苔っていうけども」
闇苔の繁殖スピードはかなりのもので、一晩経てばある程度の領域までは生える。
ある程度以上は生えないのは、栄養が届く範囲が狭いからだ。ぱっと見、加工した焼き海苔みたいなものだ。
闇苔をとりながら、草木を調べ、動物の糞なども観察しその度にキャロラインとアッシュが不思議そうな顔をしていた。
ディスタードは少し山になれているようで、俺の代わりに説明する。
「ああやって生態調べがてら、危険がないかを調べてるんだよ。熊の糞でもあれば、すぐに心の準備ができるからね。あとは、道を調べたり方角考えたりしているんだろう。さっき、行きがてらに樹に目印つけていただろう? リボンで巻いたりさ。あれは、帰り道の印だね!!」
「動物や魔物にリボンはとられないの?」
「とられることもあるけど、樹を悪戯にナイフで傷つけておくよりかはいいんじゃないってボクは思うよ。それにほら、リーチェくんメモしてるだろ何か。あれはマップを作っているんだよ。判りやすく言うと、ボクらが帰りやすい道も選べるよう考えてくれてるんだね!」
「まっぴんぐ……わ、私も手伝います! 面白そう!」
「あ、キャロライン! 地面ぬめりがあるから気をつけて!」
キャロラインは兎のような仕草でぴょんぴょんと、此方へさっさかやってきて、俺の手元を見つめる。
イミテは荷物番をしながら、俺とキャロラインを睨み付けている。
アッシュとディスタードは、月華について話合っているみたいだ。
「リーチェ、どうやるのそれ! 私も覚えたい!」
「今度学園で練習してみる? 俺も明確にやってるわけじゃあねぇんだけどさ」
「それでも、すごく助かるよ! マッピング、かぁ」
いつものお人形キャロラインっぽくなくて、驚く。
心から興味あるのって、もしかしてキャロラインの場合、ここ最近の様子見ていると誰かの助けになることなのかな。
だとしたら、今のパーティーなら前衛二人に、俺が攻撃型の後衛、キャロラインが回復の後衛になれたら結構やりやすいかも。
「キャロライン、皆を守りたい? それとも癒やして頑張って貰いたいか?」
「? どうして、リーチェ」
うーん、ここで素直に「リーダーがどういうスタンスかは知っておきたいから」って言ったら何か好感度下がりそうだから一定のライン維持したいから工夫するか。
「キャロラインがしたいことを補助して力になりたいんだ」
「そ、そう、なの? そ、そういうことなら……癒やして応援したい、闘う力も欲しいけれど……ヴァスティには、光魔法習得以外にリーチェから薬を教えて貰えって言われたわ」
ヴァスティのやつ、俺とキャロラインを仲良くさせたがっているわけか。
自分がキャロラインを好きな気持ちは流しておいて。
まぁ薬学教えて回復特化に回るならいい、のか、なぁ?
つっても教えられそうなのって、低級ポーションくらいなもんだが。
いやでもまて、こういうのって大体攻略キャラが得意な科目のがいいんだよな。
なら光魔法特化でいってもらうか、ヴァスティの力を借りる魔法っぽいしな。
「キャロライン自身はやりたいことって今は思いつく?」
「私は……今こうして皆とでかけるの、楽しいと思う。出かける切っ掛けは大変な事態だったけれど、ディスタード様も落ち着いてくれたし。アッシュ様がどんな人か少しだけ判ったし。リーチェの頼もしさも判ったしね」
なるほど、だからマッピングに興味を持ったのか。
これは少し心の成長が期待できそうだ。




