第三十八話 トゥルーに向かう道
ディスタードの妹さんを診ることになり、サンヘル伯爵家に連れて行かれた。
大所帯も何だからと、俺とディスタードとキャロラインだけで行く。
アッシュはもしも薬に何か必要なものがあれば手伝いはしてやらなくもない、とツンデレ最高潮を見せていた。
アレク先生はのほほんと「いってらっしゃい」と見送ってくれて、三人で馬車に乗りサンヘル家に着くなり、驚いた。
確かに大きくて広い屋敷ではあるが、メンテナンスはあまりされておらず、使用人も迎えに来た一人のお爺さん執事とメイド一人だけの様子であり。
ディスタードはあっけらかんと「うち、本当に貧乏貴族なんだよ」と告げた。
「貴族っていう身分を維持するための現在さ!」
「どうしてそんな……返上できないのか?」
「返上も考えたよ、けどね、君、騎士というのは身分がなければなれないんだよ。確かな血筋の者しかなれない。養子って手もあったけど、ボクはサンヘル家を継いで、騎士隊長になりたいんだよ!」
ディスタードの夢は立派であり、攻略シナリオにも金がない金がないって主張ばかりだった理由に納得がいった。
この背景を主張すればもっと売れただろうに、あのゲーム。ただの色物キャラじゃなかっただろうになぁ。
案内されてご両親に挨拶し終わると、ふせっている妹さんの部屋に向かう。
妹さんはかなり高熱で、診察しながら今の状態で与えてもイイ解熱剤を作り、あとは病に必要な材料をチェックする。
「ああ、まずいな……キャロライン、この国のこと詳しいんだよな?」
「生まれ育った国ですから! どうしたんですか」
「月華蜜って希少、だよね」
出来ることなら何でもしますって顔していたキャロラインが一気に絶望顔したってことは、城にもなさそうだ。
他の材料も必要には必要だが、それらはレア度はあまり高くない。
これはあれか、メインシナリオ的に受けなければいけないクエスト箇所なんだろうな。
それによって、ルートがわかれそうだな、また。
でもルートがどうのこうのより、助けたい。友を、患者を。
俺はディスタードに地図を持ってきて貰い、生息地がないか確認する。
月華蜜は、一本の巨大な華の裂け目から溢れる蜜なんだが、その月華という花自体が希少なんだ。
キャロラインの記憶も一緒に生息地を予測し、目標を決めれば、一旦学園に戻り、明日また話合おうと寮で別れた。
「お前様! お帰りなさい! どうした、遅かったな?」
イミテが帰るなり抱きついてきて、すんすんと匂いを嗅ぐ。
仕草が犬めいていて、少し笑った俺は、事情をイミテに話すとイミテは売り飛ばしたことには笑っていた。
「妹君のことは不憫じゃが、あっさりと売り払われた英雄の武器も哀れだのう」
「まぁヴァスティは許してくれたっぽいからいいんだが、問題はメンツだよ。人数を厳選しないと……ディスタードとキャロラインは絶対連れて行くだろ、で、問題は……」
今連れて行くと良い感じの交友関係になりそうなアッシュなんだよな。
逆を言うと今を逃せば、親密度は誰に対しても上がらなさそうだ。
多分、予測なんだけど、俺はバッドエンドのフラグ回収できなかったルートしか見てないからあれだけど。ヴァスティルートってきちんとやれば所謂トゥルーエンドなんだと思う。
トゥルーエンドに向かうからこそ、攻略キャラが顔見知りになったんじゃねーかなぁ。
ってことは万遍なく全員鍛えた方がよさそうな気がする。その為の学校か。
お留守番の間に、学校で鍛えてて貰うのか、いいシステムだな。
「イミテ、明日話し合いが済んだら即刻暫くは野宿だ」
「それぐらい慣れておる、柔肌には少々刺激的ではあるが、それくらいでお前様の側を離れぬ私ではない」
イミテはご機嫌そうであったが一点思いだし、不服を申し出る。
「ふわふわけーき!!」
ごめんね、俺も少し忘れていたよ、明日はそれなら食堂で話合いでもして、ふわふわけーき食べがてら話そうか。




