第四十話 姫様の指示
『それでは一週間後に迎えにきます、それまでお気をつけください!』
馬車でルガールの山手前までいくと、兵士達はさっさと帰って行った。
山手前の入り口には、立て札で「注意、モンスターが出ます。毒沼あり」など諸々描いてあった。毒ガスある場所もあるのか。
「ねぇ、リーチェ、本当にこの服借りて良かったの……?」
「ひらひらドレスでいくよりかは安全だと思う」
キャロラインにはオレの衣服を少し貸した、オレは学園くるまでは放浪癖があったみたいで、山バージョン海バージョンなどそれぞれに適した旅用衣服を多く持っていたから。
ディスタードも山には馴染みがあるのか、すぐそこで手に入れた大きな木の枝を、杖にするようにキャロラインへ渡した。
キャロラインだけは、ひらひらドレスでいこうとしていたので、止めておいて衣服を貸した。
「り、リーチェの服じゃなくても……」
「じゃあディスタードの服がよかった?」
「嫌!」
「キャロラインくん、はっきり言わないでくれ給え! ボクの孤独に繊細なハートが傷つき愛を叫ぶ!」
ぷりぷりと怒った仕草を見せていたディスタードは改めて咳払いし、皆へ頭をさげる。
「改めて有難う! 一週間宜しく頼むよ!」
「気にするな、それより方針はキャロラインが決めた方がいいと思うんだ、今回俺の判断が必要だから俺が仕切ったけど、キャロラインがリーダーなんだし」
俺がイミテと一緒に荷物班を担当しようと、二人で荷物の確認をしながらキャロラインに指示を頼めば、キャロラインはこくこくと頷き、先頭を歩く前に皆へ指示を出す。
アッシュが慌てて共に先頭を歩こうと、駆け寄る。
「皆で助け合って、絶対に月華蜜を持って帰ろうね! アッシュ様、私が前にいきます!」
「女に前を歩かせていられるか、魔物が出たとき対処しやすいように、オレが前に出て行く」
「むう、私のことお姫様扱いしないでください! いや、お姫様ですけども、子供みたいな扱いを……」
「姫でなければ君は何なんだ?」
「決まっているでしょう! 友達、ってやつですよ。私達ね、きっと変な縁だし、変な切っ掛けだけど皆のことを沢山知る機会なんだと思うの。お互いを尊重するタイミングなのよ、だから私をただのか弱い女性扱いはおやめくださいね!」
――キャロラインの今の言葉は、珍しく魂や心がこもっていて、何となくだけどじんわりと嬉しかった。
特別扱いを嫌がり、平等を望む女の子は頼もしいね!!




