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第二十九話 災厄の神

「ディスタード様、剣で前線頼みます!」

「任せてくれたまえ、ボクは未来の騎士隊長さ! となると、君は何をするのかね?」

「俺は状況に合わせてこれを投げます」

「黒いマメ玉?」

 皆の前に、内ポケットにいれていた小瓶を取りだし、小瓶から黒い豆粒を取り出す。

 これはこの国で貴重と言われる種類の火薬を魔改造した爆弾だ、俺独自で編み出した調合で。

 シルビアは目を見張り、こくりと頷く。

「それでしたら、怪我人が出ましたら私が診ましょう、少しの即興回復魔法くらいなら使えるはずですわ。どうしても力量不足でしたら、リーチェ様サポートお願いしますわ」

 それで、だ。問題はまだ自分の力に目覚めていないキャロライン。

 キャロラインは、この敵との戦いの後で出会うキャラと出会って、能力に目覚める――出会うのが厄介なことに、所謂敵キャラなんだ。

 妹がこの敵キャラのファンで、グッズで部屋中が埋まっていたのを思い出す。

 この出会う敵キャラ自体とは、今回は戦いはない。戦いがあるのは、人食花だけで。ただヒロインは口説かれる。



キャロラインは、俺に視線をやり、少しうなだれた。

「私、どうしよう、武器もない。あっても使えないよ……」

「まあ、武器もなしに?なら、隠れていた方が安全でしてよ。参りましょう、皆様」

「キャロライン、あのさ」

前へ進み挑む前に、呼びかける、内緒話でもするように。

「キャロラインの一番信じる神様に、いざというときは祈ってよ。それが、きっと皆を救うよ」

「リーチェ……わかったよ! 任せて」

「君たちいちゃついてないで、早く挑もうよ! ボクの剣がわくわくしている!」

 ディスタードは変わらないうざさで、ハイテンションに剣をかかげる。

 そのとたん、今まで静かだった森から、鳥たちが騒ぎ、飛び立つ。

 地面は揺れ、人食い花が、現れた。

 薔薇のような見目で綺麗ではあるが、花の真ん中から口が見えるんだなあ!グロテスクにさ!

 蔓がするすると姫様がたに向かう、アイコンタクトでシルビアが囮になると申し出るかのように、ディスタードが動きやすく俺が攻撃しやすい位置に陣取ってくれた。

 ディスタードは、姫様がたに向かう蔓を切り刻み。俺は口の中にめがけて、火薬を入れ続ける。この火薬は接触が強すぎると爆発するので、人食い花が歯を食い縛ったあたりで、ばんっと壮大に爆発し、燃えていく人食い花。

「すごいなあ、華麗に燃えていく!」


 本番はここからだ、炎の中から一人の銀髪めがめな黒マントが現れる。

 美形黒マントは衣服も黒く、若干中二病さを感じる。

 笑みは女の子が好きそうな酷薄な笑みなんだが、それはゲームをしていた頃の話。

 実際対峙すれば、気迫に押されそうになるほどの存在感だ。

 男は青い瞳を細めて嗤った。


「なんと容赦なく下品な奴等だ、可愛い花が枯れてしまいおったわ、残忍だな人間は」

「誰?!」

「はじめましてと挨拶してやろうか、この世の最たる災厄の神だ、ひざまずけ」

 まぁそうだよなぁ、いきなり災厄とか言われてもぴんとこないよなぁ。

 ディスタードなんかあほの子顔してる。


「災厄……? 邪神、なの、かな」

「その呼び名は好きではないな。……! ほう、これはこれはピュアクリスタルの乙女が二人、か」

 男はすっと女性陣二人を見つけるなり、にやにやとやたらと嬉しそうであった。


「何ですか、ピュアクリスタルの乙女って?」

「ピュアな心を持ち、気高い者にだけ宿る世界の命運を決めるクリスタルだ、集めれば偉大な力が手に入り世界征服も叶う。他にもお前達全員が持っている、これは貴重な邂逅だ。どれ、記念に見せてやろう」



 ゲームの世界であれば、綺麗な宝石が現れ、いかに宝石がピュアか語るピュアリストとか、ピュアソムリエとか揶揄されるシーン。ピュアって単語が兎に角飛び交うシーンで前世では面白くて好きだった。真面目にピュアピュア言うから爆笑してたんだ。


 だが、現実は――恐ろしいばかりの気迫を感じて、身体がびびっちまって、動けないでいる。男が手を掲げれば、シルビアが宙に浮かび上がり、シルビアは動じる。



「きゃあああああ!!!」

「シルビア?!」


 そこで俺はようやく思い出す――嗚呼そうだ、これを機にシルビアは敵になるのだと。

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