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第三十六話 やはり天災もはや才能

 イミテには瓶の回収を命じた後にキャロラインを探し、キャロラインを見つけるなり礼をし話しかければキャロラインは寂しげに笑った。


「素のリーチェは見せてくれないの?」

「其方がお好みならそれでもいいけど」

 笑って一緒にベンチに腰掛ければ、小さな声で「やった」という嬉しげな声が漏れるキャロライン。

「ええと」

 ヴァスティのことを聞き出したいが、この複雑さをどうすればいいのやら。

 好感度をあげつつ、気を持たせつつ聞かなければまだいけない段階だろうから、慎重に言葉を選ばなければ。


「キャロラインがヴァスティをどう思っているのか、気になったんだ……その、キャロラインは……と、友達、だから」


 嘘は言ってない。友達だと思う気持ちはあるから、嘘は言ってない!

 顔をうつむけながら言えば照れてる風に見えて、それっぽく見えるだろ!

 推しているテーマはザ・不器用。

 不器用なばかりに想いを伝えられない系をイメージしてみた。

 キャロラインは俺の言葉に、少しだけはにかんでから考え込んでいる。


「モートルダム、という神様は毒泉国では有名?」

「確か一番最初にこの世界を作ったって言う神様だろ。多くの信仰者がいて、ただ一人の英雄にのみ付き従うっていう加護のある神様」

「英雄は、私だって言うの、ヴァスティは。お父様でもなく、私がいるからこの国にいるって事実を思い出したって。……ヴァスティは小さい頃からいつも傍にいて、私がお転婆な事件を起こす度に、姫様ともあろうものがって怒ってくれていたわ」


 思い出話に浸りながら、キャロラインは俯いて睫を伏せた。


「私の神様は、それでも遠いの。皆の神様なの、私に一番に力を貸すけど私だけの神様ではないわ。最初からあの人の選択肢に私は入っていない、だって神様だから。皆を、世界中を平等に愛する神様だから」


 憂いげのあるキャロラインを見てると、顔がにやけそうになるのをぐっと堪える。

 俺は当て馬、俺は当て馬!

 当て馬なら、そうこんなときに世界名脇役な当て馬なら気付かせるはず!

 ヴァスティとキャロラインのずれを!


「キャロライン、それってさ。ヴァスティが人に恋する選択肢があるなら、ヴァスティが好きかもしれない、ってことか?」

「……え、ええ?」


 いや、その表情やめようよ、キャロライン。俺はヴァスティじゃないけど、流石に悲しいわ、一切可能性ない顔。

 もごもごと口ごもるキャロラインから「私は、その、リーチェが」とか聞こえるけど必殺聞こえないふりをしておくよ。


「おかしなことをリーチェは言うよね、あの、ね。リーチェ。リーチェは、シルビア様のこと……」

「リーチェ!! 大変だ!!」


 遠くから誰かが近づいてくる、あれはアッシュじゃないか。

 傍にいるのがキャロラインだと気付くなり、アッシュはキャロラインに秋波を送ってから、はっとして、俺を引っ張る。


「君のつれが大変なんだ、オレの手には負えん!」

「誰が大変なんですか、いったいどうしたっていうんです」

「ディスタードが炎虎の大剣を勝手に売って、ヴァステルデ様のお怒りに触れた!」

「あいつそこまで馬鹿だったの?!!!!!」


 経緯は連れて行かれる道中で話してくれるみたいなので、キャロラインも一緒にディスタードのいる牢屋へ向かう。

 最初何でこの学園に牢屋があるんだろうって思ったが、今なら納得。

 馬鹿すぎて言葉を失っていたが、経緯を知って更に言葉を失う。


「ディスタードには病弱な妹君がいて、治療に莫大な金がかかるんだと。その妹君が倒れてしまい、薬を買おうとしたら貴重な薬故に莫大な資金が必要となったようだ」

「俺を頼ってくれればよかったのに!」

「君――いやお前は馬鹿か。あいつのことはよく知らんが、それほどお前を気に入ってるのだろう、頼った瞬間友ではなく、恩人か医者の先生となる。対等でなくなるのが嫌だったのだろう」

「それでも頼ってくれなかったことのほうが悲しいよ」

「それは本人に直接聞くとイイ、ついたぞ」

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