第三十三話 リーダーは勿論ヒロインと……?
ヴァスティに視線で、姫様が不安げなことを訴える。
ヴァスティは、瞬き、ゆっくりとキャロライン姫の頭を撫でた。
「姫様、大丈夫だ、皆が守ってくれる。シルビア姫も無事だ」
「…………うん、あのね、ヴァスティ。イミテにも何かを……」
「残念だが、イミテは俺からの武器を受けとると聖なる気にやられ、怪我をする。そうだな?」
「逆も然りである、キャロライン姫よ気にするな、お気遣い感謝する」
全然感謝した素振りのないイミテは、この場にいると具合が悪そうだ。
キャロラインは驚いた顔をしてイミテを見やるが、今は聴きたいことを我慢したようだ。
「毎回月末に奴等と鉢合わせるだろう、予言では」
「仕事の締め日みたいだな」
「リーチェ、お前にはいざというときの復活薬を作ってほしい、伝説のものだから、難易度は高いが。復活薬があれば、誰かが死にそうなときに役立つかもしれん」
「ほいよ、だからフラスコか」
「そのフラスコは、持ち主の能力にあわせ、一度作ったものなら、魔力次第で材料なく薬が作れる」
「しかし、シルビアはいったいどうしたんだ……君らの話では突然納得し、付き添ったようだな」
アッシュの言う通り確かに引っ掛かりがある。
クリスタルを奪われてから、シルビアはキャロラインに宣戦布告をし、敵になった。
そういうシステムだった前世のゲームを覚えてるが、若干違和感なんだよな。
「きっとお腹がすいて、怒り狂ったのだよ! いつだって胃袋には逆らえないからね、老若男女皆様方!」
「シルビアをそこらのいも娘みたいな扱いをするな!」
「ははは、ずいぶんシスコンだね、お兄さん! お兄さんはお腹すいてるのかな、そこのフルーツ食べるといいよ?」
「何なんだ君は!やたら疲れるふざけたやつだ」
「ふざけてなんかいないよ、茶化しているのさ! 君の魂が泣いてる気がしたから、励ましているのさぁ! 健気なお兄さんという君を、応援してやろうじゃあないか! さぁ燃え立てハート、頑張れ君の心!」
アッシュさん、なんせSAN減るさんだからな。
いいとこも勿論あるが、ディスタード相手にまともな会話は期待しては駄目だと、俺は昨今思い知った。
「学園にかんしては、どう致しましょうか、モートルダム神様」
「ヴァスティで構わない。今のお前らでは、武器をまともに扱えるかは解らん。学園の授業は、予言では吉とでている。行事に出てもかまわない」
「解りました、都度私が判断します」
アレク先生は真面目に頷くと、一同の注目を集めようと手を鳴らす。
ディスタードとアッシュはまだ言い争っているが、注意され二人はアレク先生に向き合う。
「私達はキャロライン姫様のサポートをしますよ、姫様が言うことや指示には従う。姫様がリーダーです、いいですね?」
「この中でなら、異論はない。そこの不真面目どもじゃなければな」
「ボクも異論ないよ、アッシュくんがリーダーになるよりは遥かに歓迎だとも!」
アレク先生の言葉に、ディスタードとアッシュが頷けば、考え込んでからオレを見やり、ヴァスティが命令を付け足す。
「姫様がいないときは、リーチェに従ってくれ」
「も、モートルダム様?!どうしてそいつなんだ!」
「ヴァステルデで構わん。アルデバラン殿下、リーチェがシルビアのきっかけであり、キーパーソンだ。予言はこいつ次第で黒にも白にもなる影響力があるからだ」
ぺらぺらと大きな預言書を捲りながら、文字面がころころ変わる本にヴァスティは唸り、お手上げだと示した。
「リーチェくんは、可能性が宇宙……? 無限大王子! 渾名は無限大くんだな!」
「サンヘル伯爵、真剣な話を茶化さないように」
「はあい。でもでも、ボクはリーチェくんなら大賛成だよ! 信じられる大いに! 何せ大親友だからね!」
「サンヘル伯爵」
「何ですか神様! 何でも包み隠さず言ってください! 報酬の話ですか、ボクは金貨二百枚が妥当だと思います!」
「俺も貴方と話すのは少々疲れますが、貴方の前向きさには期待してます……剣は大事にしてくださいね、くれぐれも」
疲労のあまりに敬語なヴァスティに、吹き出してしまいそうだったが、ヴァスティに睨まれたので黙る。
「とにかく頼んだ、リーチェ、キャロライン姫様。何か知りたい未来があれば、いつでも来るといい」
「教えてくれるのか?」
「相談の中身次第だな」
こうして、攻略キャラに接点ができた。
「リーチェ、そういえばロデラ姫と話すといい、楽しめそうだ」
にっこり笑うヴァスティに嫌な予感ひしひし。